前回は「歴史の流れを知って、知識・記述問題対策しよう〜徳川幕府から新政府へ 2(版籍奉還の実態)〜」でした。
今回は「廃藩置県」の話です。
まずは1869年に版籍奉還を実行して「藩をなくす」ことには成功しました。
しかし、「旧藩主が知藩事に変わっただけ」という側面もあり、大きな骨格は徳川幕府時代と大して変わりませんでした。
これに対して「廃藩置県断行!」を強く主張したのは大久保利通です。

廃藩置県を断行せねば、近代国家日本は生まれない!


徴兵制に対して強烈な反感を持っている士族もいて、廃藩置県まで強行すれば反乱を起こす藩が出てくるかもしれません。
鹿児島県=旧薩摩藩の事実上の藩主であった島津久光は、猛反対していました。



廃藩置県だと!
お前たちは、我が薩摩藩を潰す気か!
大体、一蔵(大久保)よ。お前は私の家臣だろうが!
勘違いするなよ!



薩摩などで反乱が起きたら、大変だ。
反対者が多い中、岩倉と大久保は反乱勃発を危惧します。


維新最大の功績者であり「軍事の第一人者」であり「最強士族の薩摩士族のドン」である西郷隆盛。
この時、よりによって西郷は薩摩に帰っていました。
それは、新政府にとって「最大の問題」であったのです。
なんとしても西郷には戻ってきて欲しい新政府。



西郷よ。戻ってきてくれ。



嫌ごわす。
政府内では、突然華美な生活するものなどいて、ほとほと嫌気がさした。
あの戊辰戦争は一体なんだったんだ。
たびたびと上京を促す新政府に対し、西郷は拒絶します。


困った岩倉と大久保は最後の手段に出ます。
明治天皇にお願いして、岩倉具視を勅使として鹿児島に派遣し、西郷に上京し新政府への協力することを促します。



西郷よ。
いい加減に戻ってこい。



岩倉さんや、一蔵どんが何を言おうが、聞くつもりはなか。
じゃっどん、明治天皇の要請を拒否することは出来んごわす。
我らは、明治天皇の家臣でごわすから。


これには流石に西郷も拒絶はできず、「自分の案を容れる」という条件付きで新政府に戻ります。



岩倉さん、一蔵どん。
おいどんの意見を容れるごわすな!



了解した。
西郷さんの言う通りにしよう。



というか、西郷がいなければ何も始まらない。
仕方ない。
当面、西郷の言う通りにするしかない。
この時、大久保等と揉めて一時的に下野していた木戸孝允と板垣退助も西郷の上京に応じて、新政府に戻ってきます。



西郷は倒幕の時から嫌いだったが、あの子分だった大久保がなんだ?
増長しすぎじゃないか。
大体、倒幕は我ら長州の久坂・高杉らと私たちが先鞭つけたのだ。
そして、久坂も高杉も早くに亡くなってしまった・・・・・
薩摩は最初は、幕府側だっただろ?
なんで、大久保がデカイ顔してるんだ?





そもそも、江戸城無血開城して、
「簡単に討幕できた」と勘違いしてないか?
武力討幕だったのだから、西郷さん率いる薩摩藩士や
吾輩が率いた土佐藩士の血で、討幕できたのだ!
討幕が到達できた途端に、大久保が出しゃばってきおって。
そして、「薩摩士族のボス」である西郷に廃藩置県の了解を取ります。



私は私利私欲で、新政府にいるのではない。
新しい日本国家をつくることができるのは、私だけなのだ!
新たな時代のためには「廃藩置県は必要」と考えていた西郷も同意します。



廃藩置県に反対し、反乱起こすものあらば、
おいどんが軍隊率いて鎮圧しもそ。
おいどんが責任取りもそ。
薩摩・長州・土佐から兵を集めて新たに「御親兵」を組織してます。



薩摩のものども。
御親兵という軍隊組織するから、集まりやんせ。



分っかりました!
西郷どんの命令ならば!
どこへでも出撃します!
旧薩摩藩は、西郷が一声かければ旧薩摩藩士がドッと押し寄せてきます。
旧長州藩は総帥の木戸孝允が兵を集め、旧土佐藩は軍事を握っていた板垣退助が協力しました。


「西郷+巨大な軍事力」で睨みを効かせた上で、新政府は廃藩置県に思い切って踏み切ったのです。
当時の日本における「最強の軍隊+最強の男=西郷隆盛」が組んだ体制であした。
「廃藩置県に反感を持っている」藩主等を黙らせるには十分でした。
反乱を起こしたところで、鎮圧されるのが目に見えているからです。
また、新政府は用意周到に「藩の借金は新政府が肩代わりする」と各藩主に伝えました。
積もりに積もった借金の山に悩んでいた大勢の旧藩主。
「肩の荷が降りるなら」と廃藩に応じる旧藩主も大勢出てきました。
借金の山を抱えながらも怒り心頭の旧薩摩藩主 島津久光。



借金帳消しなど、どうでも良い!
おい、一蔵(大久保)よ!
お前、本気なのか!
もうどうにもなりません。


怒りのやり場のない島津久光。
一晩中花火を打ち上げて、廃藩置県への怒りを晴らしたのでした。



だから、西郷は大嫌いなのだ。
一蔵(大久保)のやつも、わしを裏切りおった。
私は薩摩の主ぞ!
島津久光のこういう子供っぽいところが、西郷や大久保をずっと悩まし続けてきました。



おい、一蔵!
ならば、私を新しい、その鹿児島県とやらの県令(知事)にせよ!



それはご勘弁を。
久光様には極官である、左大臣を用意してごわす。



左大臣だと!
で、私の薩摩は誰が治めるんだ!



・・・・・
元々、久光とは非常に近い関係だったものの、クールな性格の大久保は久光との関係を割り切っていました。
性格的に、情に篤い西郷。
主人であった島津久光との関係に、これまでずっと、そして最後の最後まで悩み続けることになります。