ミッドウェー作戦を強行する山本五十六連合艦隊長官〜「勝てない米国」に勝つ信念・米海軍兵学校と米海軍・長官は純政治家の米国・日本海軍の大きな弱点・軍令承行令という年功序列人事〜|山口多聞15・ミッドウェー・能力

前回は「大きな懸念を持つ山口司令官〜先輩後輩の関係と意思決定・異常に逸る山本長官・日米の格の違いを最も認識していた男・海軍兵学校の先輩と後輩の影響〜」の話でした。

山口多聞 司令官(Wikipedia)
目次

ミッドウェー作戦を強行する山本五十六連合艦隊長官:「勝てない米国」に勝つ信念

山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

とにかく、ミッドウェー島攻略を
承認していただきたい!

山本長官には強い信念がありました。

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米提督 マシュー・ペリー(Wikipedia)

この時1942年であり米提督ペリーが浦賀に来た1853年から89年。

ペリーが来たときは幕末であり、日本と米国には巨大な差がありました。

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黒船来航(Wikipedia)

軍艦を多数持っていた米国に対して、軍艦を少し持っているものの「全て外国産」であった日本。

隔絶たる差がありました。

1941年の日本の軍需物資の依存度(歴史人2021年8月号 ABCアーク)

その後、明治維新以降猛烈な勢いで国家が発展した日本。

勢い込んで軍国主義の道を爆走してきた日本でしたが、資源が全くなく「米国とは格が違う」レベルでした。

今、米国を
完膚なきまで叩き潰し・・・

なんとか、日本が有利な形で
講和に持ってゆくのだ!

伊藤整一 軍令部次長(Wikipedia)

それは
出来ません!

山本長官、山口司令官同様に、「優等生肌」の伊藤次長。

山本長官の意見も
分からぬではないが・・・

ここで折れては日本海軍の
基本戦略が狂ってしまう・・・

山本長官ならぬ山本先輩に、必死で抵抗します。

伊藤次長、というか伊藤くんが
妙に頑固だ。

山本長官・伊藤次長、双方が折れません。

米海軍兵学校と米海軍:長官は純政治家の米国

Chester Nimitz米太平洋艦隊司令長官(Wikipedia)

実は、米海軍も似たような状況もありました。

海軍士官のほぼ全員が、アナポリス海軍兵学校を出ています。

新たに米太平洋艦隊司令長官となったニミッツ。

兼ねてから優秀なニミッツは、以前に一度すでに米太平洋艦隊司令長官就任を打診されています。

ここで、先輩を気遣ったニミッツ。

まだ
若輩者ゆえ・・・

一度断り、アナポリス先輩のキンメルが太平洋艦隊司令長官となりました。

沈没する米戦艦ウェスト・バージニア(歴史人2021年8月号 ABCアーク)

真珠湾奇襲攻撃の責任を取らされ、キンメルは更迭されます。

同じ兵学校卒業生が多かった米海軍ですが、日本と異なり「ほぼ全員が卒業生」ではありませんでした。

例えば、当時のノックス海軍長官(大臣)。

Frank Knox海軍長官(Wikipedia)

ノックス海軍長官は、大学卒業後に米西戦争に従軍し、新聞記者となります。

その後、新聞社を所有する実業家を経て、海軍長官となります。

Henry Stimson 陸軍長官(Wikipedia)

あるいは、ヘンリー・スティムソン陸軍長官。

イエール・ハーバード卒のヘンリー・スティムソン陸軍長官は、弁護士出身です。

この「一部の幹部は、同じ兵学校卒業でない」ところが、米国らしいところです。

日本海軍の大きな弱点:軍令承行令という年功序列人事

海軍兵学校生徒館(現 海上自衛隊幹部候補生学校)(Wikipedia)

日本海軍は、ほぼ全員が「海軍兵学校出身」です。

さらに、「年功序列」が明文化された組織でした。

海軍兵学校の成績という「学校の成績」を、その後の人事において最重視するのが日本だったのです。

対して、米海軍は日本海軍に比べて、非常に柔軟に人事を決定していました。

「学校の成績は良いに越したことがないが、大事なのは、実務能力」という「当然の姿勢」でした。

成績が良いことは、
努力した証でもあるが・・・

学校の成績が最優先されるのは、
おかしいのではないか・・・

そして、人事・作戦に「先輩・後輩」が
影響しすぎるのも、おかしい・・・

何から何まで、
大問題だ!

山口司令官は「日本海軍(陸軍)の弱点」を、はっきり理解していたのでした。

新教育紀行

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