日露戦争の流れ 4〜大日本帝国とロシア帝国・陸軍・満州軍の総指揮者・児玉源太郎・旅順での死闘・児玉の常識外の作戦・バルチック艦隊の動き〜|中学受験

前回は「日露戦争の流れ 3〜日本陸軍の戦略・日本とロシアに対する世界の視線・児玉の強い思い・自ら降格人事を強行・日清戦争と西南戦争・満州軍総参謀長・参謀総長・山縣有朋・児玉源太郎〜」の話でした。

目次

大日本帝国とロシア帝国

左上から時計回りに、ロシア皇帝ニコライ2世、大山巌 満州軍総司令官、児玉源太郎 満州軍総参謀長、アレクセイ・クロパトキン・ロシア満州軍総司令官(Wikipedia)

大日本帝国政府が「戦慄するほど巨大・強力な敵」であるロシア帝国。

項目大日本帝国ロシア帝国ロシア/大日本帝国
人口(万人)4,60012,0002.6
現役兵力(万人)1002002.0
歳入(億円)2.5208.0
火砲(門)6362,2603.6
艦船(トン)25803.2
石油産出量(万バレル)20044,500222
大日本帝国とロシア帝国の戦力比較(歴史群像シリーズ「日露戦争」学研、「二百三高地」東映、TRT World)

大日本帝国とロシア帝国の軍事力・国力を比較すると、まるで「巨人と少年」です。

全てにおいてロシア帝国が優っており、石油生産量に至っては「比較の対象」になりません。

「全く」と言って良いほど、資源がない日本。

それは現代も同様であり、石油・LNGなどのエネルギー資源のほとんどを輸入に頼っています。

「輸入に頼っている」ということは、「相手国との関係がこじれたら終わり」ということです。

エネルギー資源などは、各国備蓄しており、現代の日本も大量備蓄しています。

ところが、「備蓄している量はいずれなくなる」可能性があります。

左上から時計回りに、ゼレンスキー ウクライナ大統領、バイデン 米大統領、プーチン 露大統領、習近平 中国家主席(Wikipedia)

現代においても、この構図はさほど変わっていないのが実情です。

ウクライナ戦争勃発まで、欧州はエネルギー資源をロシアに頼っていました。

この点に目をつけたプーチン大統領は、欧州に対して、

エネルギーのパイプライン
・ノルドストリームを止めるよ。

エネルギー無くなったら、
欧州の皆さん、困るでしょ。

と、ウクライナ戦争開始後、一貫して恫喝し続けてきたのでした。

大日本帝国への視線:日英同盟

まさに、当時の大日本帝国にとっては、「巨大帝国に立ち向かう」状況のロシア帝国との戦い。

おい。
本当にJapanはRussiaと戦争始めるのか?

どうやら
本気らしいぜ・・・

Japanは
大丈夫なのか?

極東の小国だと
思ってたが、結構な軍事力があるらしい・・・

軍事力がある、って言ったって、
相手はあのRussiaだぞ!

ここで、大日本帝国にとって、とても頼りになる同盟国がいました。

日英同盟(外務省、Wikipedia)

大英帝国との「日英同盟」を、1902年に締結したのです。

元内閣総理大臣・元老 伊藤博文(国立国会図書館)

ロシア帝国と
戦争になった場合・・・

大英帝国は、我が国に
味方してくれることを約束してくれた・・・

まさに「地獄に仏」のような
大英帝国・・・

後は、米国にも
折衝しておいた方が良いな・・・

巨大帝国・ロシア帝国と新興国・大日本帝国の戦争。

これがどの程度の戦争になるかは、当時まだ分かりませんでした。

しかしだ、
Japanが本気でRussiaと戦争するとなると・・・

陸での戦場は、
両国の間になるな・・・

そうだな、
ChinaかKoreaあたりで、戦うんだろう・・・

日本とロシア双方にとって、大規模な戦争になる以上、同盟国との協力は極めて重大です。

日清戦争後に、「遼東半島返還」を強硬に迫られた大日本帝国。

この時、ロシア帝国は、ドイツ帝国・フランスを引き込んで、

Japanよ!
いいから、遼東半島をChinaに返せ!

外務大臣 陸奥宗光(Wikipedia)

なんなんだ?一体?
お前たち関係ないだろう・・・

この頃から、ロシア帝国・ドイツ帝国とは、かなり拗れた関係であった大日本帝国。

当時、世界中の強国が、かなり自己中心的な振る舞いをしていました。

その中でも、大日本帝国にとって「かなり真っ当な国家」であった大英帝国。

そして、米国が非常な勢いを持っているとはいえ、長らく世界最強国である大英帝国。

ロンドン(新教育紀行)

日英同盟が締結に至らなかったら、「大日本帝国を取り巻く状況」は全然違いました。

その時は、大日本帝国はロシア帝国との戦争に踏み切れなかったかもしれません。

陸軍・満州軍の総指揮者・児玉源太郎

満州軍総参謀長 児玉源太郎(国立国会図書館)

大日本帝国の陸軍は、陣容が固まりました。

私が、全ての作戦を
統括するのだ!

大山巌 満州軍総司令官(国立国会図書館)

作戦指揮は、全て
児玉さんにお任せしもそ・・・

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元内閣総理大臣・元老 山縣有朋(国立国会図書館)

ワシは、バリバリの軍人だから、
ワシも頑張るぞ!

