前回は「『裏をかく』の意味を読み解く〜難しくない言葉の意味を明確に表現する力・「具体的にどういうことか」を考えてみる姿勢・登場人物たちの思い〜」の話でした。
「極めて異例のこと」を読み解く思考:曖昧な日本語の「極めて」の意味

今回も前回に引き続き、「読み解く力」を養成する学びに関する話です。
・「読解」力=文章に「書いてあること」を的確に把握して処理する力
・「読み解く」力=文章に「書いてないこと」を深読みして理解して表現する力
何かを「読み解く」力は、極めて重要です。
国語などにおいて「読解力」が求められる中学受験においては、「読み解く力」が求められることは、かなり少ないです。
筆者は、中学受験の色々な学校の国語の問題を見ていますが、漢字や「作品の作者を問う問題」などの問題を除き、「文章に対する理解を問う」問題の99%は「読解力を測る」問題です。
「読解力を測る」のは、多くの場合で「選択肢問題」、「抜き出し問題」、「文章中の言葉を使用する記述」です。
それに対して、「心情を読み取る」などのハイレベルな問題は、極めて少ないです。
これらの「心情を読み取る」などの問題は、「文章中の言葉」ではなく、「端的に表現するとどういうことか」を説明する必要があります。
今回は、前回と同じ場面で、この「端的に表現する」ことを考えてみましょう。
まずは、下記の3つのリンクを順にご覧ください。
この3つの物語の流れの概要を下記にまとめます。
迫水久常なんとか、なんとか
早く終戦へ・・・
当時、内閣書記官長(内閣官房長官)だった迫水久常は、複雑極まりない大日本帝国の統治機構の中、「確実に終戦へ進める手続き」を模索していました。
「海外放送(同盟通信社)を利用」など、「あの手この手を尽くして」いた迫水久常。



なんで、あのような
海外放送をやらせたのか!



いったい、誰が
許可したのか!



いったい、お前は
我が皇軍をなんだと思っているのだ!!
ところが、陸軍を中心とする軍部は、徹底抗戦を叫び続けて「いきり立っていた」のであり、「暴発寸前」というよりも「暴発しかけていた」状況でした。



四日前の八月九日、皇居の防空壕の中で
開かれた最高戦争指導会議には、



正式に陛下のご臨席を賜ったが、
この時は、ご臨席奏請の書類に必要な



梅津参謀総長、豊田軍令部総長の
花押は事前に頂いていたものを使った。



あの時は、無断で花押を使ったから、
今回「下さい」と言っても、



あの二人(梅津と豊田)は
断ってくるだろう・・・



極めて異例のこととは
存じますが、今度の御前会議は、



陛下の方からお召しを頂くように
されたらいかがでしょう。
「終戦の手続き」には、「御前会議における昭和天皇の裁可」が必要だった当時。
迫水書記官長は、本来ならば「帝国政府・大本営が昭和天皇に御前会議を申し出る」手続きを、「昭和天皇が自ら招集する」手続きに変えようと「画策」しました。



それが
一番良いようだね。





本日十時に
参内せよ。
それを受けて、昭和天皇は「自ら御前会議招集」に踏み切ったのでした。
この「自ら御前会議招集」は、「単に御前会議を招集した」に留まらない話であり、昭和天皇の視点から考えると「天皇の慣例を自ら破る」極めて重大な決断でした。



陸軍省の
者だが・・・



迫水書記官長だね。
君はまた我々の裏をかいたな。



これから、我々がどうするか、
覚えていろ!
そして、陸軍省は「裏をかいた」ことに激怒して、迫水書記官長にわざわざ「電話で警告」したのでした。
上の三つのリンクの話の流れをもとに、迫水書記官長が言った「極めて異例のこととは存じますが」という言葉を、物語の流れに沿って、簡潔に、分かりやすく言い換えてください。
今回は「説明」ではなく「言い換える」問題です。
「自分なりに解釈する」学びと本質的学力:「強調する言葉」の効果


前回説明しましたが、日本語は曖昧な表現を用いることが多く、英語などよりも「直球を避ける」傾向が強いです。
「言いたいことをダイレクトに言わない」ことが多い日本語。
この点は、「イエスかノーで始まることが多い」英語を使用する米国人や英国人から考えると、



?????
そもそも、イエスなのか、ノーなのか???



