前回は「歴史の事柄や出来事を考えるコツ〜記述の模範解答例への考え方・飲料水と都市の地形・平城京から平安京への流れと「幻の長岡京」・遷都の大きな理由〜」の話でした。
歴史の選択問題を解くコツ:正しくない答えをサッと除外
続けて、室町時代に関する状況・事柄を選ぶ問題です。
それぞれ「2つ選ぶ」問題で、こういう問題は、
これが
答えだ!
と「答えが分かる」のが望ましいですが、それほどハッキリ分からないこともあります。
この選択肢で、少し迷うように
作ろう・・・
このように、問題作成者は「適切な点差がつく」様にうまく問題を作っています。
こういう問題は、「確実に正答に至る」よりも「正しくない答えを除外する」方針が良いでしょう。
ア:備中ぐわ・千歯こきは江戸時代の農具で、新田開発が進んだのは江戸時代なので、✖️です。
私は合戦で強かっただけでなく、
内政にも尽力したのだ!
仙台藩62万石の雄藩だった伊達家は、初代・政宗の頃から、新田開発を熱心に行ったことで有名です。
仙台平野に位置した伊達家は地形にも恵まれており、伊達家は「実高100万石以上」と言われました。
室町時代は典雅な京文化が発展しましたが、新田開発など農業や商業の発展は戦国期・江戸期以降です。
イ:農民たちが「自分たちの手で村を治めた」は室町〜戦国期の中世で、ありそうなので○です。
ウ:「戸籍に登録された」農民とありますが、さすがに室町時代に「戸籍」はないので✖️です。
エ:室町時代にも飢饉はありましたが、組織的な百姓一揆は江戸時代なので✖️です。
オ:「武士と農民が(結託して)大名の軍を引き上げさせた」のは、応仁の乱を思い起こさせます。
農民が軍を?
武士と結託したら出来るかな?
このように考えると、オは△です。
以上から、「室町時代にあてはまる」答えはイとオです。
この問題は、はっきりと、
室町時代だから、
イとオだ!
と、直接正答に至る方は、かなり歴史に詳しい方でしょう。
「あてはまる」は時代背景等の解釈があるので、「あてはまらない」ものをサッと除外すると良いでしょう。
「典雅な京文化」の室町時代
ア:雪舟と水墨画は、時代背景的に合ってそうで○です。
イ:西まわり航路と東まわり航路は江戸時代のことなので、✖️です。
現代のようにトラック・電車・飛行機がない時代、物流は海が中心でした。
何か物を運ぶことを考えると、「船が最も適していた」のが昔の時代です。
そのため、中世頃から現在考えるよりも遥かに太平洋側・日本海側で水運が盛んでした。
それでも、「東まわり航路・西まわり航路」が整備されるのは、江戸時代を待つ必要があります。
ウ:有馬焼・薩摩焼などの陶器が盛んになったのは、江戸時代頃なので✖️です。
エ:「水の流れを表現する石庭」は枯山水で、これはまさに室町文化で○です。
オ:阿弥陀堂などは平等院鳳凰堂と同時期なので、室町時代よりずっと前の時代です。
「貴族が皇族が熊野もうで」も少し古風な感じがするので、✖️です。
室町時代は応仁の乱の印象も強いですが、全体的には「京都の文化」が花開いた時代です。
室町時代に対しては「典雅な京文化」の印象を持っておくと良いでしょう。
「○と考えられる」時も自信がない時は、「○にチョット?」みたいな記号を書いておくと良いです。
答えはアとエです。
現代生活と過去の生活をイメージ
次は「都市における、し尿」に関する」問題です。
問4で飲料水(上水)に関して考えましたが、今回は排泄物を含む下水の話です。
現代都市においても、下水はインフラの中で筆頭に上がるほど超重要な事柄です。
トイレで水をジャーッと流すと、「排泄物はどこかへ消えてゆく」イメージがあるかもしれません。
実際には「消える」はずはなく、排泄物等を含んだ下水は「水再生センター」等で再生されます。
そして、「再生されてきれいになった水」は川や海に流されて、それがまた雨になって降ってきます。
この、「川や海の水が雨となって降る」のは地理的な話でもあり、理科的話でもあります。
この問題は社会の問題ですが、
トイレの水の話だけど、
自然の循環の理科っぽい話もある・・・
と、現代と室町時代の生活の実態を想像しながら学ぶと良いでしょう。
トイレの話で、「いつ頃、どのような背景」で「ふさわしいもの一つ」を考えます。
ア:平安時代に「し尿の処理の規則はなさそう」なので、✖️です。
イ:陶器が広がるのは江戸時代で「し尿を大きな壺に溜める」は、ちょっと不自然な気がします。
確信持ってXではなさそうなので、△です。
ウ:「し尿が農業の肥料として使われ、捨てずに活用」は、まさに日本の農業の本質ですから○。
江戸時代も「し尿は農業の重要な肥料」であり、「し尿なくして農業は成立しない」状況でした。
この「し尿を肥料」が室町時代から始まっていたかは「?」の面があるかもしれませんが、
江戸時代にはやっていたはずで、
ならば、中世には始まっていた感じかな?
何事も「一気に始まる・広まる」ことは非常に少ないので、何らかの慣習は徐々に浸透します。
「農業におけるし尿・肥料」は「室町時代頃から広まっていった」と考えましょう。
こういうことは、「知識として知っているか」ではなく、時代背景・流れから推測しましょう。
エ:「江戸時代に人口が城下町に集中」は正しいですが、「公衆便所設置」は難しそうです。
現代のように下水が完備していれば良いですが、
江戸時代に公衆便所って
維持できるのかな?
公衆便所を設置して維持管理するのは、相当ハードルが高いことで大変困難ですからXです。
以上から、答えはウです。
女子学院中2024年の第一問は、あと二問ありますが、この問6までとします。
この問題は、全体的な水・飲み水(上水)・し尿(下水)を扱っていて、とても良い問題です。
合格するためには入試で、これらの問題を「7割程度確保」する必要がありそうです。
結構難しいけど、
7割取れるかな・・・
早い時期に過去問にドンドン取り組んで、解答の説明はしっかり理解しましょう。
そして、「過去問から学ぶ」姿勢で少しずつ理解と知識を増やしてゆくと良いでしょう。
・「過去問から学ぶ」姿勢で少しずつ理解と知識増強
・解答を読んで、出来れば周辺の時代背景や事柄を理解して、知識を立体化
次回は下記リンクです。