西郷隆盛 20〜奄美大島へ・月照・平野国臣〜|島流し

前回は「西郷隆盛 19〜出兵から急転直下・将軍後継問題・島津斉彬の死〜」の話でした。

薩摩藩士 西郷 隆盛(国立国会図書館)
目次

逃避行

月照(Wikipedia)

ここで、西郷自身の身も危険ですが、徳川幕府から危険分子と見做されていた月照。

月照を
捕縛せよ!

幕府に捕まったら、月照はおそらく死罪となります。

ここで、月照と親しくしていた名家近衛家から、

月照を頼む。

と、月照の身の安全を依頼された西郷。

一緒に薩摩に
逃げるしかない。

こうして、京から薩摩まで月照と共に逃げる西郷。

自動車も飛行機もない当時、ほぼ歩いて薩摩までなんとか月照を連れて行った西郷。

自分の立場は、薩摩藩に入れば大丈夫そうです。

しかし、島津斉彬が急死し、前の藩主である島津斉興が実権を握った薩摩。

薩摩藩の政治状況は、再び非常に保守的になっていました。

第十代薩摩藩主 島津斉興(Wikipedia)

我が藩士である西郷が
徳川幕府に睨まれているだと・・・

さらに
捕縛対象の人物を連れてきただと・・

・・・・・

西郷の扱いは、
藩士である以上、別だが・・・

その月照とやらは、
薩摩にとって不都合な存在でしかない・・・

月照とやらは、
始末せよ。

薩摩藩の特殊性

こうして、

月照どんは、
我が薩摩藩が匿う!

西郷の思惑は、大きく外れました。

当時の薩摩藩は、独立性が非常に強く、徳川幕府の密偵すらも潜入が、ほぼ不可能でした。

各藩に密偵を放ち、様々な情報を得て諸大名を管理していた徳川幕府。

薩摩に行った密偵が、
戻ってこないぞ。

薩摩藩に潜入した密偵は、幕府の元には戻ってこなかったのです。

言葉も全く違うため、潜入する密偵は、薩摩藩士に見破られ、牢獄に入れられるか消されたのでした。

薩摩が「江戸から遠い南の端」という地理的状況と、このような独特の「秘匿性」から

薩摩なら、
幕府の追求を逃れられる!

と西郷が考えたのは、当然だったのです。

ところが、

月照殿を
匿うのは出来ません!

えっ!

まさか・・・

愕然とする西郷ですが、自分一人の力では、藩論を変えることは出来ません。

前薩摩藩主 島津斉彬(Wikipedia)

斉彬様が
ご存命だったら・・・

悔やむ西郷ですが、どうにもなりません。

入水

月照どん。
申し訳なか・・・

いえいえ。
仕方のないことです・・・

西郷さんは、
一生懸命やってくれました。

その事に、
私は心から感謝しております。

月照どん・・・・・

自分の身がどうなるかを薄々気づいている月照でした。

こうなったら、
おいどんも死のう!

月照どんと一緒に
死のう!

斉彬様のいない世など、
未練がないごわす。

秘かに、死ぬことを決意した西郷。

そして、

月照を
日向送りにせよ!

薩摩藩から西郷に命令が降りました。

「日向送り」とは、薩摩藩から日向(宮崎県)に移送し、「その藩境で処刑せよ」ということです。

月照どん・・・・・

筑前福岡藩士 平野国臣(Wkipedia)

月照の従者として薩摩に一緒にきていた、筑前福岡藩士の平野国臣。

本当に、
本当に残念です。

絶望した西郷は、錦江湾で月照らと船に乗り、

月照どん、一緒に
死にましょう!

はい・・・

西郷は月照と共に入水します。

月照と同意の上か、西郷が強引に小柄な月照を引き連れて入水したのか、は諸説あります。

さ、西郷さん!

平野たちが懸命に西郷を救助しました。

大男であった西郷を、水の中から救助することは非常に大変なことです。

この当時のことも諸説ありますが、

死ぬはず
だったのに・・・

「死を決していた」西郷は、助けられて一月ほどの療養生活の後、なんとか復活します。

死にたい・・・

おいどんだけ生き残り、
月照どんに、申し訳なか・・・

奄美大島へ島流し

薩摩藩士ではない月照が死んだものの、薩摩藩士である西郷の扱いに困った薩摩藩。

西郷をどうするか・・・

薩摩は匿う力は
ある・・・

だが、徳川幕府と
争いたくない・・・

大老 井伊 直弼(Wikipedia)

特に、あの井伊大老を
怒らせたら、大変な事になりそうだ・・・

薩摩藩が潰されて
しまうかもしれぬ・・・

困った、元の藩主 島津斉興。

とはいっても、代々家臣を大事にしていた薩摩島津家としては、

我が藩士を、処刑するわけには
いかぬ・・・

・・・・・

西郷には、
薩摩の外に出て行ってもらうしかない・・・

西郷を
島流しにせよ。

こうして、奄美大島へ島流しとなった西郷。

生き残ってしまった・・・

薩摩藩士にとって「江戸へゆく」ことは、現代の「日本から欧州へゆく」ようなイメージだった当時。

日本の中心地・江戸で縦横無尽に活躍してきた西郷。

今度は、「日本の端」の奄美大島でしばらく過ごす事になりました。

一度は
死んだ身・・・

生きていることだけでも、
有難か・・・

新たな人生が始まろうとしていました。

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