歴史の知識・記述対策〜徳川幕府から新政府へ 2:版籍奉還の実態・討幕の主導者・西郷隆盛の絶望・藩の解体の第一歩・島津久光・大久保利通・木戸孝允・岩倉具視〜|中学受験・社会

前回は「歴史の知識・記述対策〜徳川幕府から新政府へ 1(幕藩体制の実態)・独立国家・藩札・島津久光・大久保利通・木戸孝允〜」の話でした。

目次

討幕の主導者・西郷隆盛の絶望

大蔵卿 大久保利通(国立国会図書館)

今回は「版籍奉還」の話です。

とにかく藩を解体し、
全ての権限を新政府に持たせねば!

藩を廃止することを、最も躍起になっていたのは大久保利通でした。

この頃、明治維新・王政復古最大の立役者とも言える西郷隆盛。

なんとなく嫌になってしまい、薩摩に帰り、新政府とは距離を置いていたのでした。

参議 西郷隆盛(国立国会図書館)

私が求めていた「新しい世」は、
これではなかった・・・・・

あの戊辰戦争で流した多くの血は、
一体なんだったのか・・・・・

西郷隆盛が薩摩・鹿児島へ帰ってしまった理由。

それは、

あんなに苦労して、
徳川家を倒したのだが・・・

なぜ、こんなに勘違いする
バカが多いのだ。

と西郷が憤ったからでした。

新政府側の人間の中に、突然華美な生活をし始めた人がたくさん出てきました。

長州藩出身の政治家:左上から時計回りに、木戸孝允、伊藤博文、井上馨、山縣有朋(Wikipedia)

中でも、長州藩出身の井上馨、山縣有朋の汚職っぷりは言語道断でありました。

少し後のことになりますが、これが原因で井上馨は「失脚しかける」ことになります。

これは私が求めていた
国の姿・政治とは違う!

西郷は、

もう全てが
嫌になった・・・

と感じます。

徳川幕府討幕目指して一途に邁進してきた西郷隆盛。

戦場の前線に立ち続け、多くの人物が亡くなるのを目前で見てきた西郷でした。

やっと討幕が実現されて、疲れ切ってしまったのでしょう。

第十五代将軍 徳川慶喜(Wikipedia)

実に多くの将兵が
亡くなった・・・

かつては「この方こそ!」と思った
徳川慶喜公を叩き潰したのも私・・・

武力討幕を押し進めた西郷でしたが、当初は徳川慶喜を推戴する姿勢だったのでした。

討幕という目的が大きすぎたために、討幕後の自分のイメージが湧かなかったのでしょう。

もう、みんなで
勝手にしてくだされ!

西郷は絶望した、故郷・薩摩(鹿児島)へ帰ってしまいました。

藩の解体の第一歩:版籍奉還

島津国父 島津久光(斉彬の異母弟)(Wikipedia)

「時代の流れ」ではありましたが、島津久光を始めとして、自分達の立場は変わって欲しくないのです。

徳川幕府がなくなって、
新政府が出来たのは理解した!

私の立場は変わらないのが、当然だ!
私は「薩摩の主」なのだ。

これを
分かってんだろうな!

西郷よ!
一蔵(大久保)よ!

そこで、大久保たち新政府は「版籍奉還」を実施します。

そして、まずは形式上各藩の藩主から、お上=天皇へ領土等全てを返還してもらいます。

版籍とは

版=版図・領土

籍=戸籍・領民

そして旧藩主は「知藩事」という現在の知事のような立場に「新政府から任命する」形になりました。

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近代日本への第一歩の次の手

参議 木戸孝允(国立国会図書館)

ところが、「知藩事」という名前に藩が入っていることから分かるように、「形式上のこと」でした。

実情は、大して変わらなかったのです。

といっても、世襲制であった大名に対して「政府の任命」という意味では大きな前進でした。

藩主が知藩事になっただけだ。
大して変わってないではないか・・・

だが、廃藩を強行すれば、
大きな反乱が勃発するかも知れん。

新政府は出来たばかりで、
またひっくり返ってしまう可能性もある・・・

ちょうどこの頃、新政府で軍事の中心人物であった大村益次郎

大村が推進する「徴兵制」に強く反対していた士族に暗殺されてしまいます。

陸軍大輔 大村益次郎(Wikipedia)

木戸孝允は茫然自失になるほどのショックを受けました。

私が見出した才能ある大村が、
不平士族に暗殺された・・・・・

政府の中心人物の一人である彼すら、
あっさり暗殺されるようでは、非常にまずい・・・

高杉・久坂亡き後、長州藩の重要人物として自分が見出した、元医師の大村益次郎。

ずっと後見人のようにバックアップしてきて、「新生日本・長州藩のため」には不可欠の人物だったのです。

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陸軍大輔 山縣有朋(国立国会図書館)

大村の死後は、長州出身の山縣有朋らが軍事を担当します。

廃藩置県強行に対する反乱の懸念

外務卿 岩倉具視(Wikipedia)

廃藩置県を強行する場合「起こりうる反乱・非常事態」は、非常に大きなことでした。

これに対処するのは、山縣らが束になっても難しそうです。

反乱が起きた時、我らが新政府軍に「出撃しろ!」と、
命令したところで・・・

彼らは
従うまい・・・

特に旧薩摩士族は、
我らをなんとも思っていない。

陸軍少将 桐野利秋(Wikipedia)

我らにとって
大事なのは西郷先生だけだ!

岩倉なんか、
どうでもよいわ!

新政府軍の中核をなす存在の「旧薩摩藩士」たち。

薩摩出身といえども、
大久保も別にどうでも良い!

薩摩出身の巨頭・大久保利通には、「旧薩摩藩士」を押さえつける力量はありません。

やはり、
あの男がいなければ・・・・・

彼の命令なら、
旧薩摩士族たちは従うでしょう。

岩倉・大久保は、

あの男に新政府に
戻ってきてもらおう!

と考えます。

新教育紀行

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