海兵同期・宇垣纏の山口多聞への叫び〜優秀で個性的な「花の40期」の将星・人生最後の敬礼と答礼・海軍軍人・海軍兵学校卒業生の最後のケジメ・全ての想いを胸に・深い海へ沈んでゆく飛龍〜|山口多聞47・ミッドウェー・最期の言葉

前回は「山口多聞の魂の叫び〜自沈する飛龍を前に・学生時代に戻った山口司令官と加来艦長・先輩と後輩への思い・同期への最後の叫び・花の海兵40期の男たち〜」の話でした。

山口多聞 司令官(Wikipedia)
目次

海兵同期・宇垣纏の山口多聞への叫び:優秀で個性的な「花の40期」の将星

海兵40期の同期:左上から時計回りに大西瀧治郎 航空本部総務部長、宇垣纏 連合艦隊参謀長、山口、福留繁 軍令部第一部長
(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社、Wikipedia)

40代後半の体力・知力・経験が豊富な「花の40期」の山口司令官の同期たち。

優れた人物たちであり、各方面で日本海軍を支えていました。

海軍兵学校卒業期名前役職
32山本 五十六連合艦隊司令長官
36南雲 忠一第一航空艦隊司令長官
37小沢 治三郎南遣艦隊司令長官
39伊藤 整一 軍令部次長
40山口 多聞第二航空戦隊司令官
40大西 瀧治郎航空本部総務部長
40宇垣 纏連合艦隊参謀長
40福留 繁軍令部第一部長
41草鹿 龍之介第一航空艦隊参謀長
42加来 止男飛龍艦長
連合艦隊幹部の海軍兵学校卒業期(ミッドウェー作戦)

山口と共に航空隊の指揮を務め、今は航空部隊の要である航空本部総務部長の「空母航空派」大西瀧治郎。

この瞬間も山本長官と共に戦艦大和に搭乗し、連合艦隊参謀長を務める「大艦巨砲派」宇垣纏。

軍令部第一部長として、伊藤次長に次ぐ軍令部No.3の権限を有する「中間派」福留繁。

大西、宇垣、
福留・・・

加来止男 飛龍艦長(Wikipedia)

みなさん、
個性的な先輩でした・・・

山口司令官たち海兵40期の2つ下の42期卒業の加来艦長。

中学・高校の部活でも「1期違い」はライバル心があるため、しっくりこない関係になることがあります。

ところが、「2期の違い」というのはちょうど「お兄さんと弟」になるので、良い関係であることが多いです。

40期は非常に優秀で、
面白い方々ばかりです・・・

同期の大西・福留たちは東京の軍令部などにおり、ミッドウェー作戦には参加していません。

そのため、飛龍の状況をこの時点では知る術もありません。

山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

飛龍を・・・

飛龍を
自沈せよ・・・

山本長官が「飛龍の自沈処分」を決定した時に側にいた、山口と同期の宇垣纏 連合艦隊参謀長。

宇垣纏 連合艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

飛龍を
自沈・・・

山口・・・

航空派の山口・大西とは対極的な「大艦巨砲派の権化」とも言われる存在の宇垣。

戦艦大和の建造を誰よりも強く推進しました。

戦艦大和(Wikipedia)

「傲岸不遜」な性格で知られた宇垣。

宇垣は山口とは、さほど親しくはありません。

概ね150名ほどが定員だった海軍兵学校。

学年によって人数が大きく変わりますが、山口と同期の40期は144名の卒業生がいます。

海兵次席卒業の山口に対して、9位の成績で卒業した「同じ優等生」で頭脳明晰な宇垣。

あの山口の性格を
考えると・・・

親しくはないものの、山口の性格をある程度理解していました。

この大敗北の責任者である
司令官であり・・・

さらに、蒼龍に続き、
飛龍まで失うとなると・・・

奴の
ことだ・・・

おめおめと
帰ってくることはないだろう・・・

同期だからこそ、山口の性格と気持ちを十分に理解していました。

山口・・・

山口、
死ぬなよ!

山口よ・・・

頼む!
ここは堪忍して・・・

ここは
帰ってきてくれ・・・

ところが、電話など「気持ちを伝える手段」がないこの時、同期・宇垣の「心の叫び」は届きそうにありません。

人生最後の敬礼と答礼:海軍軍人・海軍兵学校卒業生の最後のケジメ

米軍機の攻撃により炎上する空母飛龍(Wikipedia)

味方駆逐艦の魚雷発射の準備が整いました。

発射準備完了!

飛龍の艦橋で、静かに魚雷の発射を待っている山口司令官と加来艦長。

いよいよだな・・・

はい・・・

山口と加来は見つめ合って、互いに最後の覚悟を決めます。

さらば・・・

おさらばです・・・

ここで、加来はキリッと右手を上げて「最後の敬礼」を山口にします。

そして、山口はゆっくりと手を上げて答礼して敬礼を返し、お互いに見つめます。

・・・・・

・・・・・

そして、ゆっくりと、極めてゆっくりと右手を下ろし「最後の答礼」を終えます。

続いて加来もまた、右手をゆっくりと下ろして「最後の敬礼」を完了します。

海軍兵学校時代から叩き込まれた「上官・先輩への敬礼」と「部下・後輩への答礼」。

何度やったか分からぬほど、これまでに何度も何度もやってきた敬礼と答礼。

しかし、これが正真正銘の最後です。

これが
最後の・・・・・

これで
最後です・・・・・

海軍兵学校時代から海軍軍人となることを、ひたむきに目指してきた人生。

彼らにとって青春の全て、そして人生そのものが海軍でした。

そして、兵学校時代からずっと先輩・同期・後輩に囲まれてきた人生。

山口・加来にとっては「自分から海軍をとったら、何も残らない」人生でした。

海軍軍人・兵学校生徒として「最初に習得すべき」ことであった敬礼と答礼。

これを最後にすることは、山口と加来二人にとって「海軍軍人・海軍兵学校卒業生」としての最後のケジメです。

全ての想いを胸に:深い海へ沈んでゆく飛龍

左上から時計回りに永野修身 軍令部総長、山本五十六 連合艦隊司令長官、伊藤整一 軍令部次長、小沢治三郎 南遣艦隊司令長官
(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

やがて・・・

魚雷発射!

山口司令!

加来艦長!

味方駆逐艦から魚雷が飛龍に向けて放たれ、飛龍へ直撃し、

ダダーン!!!

と猛烈な轟音がしました。

ああ!

山口司令!

加来艦長!

味方駆逐艦から放たれた魚雷で、最後の致命傷を受けた空母 飛龍。

新教育紀行
第二航空戦隊 空母飛龍(Wikipedia)

ゴォォォ〜!!!

鋼鉄の塊であり「巨大な機械」とも言える飛龍。

最期は、まるで生き物であるかのように大きく身を捩って断末魔を上げました。

そして飛龍は、深い深い海の底へ沈んで行きました。

山口多聞 第二航空戦隊司令官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

山口司令官と加来艦長と共に。

新教育紀行

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