前回は「山口多聞 13〜日本の進むべき道〜」の話でした。

逸る山本長官


今、今しかないのだ!



この、我が日本海軍が勢いに
乗っている今こそ!



米海軍を叩きのめす、
最大のチャンス!





軍令部としては、
認められません!



ならば、私は
連合艦隊司令長官を辞任します。



またか・・・
と思う伊藤軍令部次長でした。
海軍兵学校の先輩・後輩
海軍の将官は、ほぼ全員が海軍兵学校卒業生です。
つまり、組織内ほぼ全員が「同じ卒業生」なのです。
ということは、「先輩・後輩」が一生影響します。
海軍兵学校卒業期 | 名前 | 役職 |
28 | 永野 修身 | 軍令部総長 |
32 | 山本 五十六 | 連合艦隊司令長官 |
32 | 嶋田 繁太郎 | 海軍大臣 |
39 | 伊藤 整一 | 軍令部次長 |
40 | 山口 多聞 | 第二航空戦隊司令官 |
「海軍三顕職」と言われる、大幹部・軍令部総長・海軍大臣・連合艦隊司令長官。
その三役職は、28期〜32期に集中していました。
そして、「若手」は伊藤次長や山口司令官。
大幹部の方々よりも10期ほど下となり、「明確な後輩」です。



私は、
大先輩なんだぞ。



山本先輩は、
私の言うことを聞かない・・・



先輩・後輩と、
作戦計画は別では・・・
先輩の山本長官を抑えるのは、自分達の先輩の永野総長・嶋田海軍大臣しかいません。
嶋田大臣は、山本長官と同期で、気心知れています。
しかも、嶋田大臣より山本長官の方が卒業時の成績が良いため、「先任」になります。
それもあって、なかなか同期では反対しにくいのが実情です。
残るは「山本長官の先輩」の永野総長だけ。


しかし、永野総長も、逸る山本長官を抑えることが出来ません。



山本は、
なかなか強情でな・・・
先輩と後輩と
読者の方が社会人以上であれば、
うんうん。
分かる。
というご意見が多いでしょう。
小学生〜高校生では、この「先輩・後輩」という感覚は、分かる面・分からない面があるでしょう。
なんとなく分かるよ。
上の方には、なかなか
反抗できないわ。
最近はコロナのこともあって、様々な同窓会・OB/OG会の開催が少なくなりました。
以前は、よく武蔵高校のOB会の集まりに出かけていました。
僕は70期卒業ですが、初対面で年齢が近そうな方と話し始めると
〜ですね。
〜ですよね。
お互い、敬語で話が始まります。
ところで、
何期卒業ですか?
私は、69期卒業です。
卒業期が近いと、急に親近感が湧きます。
僕は70期です。
部活の先輩にTさんがいて・・・
ああ、Tな。
あいつ、すごく数学できたな。
そういえば、部活の後輩の
Oがいたけど・・・
ああ、Oですね。
水泳が得意でしたね。
こうなると、もう完全に「上下関係」が出来てしまいます。
それに応じて、言葉遣いまで変わってきます。
〜だよな。
〜ですね。
こういう「先輩・後輩」の関係は、「在学時に無関係」であっても、影響が出ます。
それはそれで、仕方ないのです。
しかし、この「上下関係」が「軍・仕事の領域に影響」することは、決して健全ではありません。



これで大丈夫か?
懸念する山口司令官でした。