前回は「てこの応用・太さが一様でない棒 1〜つり合いのイメージ・非常に安定して静止・類似点を探す姿勢・理科への探究心・重ね合わせる〜」の話でした。
つり合いのイメージ:2つの状況・現象
太さが一様(同じ太さ・密度)ではない「棒・てこ」の問題。
ここで特徴的なのは、「左端を引き上げている」状況と「右端を引き上げている」状況があることです。
太さが一様である棒・バネの問題でも、
バネが直列などで結ばれている問題でも、
あるいは動かっ車・定かっ車の問題でも、「考える状況は一つ」であることが、ほとんどです。
バネ・てこ・かっ車などが「力・重さ」を対象とするのに対して、電流・電圧が対象の電気。
考える対象は異なりますが、「ある理科(物理)の現象」であることを考えると考えましょう。
その時、これらはいずれも「一つの状況・現象」です。
これに対して、「太さが一様でない棒」を考えるとき、多くは「2つの状況・現象」を考えます。
確かにそうだね。
突然、二つ出てきて・・・
なんだか、
分からなくなってしまう・・・
「左端を引き上げる」と「右端を引き上げる」の2つの状況・現象を足し合わせる話をしました。
足し合わせる・重ね合わせる:イメージ・考え方
「足し合わせる」考え方は「重ね合わせる」とも言い、とても大事な考え方です。
2つの状況・現象を「足し合わせる」あるいは「重ね合わせる」と、上のようになります。
ここで、パッとこれが分かるのは、難しいことでもあります。
「足し合わせる」「重ね合わせる」は
分かるけど・・・
なぜ、「足し合わせる」「重ね合わせる」と
こうなるのか、ちょっとピンとこない・・・
私って、理科のセンスがあまり
ないのかな・・・
考え方としては、難しくはない「足し合わせる」「重ね合わせる」。
一方で、状況・現象を「足し合わせる」「重ね合わせる」しっかりイメージ・理解するのは難しいです。
こういうことを「理解できるかどうか」には、センスは大して関係ありません。
「足し合わせる」「重ね合わせる」考え方は、中学・高校物理でも大事な考え方です。
小学生の間は、「なんとなく分かる」くらいで良いでしょう。
大体、でいいの?
「基本をしっかり」という
姿勢が大事なんじゃないの?
この「足し合わせる」「重ね合わせる」考え方は、一つの「基本的考え方」です。
そのため、「しっかり理解できること」が望ましいです。
一方で、これらの「基本的考え方」のイメージは、完璧を目指さない方が良いかも知れません。
ある程度は、「大体わかる」「こんな感じかな」でも良いので、イメージをしっかり持ちましょう。
・「基本的考え方」はクリアなイメージを持つようにして、完璧を目指さない
・「大体こんな感じ」でも良いので、公式だけではなく具体的イメージを持つ
算数と理科:「像を重ねる」イメージ
「足し合わせる」「重ね合わせる」考え方は、「力・重さ」等に限りません。
電流・電圧などでも、状況によっては考えられます。
電気の応用問題で、「足し合わせる」「重ね合わせる」考え方が出題される可能性はあります。
「足し合わせる」「重ね合わせる」時は、「像を重ねる」イメージが良いでしょう。
・様々な理科(物理)の現象で、同じ対象に対して、2つの異なる状況を考えることができる
・「足し合わせる」「重ね合わせる」は「像を重ねる」イメージ
「像を重ねる」
イメージかあ・・・
ちょっと分かりやすく
なったかも・・・
二つの状況を、「影のように」考えてみましょう。
みなさんが校庭で友達と一緒にいる時に、お互い同じ向きに影ができます。
「影の長さ・面積の問題」が算数でありますが、あのイメージで、足して・重ねてみましょう。
この意味では、算数と理科は非常に親近感のある関係にあります。
てんびん算・てこは、算数も理科も全く同じ考え方です。
「算数と理科(物理分野)は、お友達」なのです。
お互いをイメージすると算数・理科(物理分野)の両方の学力が上がるでしょう。
・算数と理科(物理分野)は似ている面があり、お友達の関係
・理科の「重ね合わせる」イメージは、算数の影の問題で「足し合わせる」イメージ
重心と重さ:モーメント(回転する力)
状況を足し合わせて、棒の重さが求まりました。
「重ね合わせ」「足し合わせ」したので、重さも「足し合わせ」ることになります。
ここで「重心」を考えましょう。
なぜ、「重心を考える」必要が
あるの?
