前回は「記述式問題と選択式問題 1〜好奇心と暗記〜」の話でした。
選択式問題と記述式問題
武蔵中学・麻布中学などの入試問題で多い記述問題。
あるいは、「選択式問題」ばかりで「記述問題は、ほぼ出題しない」学校もあるでしょう。
「志願者の潜在的学力を判定する」には、基本的に記述式の方が良いのでしょう。
それは、「書く・描く」ことで、「受験者の考え方・能力・思考性」が全面的に分かるからです。
単に「与えられた中から選ぶだけ」の選択式問題。
対して、問いに対して「答えがたくさんある」ように見える記述式問題。
小さな頃から「ディスカッションする機会が多い」欧米の学び。
そうした「考える力」や「個性・多様性を伸ばす」には、記述式中心にしてゆくのが良いでしょう。
一方で、「非常に手間のかかる」記述式の採点。
中学受験〜大学受験において、「記述式」を採点している採点の方々は大変な苦労でしょう。
大学生の時に、ある塾の数学のクラス分け試験・テストゼミの採点をしたことがあります。
「記述式」の採点を経験したことのある方は分かると思いますが、結構大変です。
○X(マルバツ)の試験とは異なり、記述式試験の採点者は「相応の学力」が必要です。
高い学力・素養がないと、答案を読んでもよく分からない可能性があります。
すると、「採点することができない」のです。
いずれの場合も、基本的には「講師を中心に採点する体制」が作られ、採点基準が明確です。
例えば、20点満点の数学の問題では、
〜のところまでで、
3点・・・
ここまで到達していたら、
6点・・・
など「細かな採点基準」が事前に作成されます。
それをもとに採点しますが、
これは、
どのように点数を与えるのが良いのだろう・・・
・・・・・
悩んでしまう答案もあります。
A先生、
この答案は3点でよいでしょうか?
慣れたプロの講師の先生は、チラリと見て、
う〜ん。
これは・・・
・・・・・
5点だな。
このように、必ずしも「事前に定められた基準通り」に採点されるわけでもないこともあるでしょう。
合理的思考で選択肢を絞る思考:育む「考える力」
hs08JG17mtこのように受験者が、基本的に回答の全て・大部分を「自ら考えて書く・描く」記述式。
対して、受験者が「いくつかの選択肢から、正答を選ぶ」選択式。
全然違いますが、選択式問題も面白い問題もあります。
良い面が多い、記述式ですが「答えるのが受験生」です。
対して、選択式問題は「答えを作っているのが専門家・プロ」です。
つまり、選択式問題の選択内容の文章等は「しっかり作られている」のです。
選択問題では「一気に正答に至る」のが理想です。
一方で、出題者側も一生懸命工夫して考えているので、「一気に」は難しいです。
そこで、「合理的思考で選択肢を絞ってゆき、正答に至る」のも大事です。
選択問題から学ぶ姿勢
例えば、鎌倉時代の元寇に関する選択問題を見てみましょう。
元寇といえば、第八代執権・北条時宗です。
こういう選択肢の問題を勉強する時には、「正答を得る」ことに集中しがちです。
それは
そうでしょ。
点数を
上げるために、勉強しているから・・・
「何が正しいか、間違っているか」が最も大事ですが、選択肢の文章をしっかり読んでみましょう。
例えば、この問題では下記のようなことが挙げられています。
・当時の火薬
・博多湾の防塁(石塁)
・肥後御家人・竹崎季長
・恩賞と絵巻物
サラッと選択肢に描かれていますが、結構深い内容です。
「元寇当時の火薬」という視点は、なかなか参考書などに書かれていないでしょう。
そもそも、1543年に「種子島に漂着して」鉄砲が伝来した日本。
鉄砲といえば、織田信長・織田軍の印象が強いです。
そして、元寇は1274年(文永の役)と1281年(弘安の役)です。
元寇は「鉄砲伝来の250年ほど前」の出来事なのです。
そのため、元寇での戦いは「槍でバシバシ戦ったり、弓をピュッと射る」イメージが強いです。
「元寇の時代の火薬」は「あった・つかわれた形跡」があります。
そもそも、中国では古代から火薬などの武器は非常に発達していました。
他に博多湾の「防塁(石塁)」が挙げられています。
「防塁(石塁)」は、かなり専門的な言葉です。
こういう専門用語が中学受験で出題されていることは、少し意外です。
ただし、漢字の意味を考えれば、「どういうものか推測できる」と思います。
出題者が、かなり詳しい方で「本人が楽しみながら」問題を作成しているのでしょう。
こうしたことを「選択肢の問題から学ぶ」姿勢も大事です。