前回は「ヘンリー・スティムソン 6〜大統領と総理大臣・ルーズベルト・近衛文麿〜」の話でした。

大日本帝国の天皇

第二次世界大戦で敗北し、米国・連合国に降伏した日本。
日本の憲法は、米国によって大きく塗り替えられました。
今も昔も存在する天皇(陛下)。
第二次世界大戦の昭和期に天皇であった昭和天皇。
戦前の第二次世界大戦までの天皇の立場は、現代とは全く異なる位置にいました。
天皇の下に政府があり、総理は「日本政府の運営者」に過ぎなかったのです。
現代でも天皇(陛下)の存在は、極めて大きいですが、天皇は「象徴」とされています。
現代では、外国に対する日本の最高意思決定者は、明確に内閣総理大臣です。
ところが、当時の大日本帝国を代表するのは、総理大臣ではなく天皇だったのです。
大元帥・天皇

上の図は「大本営」の組織図です。
大本営とは、戦時中に作られた「戦争に対応する組織」です。
大元帥って
書いてあるけど・・・
聞いたことないわ。
この「大元帥」こそが、日本軍の根幹でした。
政府の代表者である天皇は、「同時に大元帥でもある」存在でした。
そして、その大元帥に直属する組織に、大本営=日本陸海軍があったのです。
つまり、政府の上にいる天皇が同時に「大元帥」であり、大日本帝国の陸海軍を統帥・統括していたのでした。

そのため、陸軍大臣と参謀総長は「どちらが立場が上か」に関しては、「答えがない」のです。

「日本政府(内閣)の中にいる陸軍大臣」と「大本営の陸軍の中にいる参謀総長」は、「比較のしようがない」のです。
この組織図によると、「首相と参謀総長は同格」とも取れます。
東條総理の陸相兼任

ここに、東條総理の陸相兼任の理由があります。

少なくとも、政府内の陸軍は、
ワシが押さえねば!
前陸軍大臣として、「陸軍の大物」だった東條総理。
しかし、どこでも「派閥」があるため、「反東條」の一派もいました。



ワシには、
陸軍内に敵が沢山いる・・・
「陸相不在」で近衛内閣倒閣した張本人の東條総理。





私が陸相を兼任すれば、
「陸相不在」はない!
これこそが、「東條陸相兼務」の最大の理由であり、日本特有の事情でした。