電気・回路の実戦的考え方 2〜回路の形と電球の配置・算数の問題と理科の問題は友達・対称性があること・形・図形に安定感がある・対称性から分かること・点から点の下がる電圧・状況を整理する姿勢〜|中学受験・理科

前回は「電気・電流・回路の実戦的考え方 1〜回路を流れる電流を考える・法則を理解する姿勢・丸暗記・パターンでは「分かる」こと・記述・応用問題への対応・原理・法則の理解〜」の話でした。

目次

回路の形と電球の配置:算数の問題と理科の問題は友達

回路を流れる電流:回路の対称性(新教育紀行)

「電球の明るさ」などを問うことが多い、電気・電流の問題。

今回の問題は「アの電流が光らない」という事実が伝えられ、「その理由」を問うています。

同様の問題として「アの電流が光りますか、光りませんか。理由を答えてください。」もあるでしょう。

いずれの場合も、電流・回路をしっかり理解する姿勢が大事です。

早速考えてみましょう。

こういう回路では、
ここの電流は0!

と習っているかもしれませんが、基本をしっかり考えて「なぜ?」を考えましょう。

回路を流れる電流:回路の対称性(新教育紀行)

回路・電流の問題では、

合成抵抗は
どのくらいだろう?

ここの電流は
どう流れるだろう?

と電流・抵抗に頭が行きがちです。

電気・電流の考え方:オームの法則(新教育紀行)

回路を流れる電流を考えるときは、「まずは電圧」を考えます。

今回の回路では、「電池一つ」なので、「電圧を発生させる元は一つ」です。

上の図のように、回路に赤い線を入れてみました。

この赤い線を考えると、何か気づきますか。

あっ、折り返しても
同じだ。

回路が
対称だね!

回路を流れる電流:回路の対称性(新教育紀行)

回路が「左右で折り返して同じ」で対称です。

対称性がある図形としては、正三角形・正方形・長方形・円などがあります。

正三角形の対称性(新教育紀行)

また、正六角形も対称性を持ちます。

正六角形の問題(新教育紀行)

「対称となる軸」や「中心・重心」は図形において、非常に大事です。

これは理科の問題だけど、
算数っぽいね・・・

算数の問題と理科の問題は「お友達」であることが多いです。

今回は、「算数の図形問題」と「理科の電気の問題」に類似点があります。

対称性があること:形・図形に安定感がある

正三角形の対称性(新教育紀行)

算数の図形問題で大事な「対称性」は、理科においても、とても大事な性質です。

世の中には「対称性があるもの」が、意外と沢山あります。

東北新幹線E5E6系こまち・はやぶさ(Wikipedia)

みなさんが座っている机や椅子も、「折り返したら同じ」で対称性があるでしょう。

あるいは、電車や車も「どこかの軸で折り返したら同じ」です。

この時、製造過程などで生じる誤差は考えずに、「基本的な形」で考えます。

なぜ、身の回りのものに「対称性があるもの」が多いのでしょうか?

確かに対称性があるものが多いけど、
なんでだろう・・・

対称性は知っているけど、
「なぜ対称?」は考えたことがないわ。

様々な理由がありますが、「対称であること」は非常に安定しています。

確かに
そうかも・・・

「左右で同じ」だと、
しっかりして見えるね!

「対称性があること」は、「安定感があること」です。

そして「対称となる軸に対して、同じ」です。

対称性から分かること

回路を流れる電流:回路の対称性(新教育紀行)

算数・理科において、「対称性があること」から分かることがあります。

上の図のように、「対称となる軸に対しては、流れる電流が同じになる」のです。

えっ。
本当?