何を言っているのか
よく分からない・・・
「二元論的思考」では、「そもそも何を言っているのか分からない」ことが多いようです。



極めて異例のこととは
存じますが、今度の御前会議は、
日本語は曖昧な点が多く、「極めて異例のこと」とは文字通り「極めて+異例のこと」ではなく、「本来(元々は)存在しないこと」を指します。
つまり、「昭和天皇が御前会議召集」は「極めて異例=存在しないこと」であり、本来「選択肢にはなかったこと」だったのでした。
過去に例がなく、通常では考えられないほど例外的な事態や対応
AIに尋ねてみると、「極めて異例のこと」は上のような意味で、正しいです。
ここで、問題文の「物語の流れに沿って考えてみる」を考えてみましょう。
その前に、日本語の「極めて」という言葉を改めて考えてみましょう。
程度がこの上なくはなはだしい様子や、非常に、とてもという意味を表す副詞
似た言葉:非常に、とても、たいへん、至って
日常言葉では、「極めて」という言葉は、あまり使いません。



〜ちゃん、これは
とても大事よ!
似た言葉の中の「とても」又は「とっても」は、比較的使用しますが、「非常に」「たいへん」「至って」は、いずれも、日常言葉では使用することは少ないです。
A.とても異例のことですが、(0点)
B.普通では考えられないほど異例のことですが、(1点)
C.通常ならば考えられないことであり、本来の手続きから外れることですが、(2点)
D.通常ならばあり得ない選択肢であり、本来の手続きから完全に外れる手続きとなりますが、(3点、模範解答例)
A.「とても異例のことですが」は、「極めて」を「とても」に言い換えているだけなので0点です。
このように「言い換える」ことを求める問題では、「ちょっと言葉を変える」では、「答えになっていない」ことになるので、「自分の言葉で説明」するようにしましょう。
B.「普通では考えられないほど異例のことですが」は、「極めて」を「普通では考えられないほど」と言い換えている点が良いですが、「異例のこと」をもう少し説明したいです。
C. 「通常ならば考えられないことであり、本来の手続きから外れることですが、」は、ほぼ良く、物語の流れを読んで、「本来の手続き=昭和天皇に御前会議開催を奏上」を書いている点が良いです。
このように、「極めて異例」という言葉を「具体的に説明」している点が良いです。
ただ、Cは、この物語の流れからして、「手続きから外れる」ではなく、「本来あり得ない選択肢」である点をもう少し強調したいので、1点減点としました。
D.「通常ならばあり得ない選択肢であり、本来の手続きから完全に外れる手続きとなりますが、」は、Cと類似していますが、「考えられないこと」よりも「あり得ない選択肢」という表現が良いです。
さらに、「本来の手続きから外れる」を「本来の手続きから完全に外れる」と「完全に」と協調する言葉を入れている点が良いです。
このように、何かのことを表現する時には、「強調する言葉」を入れると効果的である場合があります。
E.通常ならばあり得ない選択肢であり、本来の手続きから完全に外れる手続きであり、申し上げるのも失礼かもしれませんが、
F.この選択肢を実行することは、とても問題があると考え、従前の手続きには完全にない手続きでありますが、
模範解答例には、他にも様々考えられ、上記のような言い換えも良いでしょう。
Eは少し長いですが、「申し上げるのも失礼かもしれませんが、」の言葉には、「とても異例である」ことを強調する意味が込められており、良いと考えます。
このように、「言い換える」問題は受験では多くはありませんが、「言い換える」発想は、とても大事です。
日本語らしい「婉曲な言い方、書き方」を自分なりに解釈する姿勢をすると、良い学びになります。
そして、そういう「自分なりに解釈」する姿勢は、全科目において本質的な学力を育てると考えます。




