思考力を問う問題〜現代教育の問題点・郷中教育・思考力・記述・出題者の考え・記述に対する姿勢・米大学の口頭試問・自分の考えを書いてみる〜|中学受験・社会

前回は「歴史・地理の記述問題の考え方 4〜武蔵中学の選択問題と記述・学校制度・学校と軍隊・自衛隊のイメージ・模範解答と記述〜」の話でした。

目次

現代教育の問題点と郷中教育

薩摩藩出身の幕末〜明治の威人(偉人)たち: 左上から時計回りに、西郷隆盛、大久保利通、大山巌、東郷平八郎(Wikipedia)

西郷隆盛・大久保利通らが、小さな頃から経験してきた郷中教育。

非常に思考力を深める教育でした。

現代日本の「知識・暗記中心の教育」とは「対局的」とも言える郷中教育。

教育に対しては、様々な考え方がありますが、「思考力を養う」ことが大事であることは明白です。

知識も大事ですが、知識ばかり溜め込むことは、「新たな発見などにつながる」姿勢にはならないでしょう。

この意味では、薩摩藩の郷中教育は「残すべきモノ」だったのかもしれません。

とは言っても、現代日本の学校制度とは全く適合しない制度である郷中教育。

「小学生が大学生と一緒に学ぶ」という状況は、考えようもない状況です。

制度は全く適合しなくても、郷中教育の手法・考え方は多い参考になる部分があるでしょう。

明治維新政府の行きすぎた「欧米の知識最優先・知識偏重主義」が、戦後日本の教育にも影響を与え続けています。

最近の小学校教育は変わったかもしれませんが、僕が小学生だった時、

これ、
わかる人は?

は〜い!

は〜い!

みたいな感じで「分かることを問う」ことは沢山ありましたが、

これに関する、
意見は何かない?

と「先生から尋ねられた経験」は記憶にありません。

中学入試と思考力・記述

こうした中、様々な中学校が受験において、様々な試みを行なっています。

「思考力を試験で測る」ことは、非常に難しいことだと思います。

「決められた時間内に、考える・表現する」ことは、「深い思考力」とは対極的でもあるからです。

一方で「試験を課す側の立場」から考えれば、

志願者たちの
「考える力」を測りたい・・・

今持っている学力も大事だが、
もっと大事なのは、将来伸びてゆくこと!

なんらかの志願者・受験生の「思考力の判断」はしたいでしょう。

中高一貫校の場合、子どもたちがその中高一貫校で過ごす時間は、中学高校の6年間です。

後になってみれば、「あっという間」かもしれませんが、実に長い6年という時間。

対して、小学校も6年間です。

小学校1年生から中学受験のために塾へ行っている方もいるでしょうし、小学校4年生からの方もいるでしょう。

小学校低学年・1〜3年生くらいの塾の雰囲気は、僕は行ったことがないので分かりません。

テスト・テストで、子どもたちは大変かもしれませんが、概ね「本気で学ぶ」のは小学校4年生くらいからでしょう。

すると、中学受験当日まで「約1〜3年ほど本気で学んだ」結果を、1日(あるいは2日)間の試験で測ることになります。

塾にしても小学校にしても、「小学生の間の学び」と「中高一貫6年間の学び」では、はるかに後者の比重が大きいです。

各学校の校風・カラー・教育理念によりますが、入学試験問題を作成・採点する教員は、

今、学力が高いことは
望ましいが・・・

もっともっと大事なことは、
当校で6年間、ミッチリ学んで、学力をつけること!

が「本音」なのではないでしょうか。

実際、中学受験の時に「非常に優秀」だった方が、中学で遊んでばかりで、全然学ばない方もいます。

また、中学受験の時に「抜群の成績」だった方が、高校くらいで失速する方もいます。

稀に中学受験の時に「抜群の成績」で、そのまま抜群をキープして「大学受験も抜群で突破」する方もいます。

そういう、「ずっとサイヤ人」みたいな方もいますが、なかなか「そうはなれない」のが現実です。

この「抜群の成績」は、それはそれで「すごいこと」です。

一方で「抜群の能力」は、後になって考えれば「効率よく知識・解法を習得する能力」に過ぎないことも事実でしょう。

出題者の考え・記述に対する姿勢・米大学の口頭試問

では、どのように志願者を選抜すれば良いのか。

これは、各学校の教員・教師たちが悩んでいることでしょう。

AIの急速な発展により、危惧を抱いた米国の大学。

カンニング対策もあり、米国で「口頭試問」をする大学が増えているようです。

この「口頭試問」は、面接の一つの形式であり、とても良いと思いますが、「大変手間・時間がかかる」のが問題です。

どうやって、当校で
ミッチリ学ぶ姿勢を持つ子どもを選抜するか・・・

このように考える教員たちは、一つの選択肢として「紙上の口頭試問」である記述を選びます。

やはり、「答えだけ」ではなく、
記述で本人の能力・指向性を測りたい・・・

そして、今後は少しずつ記述が増えてゆくと考えます。

僕が受ける予定の学校は、
ほとんど記述はないよ・・・

でも、突然、記述問題でたら、
どうしよう・・・

記述問題に苦手意識を持つ方は、多いようです。

記述は
難しい・・・

と考える一番の理由。

それは、「明確な答えがない」ことでしょう。

選択肢なら「ア」とか、答えを求める問題なら「寺子屋」と答えれば、○です。

一方で、記述式は、模試や試験で採点を受けることがあっても、

なんで、この
点数なんだろう・・・

どうやって、
模範解答みたいに書けるようになるんだろう・・・

「よく分からない」から「苦手」に感じてしまうのです。

自分の考えを書いてみる:記述対策・訓練

難しく考えずに、「自分が感じたこと、考えたこと」を書いてみましょう。

その結果、X(バツ)とか低い点数でも、

こういう
ことを書けば良いんだ・・・

と学べば良いのです。

まずは、「自分で書いてみること」をすることが、最大の記述問題対策です。

社会の問題では、記述問題が作りやすいと考えます。

例えば、下記のような問題を考えてみましょう。

歴史の人物

あなたの好きな歴史上の人物一人を選び、その人物の説明をして下さい。

そして、その人物に対する「あなたの意見」も含めて、書いて下さい。

人物の選定に対しては、点数の差はなく、説明・あなたの意見が評価の対象です。

こういう問題は、過去にもあったかもしれません。

大事なことは、「自分で選んで、意見を書くこと」です。

そして、「選んだ人物」は採点の対象でないことも、大事です。

織田信長・徳川家康・西郷隆盛・坂本龍馬のような超有名人物を選んでも、誰でも良いのです。

明治維新の立役者たち:左上から時計回りに木戸孝允、岩倉具視、大久保利通、西郷隆盛(Wikipedia)

夏休み、こういう問題を考えてみるのは、思考力を養うでしょう。

字数制限はあってもなくても良く、僕は「字数制限は必要ない」と考えます。

一方で、「決められた字数で表現するのも、また学力」と考える方もいらっしゃるでしょう。

字数は、200〜400字程度で書くことを考えてみましょう。

こういうことを考えると、勉強への意欲も湧くでしょう。

新教育紀行

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