「重心を考えない」考え方は
あるの?
こういう問題では、「当然のように」重心が出てきます。
そして、「なぜ、重心を考えるのか?」という姿勢はとても大事です。
重心を考える理由は、一定の大きさのモノが登場すると「重心はとても大事」だからです。
理科・物理では、本当は「大きさがある」モノを「点」などで考えることがあります。
それに対して、一定の大きさのモノは中学・高校の物理では「剛体」と呼びます。
剛体?
覚えなくて良いので、「そういう言い方もある」くらいで良いでしょう。
「ある大きさがある」モノ・「一様でない」モノを考える時、重心は極めて大事です。
重心を考えずに先に進めることは、「ほとんどない」と言っても過言ではないでしょう。
「回転する力」を考えてみましょう。
重心とは「モノの重さが一点に集まっていると考えられる」点です。
「全ての点(場所)に重さがある」棒は、「重さが重心一点に集まっている」と考えます。
・モノ(棒など)の重さが一点に集まっていると考える点
・重心の位置は、モノ(棒など)の形によって変わる
・モノ(棒など)が、同じ太さ・密度(一様)であれば、重心は中心
比を考える
重心から左右の端までの距離を、それぞれ△・□と置きましょう。
これは、「◯・△」でも、「◯・□」でも自分が好きなように設定しましょう。
棒の長さは80cmですから、「△ : □の比」を求めます。
算数でも比の問題は沢山ありますが、理科では「比は非常に重要」です。
図形問題は、比を押さえれば、ほとんどの問題が解けます。
相似形や同じ図形などを考えて、辺や面積の比を考えれば、解けることが多いです。
この時、「どの比に着目するか」が大事ですが、この点は理科は分かりやすいです。
補助線などで「考える対象」が隠れていることが多い算数。
それに対して、理科は目の前の状況として「現れていることが多い」のです。
・算数は、図形問題などで、隠れている対象含め「どの比に着目するか」を考える
・理科は、目の前の現象の棒・電線などのモノの長さなどに注目
回転する力と比:「共通点を理解する」姿勢
理科の問題で、長さなどを求める場合は、長さを直接考えるよりも、
比が
分かるかな・・・
と考えましょう。
重心の周りで、「回転する力」を考えましょう。
二点で吊り下げられて「釣り合っている」ので、棒のどの部分でも「釣り合いが取れている」のです。
棒のどの部分(点)でも、「上下の重さの釣り合い」と「回転する力の釣り合い」が取れています。
どの点で考えても良いですが、「力の掛かっている点」で考えるとシンプルです。
重心の周りの、反時計回りと時計回りの「回転する力」が釣り合っています。
「掛け算して同じ(等しい)」ですから、「△ : □の比」が分かります。
「△ : □の比」は、重さの逆比です。
整理して、「△ : □ = 3 : 5」で、合計80cmですから、それぞれ求まります。
これで、
逆比の理由が分かったよ。
これなら、「逆比」と暗記しなくても
分かる!
そういえば、
バネと棒の時と、似ている・・・
二つの現象・状況は「異なる」のですが、「似ている」面もあります。
このように、様々な現象・状況を「別々に学ぶ」のではなく「共通点を理解する」と良いでしょう。
しっかり理解していれば、「覚えなければならない公式」は少なくなるのです。
生物などは「覚えなければならない」ことが多いですが、自分なりに理解して習得しましょう。
次回は、異なる視点から、この問題を考えます。