合格のポイント・偏差値への向き合い方〜合格最低点のライン・入学試験の性質:志願者の学力を点数に置き換えて審査・偏差値と合格判定・問題と採点基準〜|中学受験

前回は「合格のポイント・視点〜合格ライン・合格最低点・中学校側が考えていること〜」の話でした。

目次

合格のポイント:合格最低点のライン

武蔵中学・高校のかつての校舎(新教育紀行)

受験生であれば、「合格最低点」は誰しも気になります。

この「合格最低点」によって勝負が決定して、考えようによっては未来が変わります。

受験生の運命を決定づける「合格最低点」という数字。

「合格最低点」の点数が「各科目の単純合算でない場合もある」でしょう。

ある芸術系大学のある教授は、「合格最低点」に関して下記のような話をしました。

ある教授の話

入試における基本的姿勢は、単純合算である。

特に合否ラインは単純合算で合格・不合格とはしていない。

例えば、

・数学は抜群にできるけれども、デッサンが下手すぎて「流石にもう少し上手く描けないか」という人

・デッサンは抜群に上手だけれども、数学や物理がほとんどできてなくて「もう少し出来てて欲しい」と感じる人

を「合格にすること」がある。

それは、合否ラインにいて「全ての科目が、まあまあ出来る」人よりも、良い面がある。

こういう「一芸に秀でた人」の方が、成長が見込めるからだ。

さらに、単純な合計点によって入学者(合格者)を決めるよりも、こういう人がいた方が、全体として良い。

多様性が高まって相互で切磋琢磨する過程が面白い。

その切磋琢磨の過程で優れたセンスをお互い発揮して、成長してゆくことを期待している。

同様なことは、他の学部や大学もやっている可能性があります。

「合格最低点」は公表され、それぞれの点数が明らかにされて合格・不合格が決まっています。

上の話を具体例で考えてみましょう。

実技(デッサン等)を含む3科目の試験で科目は仮に算数・理科・実技として、それぞれ配点が100点とします。

この300点満点の試験で、合格ラインが181点だったとします。

この時、180点の得点者が多数いて、本来ならば「不合格」となります。

氏名算数理科実技合計点
Aくん655560180
Bさん557055180
Cくん652590180
ある大学のボーダーラインの人々の点数

上の例だと、Aくん、Bさんは「全科目大体できて、多少の得意不得意がある」感じです。

ところが、C君は実技は抜群ですが、算数はまあまあ、理科はかなり点数が低いです。

こういう時は、上のような「合格基準」に基づくと「Cくんが合格」となります。

それでは、合格ラインの方の点数と
合格最低点はどのように判断しているのかな?

氏名算数理科実技補正点合計点合否
Aくん6555600180不合格
Bさん5570550180不合格
Cくん6525905185合格
ある大学のボーダーラインの人々の点数補正

その場合は、上記の例のように「点数を補正」しているのでしょう。

このようにすれば「合格最低点は181点」となります。

これは推測に過ぎませんが、発表している情報を正とするならば、一つの考え方と思います。

入学試験の性質:志願者の学力を点数に置き換えて審査

新教育紀行
空と雲(新教育紀行)

入学試験は「学校が採用したい人を決めるため」の試験です。

試験を作っているのは学校で、試験の点数を決めるのは学校側の責任かと思います。

模試は「受験生の学力を測定する」と「学力を偏差値に置き換えて、合格判定を出すための試験」です。

この二つの試験は、似ているようで全く異なるものです。

入学試験と模試

・入学試験:志願者のその時点の学力をもとに、その将来性を測る

・模擬試験:志願者のその時点の学力を測り、偏差値に置き換えて合格判定を出す

試験の点数が「飛び抜けたところ・非常に優れた才能が認められる」と加点されること。

それは、点数の単純合算だけではないでしょう。

各学校が考える「学生に対する理念」に適合する学生。

そういう学生を「合格としたい」「入学して欲しい」と考えているでしょう。

偏差値と合格判定:問題と採点基準

新教育紀行
武蔵中学・高校のかつての校舎(新教育紀行)

各学校の「偏差値」があります。

偏差値は「その学校の難易度の具体的な数値」とも言えます。

「同じ試験」における子どもの成績もまた偏差値という「具体的数値」となります。

その数値同士を比較して「合格の可能性=判定」が出てきます。

この「偏差値=具体的数値」というのは「受けた試験」に対する数値であることです。

1. その試験が志望校の入試のカラーに適合しているか

2. 採点の仕方が志望校・特にカラーの強い有名校の採点方法・基準に適合しているか

の二点が適合していなければ、偏差値の意味合いは小さくなります。

1は、志望校型模試で各塾が研究を尽くして、ある程度整合性があるでしょう。

2は、各校極秘の内容で、各塾は「推定する」しかありません。

推定ができるとしても、1のように「入試にほぼ近づける」のは、ほぼ無理なことです。

模試の採点は、多くの方が行います。

「同一の採点・審査基準」を採用するとなると、どうしても「学校ならではのカラー」は出せません。

政治や経済、あるいは実社会において、数字は「一人歩きしやすい」ものです。

ひょっとすると、目前の「数値=偏差値」は、あまり意味がない数字かもしれません。

親が、

この偏差値と判定は、
我が子にとって、どのような意味があるのか?

を冷静に判断しましょう。

「模試の偏差値が、入試本番の結果と異なる」理由には多くの理由が考えられます。

本人の体調なども大きな理由ですが、この「採点方法・基準の相違」も原因の一つであります。

「偏差値を上げる」よりも大事なこと。

それは、子どもを「志望校に合格させる」ことをより深く考えることでしょう。

新教育紀行

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