秘めたる決意を吐露した山口多聞〜若き小林道雄飛行中隊長への伝言・絶体絶命の中・加来止男飛龍艦長の奮戦・米軍の猛攻撃と反撃準備〜|山口多聞40・ミッドウェー・功績

前回は「有能な優等生提督・山口多聞の航空戦への強い思い〜軍令違反と猛将の矜持・一気に壊滅した赤城・加賀・蒼龍・悪夢から反撃へ・航空戦の真髄・初めての空母航空隊司令長官へ〜」の話でした。

山口多聞 司令官(Wikipedia)
目次

絶体絶命の中:加来止男飛龍艦長の奮戦

ミッドウェー作戦の米国空母(歴史街道 2022年8月号 PHP研究所)

米空母に
反撃だ!

反撃を志す山口司令官。

一方で、状況は最悪であり絶体絶命です。

敵空母は二隻いることが判明(実際は三隻)しました。

「不沈空母」であるミッドウェー島は、空母二隻以上の戦力です。

新教育紀行
ミッドウェー作戦の日本空母(歴史街道 2022年8月号 PHP研究所)

そして、正規(大型)空母四隻の大部隊で臨んだ「虎の子」の日本空母は大打撃を受けました。

空母赤城・加賀・蒼龍が米海軍の奇襲攻撃で一気に大炎上してしまい、飛龍のみが残りました。

この「空母四隻(実際は五隻)」相当に対する日本軍は、飛龍一隻のみ。

まだ飛龍が
健在だ!

加来 止男飛龍艦長(Wikipedia)

加来艦長!
仇をとるぞ!

山口司令!
お供します!

空母飛龍のみで、
敵空母二隻を撃沈してみせる!

海兵42期卒業の加来艦長は、写真の通り非常に実直で芯のある将軍でした。

山口と加来のコンビと、若きパイロットたちで米軍への反撃を試みます。

草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

完全に読み違えた、この作戦の事実上の責任者であった草鹿参謀長は、

・・・・・

もはや作戦指揮できる状況にはありません。

米軍の猛攻撃と反撃準備

第二航空戦隊 空母飛龍(Wikipedia)

辛うじて、被弾を避けることができた空母飛龍。

三隻の空母が叩き潰され、米軍は「残り一隻」の飛龍へと次々と襲いかかってきます。

米空母エンタープライズ艦上の攻撃機(Wikipedia)

米空母エンタープライズ・ホーネット・ヨークタウンから、次々と攻撃隊が発艦します。

そして、飛龍上空には、他の味方三空母から飛び立った味方飛行隊が多数います。

彼らを収容しなければなりません。

Douglas TBD雷撃機(Wikipedia)

飛行甲板で整備員が収容準備を進める中も、米軍の戦闘機は機銃掃射を浴びせます。

ぐわっ!!

ううっ!

弾丸に対して、丸裸の状態の整備員。

整備員たちは、次々と倒れます。

米空母 Hornet(Wikipedia)

その中、

必ず、必ず
敵を倒してみせる!

飛龍一艦で、
敵艦隊を撃滅してみせる!

「指揮官たるもの目標を明確にして、それに一途邁進すべし!」という原則を貫く山口司令官。

米空母 Enterprise(Wikipedia)

しかし、すでに状況は日本海軍にとって圧倒的不利であり、米軍は圧倒的力を有していました。

周囲は、阿鼻叫喚の地獄絵図となっています。

秘めたる決意を吐露した山口多聞:若き小林道雄飛行中隊長への伝言

小林道雄 飛行中隊長(歴史街道2007年8月号 PHP研究所)

ここで、山口司令官は、米軍機が去ってひと段落した時にチャンスを見出します。

今だ!

小林道雄 飛行中隊長を呼んだ山口司令官。

小林大尉!

はっ!

飛龍は何としても、
仇を討つ!

大変な中だが、
爆撃隊を率いて、米空母を叩き潰してくれ!

まだ30歳の友永大尉よりもさらに若い、27歳の小林飛行中隊長。

海軍兵学校卒業期名前役職
32山本 五十六連合艦隊司令長官
36南雲 忠一第一航空艦隊司令長官
40山口 多聞第二航空戦隊司令官
41草鹿 龍之介第一航空艦隊参謀長
42加来 止男飛龍艦長
52源田 実第一航空参謀
52淵田 美津雄第一航空艦隊飛行長
59友永 丈一新任・第一航空艦隊飛行長
62小林 道雄 飛龍飛行中隊長
連合艦隊幹部の海軍兵学校卒業期(ミッドウェー作戦)

絶対絶命の中、大いなる闘志を持って、敵へ向かう決意をします。

すでに戦争の主人公は山口司令官たちベテランから、小林中隊長たち「若き星」たちに移っていました。

まだ27歳で「若き希望の星」である小林中隊長。

全力を
尽くします!

そして、
敵空母を撃滅します!

この圧倒的劣勢の中、出動を命じることは「死ね」と命令するに等しい状況です。

まだ先のある
若い連中に・・・

こんな命令をすることに
なるとは・・・

49歳の山口司令官。

27歳の小林飛行中隊長は、自分の子どものような年齢です。

みんな、本当に
すまない!

大変な中だが、
米空母を撃滅してこい!

そして、秘めたる決意を露にします。

司令官も必ず
後からゆく!!!

山口司令官が「必ず後からゆく」といった「行き先」。

この時、飛龍及び上空で戦っていた将兵たちにも、見えていたかも知れません。

その「行き先」を。

山口多聞 第二航空戦隊司令官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

そこは平和な現代日本に暮らす私たちには「理屈では理解できる」が「実感はできない」場所なのでしょう。

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