なんだか、
不思議だね・・・

「折り返して同じ」となる対称性のある図形の回路。

ならば、流れる電流もまた「折り返して同じ」になるのです。

確かに、
そんな気がしてきた。

厳密に「なぜ?」は難しいかもしれませんので、「そんな気がする」くらいで良いでしょう。

対称軸に対して同じ位置の「電流の値」を未知数でおいて、計算してみても、結果が出ます。

「左右で同じ電流」なので、二つの電流を未知数として置いてみましょう。

形・図形の対称性:算数・理科

・どこかの面・線・点で折り返したら「同じ」形・図形になる

・形・図形が「同じ」時は、他にも「同じもの」がある

・安定感がある

点から点の下がる電圧・電圧降下

回路を流れる電流:回路の対称性(新教育紀行)

それぞれの電球の抵抗を「1」とします。

ここからは、下がる電圧=電圧降下を計算しましょう。

電気・電流・抵抗のある回路では、必ず「ある点からある点の電圧降下が経路によらず同じ」です。

電池が電圧をかけて、「エイッ」と電流を持ち上げて「流れる」のが電流です。

持ち上がった電流が、電圧降下で下がった時。

「下がる高さが異なる」と「合流できない」ので困ってしまいます。

基本的回路(新教育紀行)

この「ある点から点で、下がる電圧は同じ」をしっかり理解・イメージすることが大事です。

青色と緑色の経路での電圧降下を「電流x抵抗」で計算します。

回路を流れる電流:回路の対称性(新教育紀行)

これらの電圧降下が同じなので、考えていた電流の大きさは「実は同じ」でした。

計算してみたら、
分かったね・・・

こうして、計算して何かわかると、
魔法みたいで、楽しい!

状況を整理する姿勢

回路を流れる電流:回路の対称性(新教育紀行)

ここまでで、上記のような状況まで分かりました。

理科・算数では、「分かったことを一度整理」することも大事です。

回路を流れる電流:回路の対称性(新教育紀行)

電池によって電圧がかかって、電球(抵抗)で電圧が下がります(電圧降下)。

この時、電圧が下がる過程で「電力が消費されて、電球が光る」のです。

この「電力が消費」を「消費電力」と呼び、詳しくは中学・高校で学びます。

回路を流れる電流:回路の対称性(新教育紀行)

すると、アの電球の両側(図の上と下)では、「下がる電圧が同じ」です。

「元の上がる電圧=電池が同じ」なので、アの電球の両側では「同じ電圧」となります。

回路を流れる電流:回路の対称性(新教育紀行)

「両側が同じ電圧」では、電気の流れません。

それは、電流は「両方同じ電圧だと持ち上がらない」からです。

アの電球が光らない理由

・アを通る電線の両端が同じ電圧だから

「エイッ」と「持ち上げてくれる電圧」がいないと、電流は流れないのです。

やっぱり、
電圧が大事なんだね・・・

電圧があって、電流が流れる
イメージが、より分かってきた!

具体的に考える姿勢:未知数を設定

回路を流れる電流:回路の対称性(新教育紀行)

仮に「電気が流れる」と考えると、考えてみましょう。

もう、ここには「電流は0」って
分かったから、いいんじゃない?

「もう分かった」のですが、「別な視点」で考えてみましょう。

理科や算数では、「別な視点」「別解」を考える思考は総合力を高めるでしょう。

アを流れる電流の大きさを、設定します。

今回は、電圧ではなく「電流から考える」をしてみましょう。

いつも、
電圧が最優先じゃないの?

「主役は電圧」ですが、「脇役の電流」も時には「考える主体」になります。

回路を流れる電流:回路の対称性(新教育紀行)

上の点で「電流が合流する」ので、電流が計算できます。

その結果、「アを流れる電流は0」と分かります。

「両側(両端)に電圧の差がないから、電流は0」とパッと分かることも大事です。

このように、「計算してみたら分かる」ことも大事です。

基本的なことをしっかり考えるようにすれば、物理の問題は解けるようになります。

基本をしっかりと考えたので、少し遠回りに感じるかもしれません。

電気・電流を分かっている方は、もう少し途中を飛ばして考えても良いでしょう。

今回は、対称性を考えましたが、次回は「計算して解く」考え方をご紹介します。

新教育紀行

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

目次