大日本帝国の総力をかけた戦い。

まさに運命がかかっています。

職務上の権限役職名前
No.1参謀総長山縣有朋
No.2満州軍総司令官大山巌
No.3満州軍総参謀長児玉源太郎
日露戦争:陸軍の主要メンバー(職務権限)

児玉源太郎は、日露戦争陸軍のNo.3の満州軍総参謀長です。

私はNo.3だが、
実質No.1なのだ!

陸軍は全ての指揮を児玉に任せ、大山総司令官は、

我が軍が非常事態になるときは、
おいどんが責任をば、取り申す・・・

作戦指揮は、
児玉さんが思う存分やりなされ・・・

戦争における実質権限役職名前
No.1満州軍総参謀長児玉源太郎
No.2満州軍総司令官大山巌
No.3参謀総長山縣有朋
日露戦争:陸軍の主要メンバー(実質権限)

そして、児玉源太郎が最大の権限を有することになります。

陸軍も海軍も超強力なロシアに勝つには、海軍も大事です。

山本権兵衛海軍大臣は、新たに東郷平八郎を連合艦隊司令長官に任命します。

山本権兵衛 海軍大臣(国立国会図書館)

三国干渉を主導し、日本に遼東半島返還を迫ったロシア。

ロシアは旅順に進出し、巨大要塞を築き上げました。

そして、アジア太平洋地域侵攻のための旅順艦隊を配備します。

旅順での死闘:児玉の常識外の作戦

東郷平八郎 連合艦隊司令長官(国立国会図書館)

東郷率いる連合艦隊は、ロシアの旅順艦隊を攻めるのに苦労します。

旅順が強固な要塞となっていたことが、大問題でした。

「要塞を持つ艦隊を攻める」のは戦場における「城攻め」にも似ていたからです。

ここで、児玉源太郎総参謀長が出てゆき、「常識外の戦法」を命じます。

陸用大砲を軍が移動して、
ロシア艦隊を攻撃せよ!

いえっ・・・
あの、陸に据え付けている大砲を移動するのは・・・

聞いたことがありません!
不可能です!

反論する部下をギロっと睨む児玉。

・・・・・

お前たち・・・

お前たち・・・
我が軍の将兵たちは、毎日何人死んでおるのだ・・・

実際、旅順攻撃では、陸軍中心に多数の将兵が亡くなり続けていました。

前線の将兵たちは、コンクリートで固められた
ロシアの要塞目がけて、突撃し・・・・・

ロシア兵の機銃掃射を浴びて、
銃弾に撃たれて、大勢が・・・・・

ここで、目を瞑る児玉。

お前たち幕僚は、大勢の将兵が銃弾に撃たれ、
死んでいるのに、「出来ない」と言うのか?

いや、しかし・・・

ここで、児玉はキレてしまいます。

いいから、俺の言う通り、
やれ!

お前たちが机の上で、あれこれ
言っている間に、将兵は死んでいるのだぞ!

とにかく、
やれ!

24時間以内に
やるのだ!

これは、総参謀長である
私の「命令」だ!

はっ!

こうして、強硬手段で旅順艦隊撃滅を主導した児玉総参謀長。

とっておきの切り札:バルチック艦隊登場

「日本海軍など旅順艦隊だけで十分」と思っていたロシアは驚きます。

わがRussiaが、
Japanなんぞに負けただと!

驚いたものの、まだロシアには本国に最強と言われるバルチック艦隊がいました。

ならば、
こちらは「とっておきの切り札」を出すぜ!

バルチック艦隊を
派遣してJapanを全滅させろ!

ロシアは、最終手段にでます。

モスクワ近海にいたバルチック艦隊は日本目指して進行します。

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バルチック艦隊航路(Wikipedia)

数多くの艦船を擁したバルチック艦隊は二手に分かれて、日本目指して大遠征を開始します。

喜望峰を廻る艦隊は半年以上かけて、日本にやってきました。

バルチック艦隊にとって、途中に数多くの領土を持つ大英帝国の協力は必須です。

Great Britainの皆さん、
我がRussiaに協力を!

No!
我が国は、Japanと同盟中だ!

ロシアは英国に協力を申し出ますが、英国は日英同盟を盾に拒否します。

バルチック艦隊が日本へ行くまで、英領への寄港を一切許可しません。

さらには、英国艦隊を派遣し、日本を応援し続けました。

大英帝国は「国際法に抵触しない」ギリギリのラインで、バルチック艦隊を揺さぶります。

大英帝国の大いなる協力により、バルチック艦隊は十分な整備をすることができない状況です。

そのまま、一路日本を目指します。

この整備状況で、
大丈夫か?

まあ、相手は
Japanだからな・・・

大したことないだろう・・・
我がバルチック艦隊で一撃だ!

とにかく、大日本帝国を見くびっていたロシア帝国。

対する日本海軍は、自国のドックで完全なる整備を行いました。

そして、万全の体制でバルチック艦隊を迎え撃つことになりました。

秋山真之 第一艦隊参謀(Wikipedia)

明晰な頭脳で知られる秋山真之参謀が作戦を練り、

どこで、
どのようにバルチック艦隊を迎え撃つか・・・

考え続ける秋山。

・・・・・

バルチック艦隊が、

太平洋に抜けるか、
日本海に来るか・・・

を様々な情報を駆使して探り、「日本海にくる」確報を得ます。

バルチック艦隊は、
日本海に来るぞ!

東郷平八郎率いる連合艦隊は、バルチック艦隊を待ち受けます。

そして、日本海でバルチック艦隊を万全な体制で迎撃する準備を着々進めていました。

陸の「大山+児玉」と海の「東郷+秋山」がそれぞれ中心となり、遥かに強大なロシアと戦ったのです。

新教育紀行

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