必死に帽を振る山口多聞〜小林飛行隊の米空母への攻撃・友永丈一隊長の密かな強い決意・「第二次攻撃の要あり」打電の責任・〜片道分の燃料と悲壮な覚悟〜|山口多聞41・ミッドウェー・軍人の鑑

前回は「秘めたる決意を吐露した山口多聞〜若き小林道雄飛行中隊長への伝言・絶体絶命の中・加来止男飛龍艦長の奮戦・米軍の猛攻撃と反撃準備〜」の話でした。

山口多聞 司令官(Wikipedia)
目次

必死に帽を振る山口多聞:小林飛行隊の米空母への攻撃

小林道雄 飛行中隊長(歴史街道2007年8月号 PHP研究所)

もはや状況は絶望的で、日本海軍が勝つ可能性は0%です。

「勝つ可能性を模索」するよりも、目の前に「日本空母全滅」の言葉がチラつく中、

なんとか・・・
なんとか反撃を!

米空母 Hornet(Wikipedia)

米空母への反撃をして、一矢報いることを試みていた山口司令官率いる飛龍の将士たち。

米空母 Enterprise(Wikipedia)

そして、27歳の若き小林飛行中隊長に出動を命じた山口司令官。

海軍兵学校卒業期名前役職
32山本 五十六連合艦隊司令長官
36南雲 忠一第一航空艦隊司令長官
40山口 多聞第二航空戦隊司令官
41草鹿 龍之介第一航空艦隊参謀長
42加来 止男飛龍艦長
52源田 実第一航空参謀
52淵田 美津雄第一航空艦隊飛行長
59友永 丈一新任・第一航空艦隊飛行長
62小林 道雄 飛龍飛行中隊長
連合艦隊幹部の海軍兵学校卒業期(ミッドウェー作戦)

艦上爆撃機18機と護衛の零戦6機を指揮して、米空母へ向かった小林隊。

山口司令!
行って参ります!

頼んだぞ!

発艦!

帽を振れ!

頼む!
小林隊長!

当時、日本海軍は出撃する航空隊の将兵に対して「子をって」見送りました。

いつもの海戦においても、「出撃したら帰ってこない・戦死する」可能性が高い航空隊。

出撃する航空隊の将兵を鼓舞し、場合によっては「お別れ」となることを意識しながらの一種の儀式でした。

航空隊の出撃の際:帽子を振って見送る

・帽子を省略して「帽を振れ!」の合図の中、長官・艦長含めた将兵が航空隊を送り出す

・航空隊を鼓舞し、出撃したら帰ってこない(戦死)可能性がある将兵への「お別れの意味」も含む

この時飛龍を発艦する小林飛行隊は、まさに「決死隊」であり、山口司令の「帽を振り方」にも力が入ります。

頼むぞ!
みんな!

九九式艦上爆撃機(Wikipedia)

しばらくして攻撃隊から、

敵空母へ
爆弾六発命中!

敵空母炎上中!

との報告が入ります。

よし!

山口司令官他の将官たちも喜び、飛龍艦上は湧きます。

よくやった!

ただし、大半の飛行部隊の犠牲を伴いました。

帰還したのは、わずか数機。

小林隊長機もまた、帰還しませんでした。

・・・・・

悲嘆にくれる山口司令官。

悲嘆にくれる間も、米軍の攻撃は続きます。

Douglas TBD雷撃機(Wikipedia)

友永丈一隊長の密かな強い決意:「第二次攻撃の要あり」打電の責任

友永丈一 第二航空戦隊飛龍飛行長(Wikipedia)

僕の
責任だ・・・

赤城司令部へ「第二次攻撃の要あり」と打電した友永隊長。

その結果として、二度の兵装転換に至りました。

その責任を痛感していた友永隊長。

僕が、あの電信を
したから・・・

友永隊長は、前線の隊長として「責務を果たした」のでした。

草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

そして、「兵装転換」の判断を下したのは赤城司令部です。

「兵装転換」の誤判断をした責任は、南雲長官・草鹿参謀長たちに帰せられるべきです。

南雲忠一 第一航空艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

責任感が非常に強かった友永隊長。

ミッドウェー作戦の直前に、自分が隊長となったことにも、責任を感じていました。

「第二次攻撃隊の要あり」
の判断が間違っていた・・・

ベテランの淵田中佐に比べて、実戦経験がはるかに少なかった友永隊長。

その力量と「人をまとめる力」を買われて、急遽代理で隊長となりました。

やはり、
僕には実戦経験が少なかった・・・

実戦経験が少ない
僕の誤判断だ。

僕の判断の
誤りが・・・

この事態を
招いたのだ。

僕の責任だ。

そして、友永隊長は、

この責任は、
果たす!

僕の生命と
引き換えに・・・

敵空母を
地獄へ引きずってゆく!

密かに強い決意をしていました。

片道分の燃料と悲壮な覚悟

第二航空戦隊 空母飛龍(Wikipedia)

友永隊長!
先ほどのミッドウェー島空襲で大問題です!

隊長機の
タンクに被弾です!

どちらの
タンクだ?

左タンクです!

これでは、片道分しか
燃料が積めません!

片方で
十分さ!

敵空母は
近いだろ。

さっと行って、
魚雷を当てて戻ってくるさ。

隊長、
私の機をお使いください!

おいおい。

みんな、
僕が操縦上手いの知ってるだろ?

すぐ
帰ってくるさ・・・

隊長、
僕の機をお使いください!

大丈夫
だってさ・・・

しかし・・・

右タンクだけで
十分さ。

満タン、
頼むな。

目一杯
入れてくれな。

新教育紀行
九七式艦上攻撃機(Wikipedia)

友永隊長は
死ぬ気だ・・・

友永隊長の心の奥底の決意を感じ取る周囲の将兵たち。

隊長・・・

隊長・・・・・

ははは・・・

大丈夫さ!
敵空母をやっつけて、戻るさ・・・

無理な笑顔をつくって、遠い目をする友永隊長。

・・・・・

すでに、母艦の飛龍も敵の攻撃弾を受けて、損傷しています。

悲壮感が支配する中、将兵たちが必死で戦いを続ける空母飛龍。

絶体絶命の中、山口司令官は指揮を執り続けます。

山口多聞 第二航空戦隊司令官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

なんとか・・・

なんとか一矢・・・

一矢を
米海軍に報いるのだ!

やられてばかりで、
終わってたまるか!

新教育紀行

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