歴史・地理の記述問題の考え方 6〜米国・ドイツ・日本の学校制度・簡単にまとめる・比較する・異なる点に気づく姿勢・どのような違いがあるか・特徴をつかむ・何が模範解答例なのか・採点者の視点・どのように点数がつくのか〜|中学受験・社会

前回は「歴史・地理の記述問題の考え方 5〜戦前の女性と学校・設問が後の設問のヒント・記述式問題への姿勢・キュリー夫人・戦前の時代をイメージ〜」の話でした。

目次

日本・米国・ドイツの学校制度の仕組み:簡単にまとめる

2022年武蔵中学 社会

今回は、問5に進みます。

2022年武蔵中学 社会(四谷大塚ドットコム 中学入試過去問データベース)
2022年武蔵中学 社会(四谷大塚ドットコム 中学入試過去問データベース)

日本と米国、ドイツの学校の仕組みの比較です。

この問題は、新鮮味があって海外、特に米国・ドイツと比較するところが良いです。

まず、米国は大学などの教育が、世界の最先端であり続けています。

世界の大学トップランキング常連は、他に英国のケンブリッジ・オックスフォード大学があります。

ランキングではドイツは米英より少し劣るものの、ドイツの科学技術力は強力です。

20世紀初頭までは欧州の科学技術の中心だったドイツ。

あのアインシュタインも、元々はドイツ人です。

物理学者 Albert Einstein(Wikipedia)

問題文では、下記のように描かれています。

日本の教育

戦前(旧制):複線型(専門学校・大学、男女別)

現代(学校教育法):単線型(小学校〜大学)

上記のような「まとめ」を実際に書いてみましょう。

上のは例であり、「自分なり」で良いでしょう。

このように実際に書いてみると、考えが整理されます。

比較する:異なる点に気づく姿勢

武蔵中学・高校の校舎(新教育紀行)

問題では「日本の旧制は、米国・ドイツのどちらに近いか」です。

ここで、両国の学校制度の図を見てみましょう。

大きな違いは、米国がジュニアスクールの次が「〜ハイスクール」で似た感じです。

対して、ドイツはギムナジウムなど名称が異なります。

学校によって名前が全然違うドイツ、対して日本と似た感じの米国。

こういう「基本的な違い」にまず気づくことが大事です。

ドイツでは、早い時期で「子ども・生徒たちの方向性」が明確でした。

それぞれが「〜を目指す人のための学校」と「専門性によって別れる」ことがわかります。

旧制では「教員になるための〜」とありますから、「〜のための」が同一のドイツ型です。

答えはイ(ドイツ型)であり、旧制とドイツは「複線型」となります。

どのような違いがあるか:特徴をつかむ

2022年武蔵中学 社会(四谷大塚ドットコム 中学入試過去問データベース)

後半の問題は、考えたことを簡潔にまとめましょう。

「単線型と複線型の違い」の最も特徴的なものは、「〜になるための」です。

つまり、複線型は専門性が高くなります。

そして、卒業後の進路が「学校によって、ある程度の範囲に決まる」ことです。

この時、

単線型と複線型

単線型 = 進路が幅広い中から選べる

複線型 = 専門性が高く、選べる進路が限定される

という考え方でも良いかもしれません。

ただし、この言い方だと、あたかも「限定される複線型が劣る」ような意味が含まれます。

「限定される」ことが良いことなのか、どうなのか。

これは、様々な方の意見があるでしょう。

単線型と複線型は、「それぞれ良い面・悪い面」があるのでしょう。

何事も「良い事ばかり」ということは、「ない」のが実情です。

この意味では、

単線型と複線型

単線型 = 幅広く学び、様々な進路から選ぶ

複線型 = 早期に方向性を決めて高い専門性を学び、その中から進路を選ぶ

という内容を書いた方が、「学びとの関係」も含んでいて良いように考えます。

「限定される」ではなく、「早期に高い専門性を持つ」ことをポジティブに表現しました。

自分なりにまとめてみましょう。

記述問題:何が模範解答例なのか

「単線型」と「複線型」に対して「どのような違いがあるのか」が問われました。

それに対して、上の二つの答えは「単線型」に対しては似ています。

「複線型」に対しては、「似ている面がある」もののニュアンスは大きく異なります。

「複線型」に対する回答例を、まとめましょう。

複線型

問題文に対する素直な姿勢:専門性が高く、選べる進路が限定される

やや自分の主観を入れた姿勢:早期に方向性を決めて高い専門性を学び、その中から進路を選ぶ

上の二つの回答例に対しては、「どちらでも良い」ようにも思います。

どっちでも良い、
と言われると困るんだけど・・・

結局、どのように答えたら良いのか、
が分かったほうが明快だよ・・・

受験生の方が、このように感じる気持ちは良くわかります。

最終的には、自分の答案が「点数」という数値に置き換わる入学試験。

ならば、その「点数をいかに上げるか」が最重要となります。

そうだよ・・・
記述の場合、最も点数が高くなる答えを知りたい・・・

この気持ちは良くわかります。

空と雲(新教育紀行)

記述に関しては、答えの例は市販の参考書より、各校で出している過去問集の方が良いでしょう。

その方が、「問題作成者の指向性が現れた回答例」となっているからです。

「各校で出している過去問集」は、問題作成者・採点者のコメントがある場合もあるでしょう。

それらは、「各校のカラー・校風が現れた解答」であり「採点者が良いと評価する回答」です。

採点者の視点:どのように点数がつくのか

それらが参考になると考えますが、一方で「来年の入試の採点基準は不明」でもあります。

えっ、なんで?
各校の解答例ならいいんじゃない?

各校の回答例は「各校のカラー・校風が現れた回答」ですが、微妙なところで採点者によるでしょう。

同じ学校にいる先生方は、「似た指向性・思考性」があると考えます。

とは言っても、「先生方それぞれに考え方がある」のです。

そこで、同じA中学校の先生でも、B先生とC先生では、考え方が少し異なることがあるでしょう。

B先生が、

この回答は
とても良い!

と考えても、C先生は、

この回答はいいけどさ・・・
ちょっと、この点が足りない気がする・・・

と思うかもしれないのです。

結局、記述においては、「どのような書き方が点数をたくさんもらえるのか」は「不明」なのです。

例えば、「事前に出題者・採点者が誰なのか分かっている」なら別ですが、それはないでしょう。

子どもそれぞれに個性があるように、先生方にもそれぞれ個性があります。

もう一度、先ほどの「複線型」の解答例を見てみましょう。

複線型

問題文に対する素直な姿勢:専門性が高く、選べる進路が限定される

やや自分の主観を入れた姿勢:早期に方向性を決めて高い専門性を学び、その中から進路を選ぶ

個人的には、後者の方が「良い解答」だと考えます。

学校教育などの場において「限定される」というネガティブな要素は、ない方が良いからです。

ただし、前者の答えの方が「問題文に対する素直な解答」です。

それは、「女性の進路は大きく制限」と「制限」という言葉が文章にあるからです。

そのため、「選べる進路が限定される」という表現は、「文章全体の流れに沿っている」とも言えます。

結局、
何が模範解答で、どう書けばいいんだろう・・・

「模範解答」は、「作成者・採点者」しか作りようがない面があります。

記述には「ポイント」「書くべきこと」があります。

それを押さえて、表現等はあまりこだわりすぎず、自分の考えに素直に書くと良いでしょう。

記述問題への姿勢

・「異なる点・違い・特徴」などをしっかり押さえる

・文章の流れに応じながら、ある程度は自分の考えを入れる

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