前回は「歴史・地理の記述問題の考え方 5〜戦前の女性と学校・設問が後の設問のヒント・記述式問題への姿勢・キュリー夫人・戦前の時代をイメージ〜」の話でした。
日本・米国・ドイツの学校制度の仕組み:簡単にまとめる

今回は、問5に進みます。


日本と米国、ドイツの学校の仕組みの比較です。
この問題は、新鮮味があって海外、特に米国・ドイツと比較するところが良いです。
まず、米国は大学などの教育が、世界の最先端であり続けています。
世界の大学トップランキング常連は、他に英国のケンブリッジ・オックスフォード大学があります。
ランキングではドイツは米英より少し劣るものの、ドイツの科学技術力は強力です。
20世紀初頭までは欧州の科学技術の中心だったドイツ。
あのアインシュタインも、元々はドイツ人です。

問題文では、下記のように描かれています。
戦前(旧制):複線型(専門学校・大学、男女別)
現代(学校教育法):単線型(小学校〜大学)
上記のような「まとめ」を実際に書いてみましょう。
上のは例であり、「自分なり」で良いでしょう。
このように実際に書いてみると、考えが整理されます。
比較する:異なる点に気づく姿勢

問題では「日本の旧制は、米国・ドイツのどちらに近いか」です。
ここで、両国の学校制度の図を見てみましょう。
大きな違いは、米国がジュニアスクールの次が「〜ハイスクール」で似た感じです。
対して、ドイツはギムナジウムなど名称が異なります。
学校によって名前が全然違うドイツ、対して日本と似た感じの米国。
こういう「基本的な違い」にまず気づくことが大事です。
ドイツでは、早い時期で「子ども・生徒たちの方向性」が明確でした。
それぞれが「〜を目指す人のための学校」と「専門性によって別れる」ことがわかります。
旧制では「教員になるための〜」とありますから、「〜のための」が同一のドイツ型です。
答えはイ(ドイツ型)であり、旧制とドイツは「複線型」となります。
どのような違いがあるか:特徴をつかむ

後半の問題は、考えたことを簡潔にまとめましょう。
「単線型と複線型の違い」の最も特徴的なものは、「〜になるための」です。
つまり、複線型は専門性が高くなります。
そして、卒業後の進路が「学校によって、ある程度の範囲に決まる」ことです。
この時、
単線型 = 進路が幅広い中から選べる
複線型 = 専門性が高く、選べる進路が限定される
という考え方でも良いかもしれません。
ただし、この言い方だと、あたかも「限定される複線型が劣る」ような意味が含まれます。
「限定される」ことが良いことなのか、どうなのか。
これは、様々な方の意見があるでしょう。
単線型と複線型は、「それぞれ良い面・悪い面」があるのでしょう。
何事も「良い事ばかり」ということは、「ない」のが実情です。
この意味では、
単線型 = 幅広く学び、様々な進路から選ぶ
複線型 = 早期に方向性を決めて高い専門性を学び、その中から進路を選ぶ
という内容を書いた方が、「学びとの関係」も含んでいて良いように考えます。
「限定される」ではなく、「早期に高い専門性を持つ」ことをポジティブに表現しました。
自分なりにまとめてみましょう。
記述問題:何が模範解答例なのか
「単線型」と「複線型」に対して「どのような違いがあるのか」が問われました。
それに対して、上の二つの答えは「単線型」に対しては似ています。
「複線型」に対しては、「似ている面がある」もののニュアンスは大きく異なります。
「複線型」に対する回答例を、まとめましょう。
問題文に対する素直な姿勢:専門性が高く、選べる進路が限定される
やや自分の主観を入れた姿勢:早期に方向性を決めて高い専門性を学び、その中から進路を選ぶ
上の二つの回答例に対しては、「どちらでも良い」ようにも思います。
どっちでも良い、
と言われると困るんだけど・・・
結局、どのように答えたら良いのか、
が分かったほうが明快だよ・・・
受験生の方が、このように感じる気持ちは良くわかります。
最終的には、自分の答案が「点数」という数値に置き換わる入学試験。
ならば、その「点数をいかに上げるか」が最重要となります。
そうだよ・・・
記述の場合、最も点数が高くなる答えを知りたい・・・
この気持ちは良くわかります。

記述に関しては、答えの例は市販の参考書より、各校で出している過去問集の方が良いでしょう。
その方が、「問題作成者の指向性が現れた回答例」となっているからです。
「各校で出している過去問集」は、問題作成者・採点者のコメントがある場合もあるでしょう。
それらは、「各校のカラー・校風が現れた解答」であり「採点者が良いと評価する回答」です。
採点者の視点:どのように点数がつくのか
それらが参考になると考えますが、一方で「来年の入試の採点基準は不明」でもあります。
えっ、なんで?
各校の解答例ならいいんじゃない?
各校の回答例は「各校のカラー・校風が現れた回答」ですが、微妙なところで採点者によるでしょう。
同じ学校にいる先生方は、「似た指向性・思考性」があると考えます。
とは言っても、「先生方それぞれに考え方がある」のです。
そこで、同じA中学校の先生でも、B先生とC先生では、考え方が少し異なることがあるでしょう。
B先生が、
この回答は
とても良い!
と考えても、C先生は、
この回答はいいけどさ・・・
ちょっと、この点が足りない気がする・・・
と思うかもしれないのです。
結局、記述においては、「どのような書き方が点数をたくさんもらえるのか」は「不明」なのです。
例えば、「事前に出題者・採点者が誰なのか分かっている」なら別ですが、それはないでしょう。
子どもそれぞれに個性があるように、先生方にもそれぞれ個性があります。
もう一度、先ほどの「複線型」の解答例を見てみましょう。
問題文に対する素直な姿勢:専門性が高く、選べる進路が限定される
やや自分の主観を入れた姿勢:早期に方向性を決めて高い専門性を学び、その中から進路を選ぶ
個人的には、後者の方が「良い解答」だと考えます。
学校教育などの場において「限定される」というネガティブな要素は、ない方が良いからです。
ただし、前者の答えの方が「問題文に対する素直な解答」です。
それは、「女性の進路は大きく制限」と「制限」という言葉が文章にあるからです。
そのため、「選べる進路が限定される」という表現は、「文章全体の流れに沿っている」とも言えます。
結局、
何が模範解答で、どう書けばいいんだろう・・・
「模範解答」は、「作成者・採点者」しか作りようがない面があります。
記述には「ポイント」「書くべきこと」があります。
それを押さえて、表現等はあまりこだわりすぎず、自分の考えに素直に書くと良いでしょう。
・「異なる点・違い・特徴」などをしっかり押さえる
・文章の流れに応じながら、ある程度は自分の考えを入れる