吉積軍務局長に「大嘘」伝えた阿南陸相〜「降伏」と揺れる帝国政府・侃侃諤諤閣議に「釘刺した」迫水書記官長・理由は不要+結論のみ〜|ポツダム宣言から敗戦の真相45

前回は「鈴木貫太郎の「総まとめ」に突き進む決意〜命懸けの東條英機面会要請即却下・大日本帝国への回答を「独断遂行」した米国・他の三カ国へは通告のみ〜」の話でした。

目次

侃侃諤諤閣議に「釘刺した」迫水書記官長:理由は不要+結論のみ

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左上から時計回りに、鈴木貫太郎首相、東郷茂徳外相、梅津美治郎参謀総長、米内光政海相(国立国会図書館、Wikipedia)

1945年8月13日、鈴木総理は、いよいよ閣議で「終戦=敗戦」を最終決定しようとしていました。

鈴木貫太郎

まず、東郷外相から連合国側の正式回答について
話をしてもらいます。

鈴木貫太郎

それから、今日の午前中に開きました
最高戦争指導会議の模様も、

鈴木貫太郎

報告してもらいますので、
みんな、よく聞いて下さい。

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「大日本帝国最後の四か月」(迫水久常著、新教育紀行)

この時、内閣書記官長(内閣官房長官)であった迫水久常は、この時の状況を克明に記録しています。

大日本帝国最後の四か月

東郷外相が報告を始めると、
総理は両の手を膝の上において、

大日本帝国最後の四か月

静かに目を
つぶっていた。

名前生年役職
鈴木貫太郎1868年内閣総理大臣
米内光政1880年海軍大臣
梅津美治郎1882年参謀総長(大本営)
東郷茂徳1882年外務大臣
豊田副武1885年軍令部総長(大本営)
阿南惟幾1887年陸軍大臣
昭和天皇1901年天皇
迫水久常1902年内閣書記官長
昭和天皇と政府・大本営大幹部(1945年8月10日)

最年長であり、当時、77歳であった鈴木貫太郎首相。

自らの生命エネルギーを使い果たしてでも、敗戦=終戦に持ち込もうと必死でした。

鈴木貫太郎

・・・・・

大日本帝国最後の四か月

おそらく、この四か月の
めまぐるしかった内外の情勢を思い出し、

大日本帝国最後の四か月

一つ一つの出来事を
回想していたに違いない。

大日本帝国最後の四か月

東郷外相の話が終わると、
鈴木総理は一段と声を張り上げた。

鈴木貫太郎

いよいよ、最後の決定をしなければ
ならない段階に到達しました。

鈴木貫太郎

今日は、皆様方、全閣僚から忌憚のない
意見を承りたいと思っています。

大日本帝国最後の四か月

言葉には
厳然とした響きがあった。

大日本帝国最後の四か月

この閣議が開かれる直前、わたしは
総理大臣室に鈴木総理を訪ね、次のような提案をした。

迫水久常

今日の閣議は、あまり長い時間をかけない方が
良いと思われますので、

迫水久常

最初に総理から、「各大臣の発言は理由を省略して
結論だけを簡潔に述べてもらいたい」と、

迫水久常

言われたら
いかがでしょう。

鈴木貫太郎

うむ・・・
そうしよう・・・

大日本帝国最後の四か月

閣議が始まると、総理はそのことを
忘れていたのか、なんの発言もない。

大日本帝国最後の四か月

私は、松坂法相の意見が述べられる前に
立ちあがって、次のように発言した。

迫水久常

皆様方のご意見を承る前に、
総理のご希望を私が代わって申し上げます。

迫水久常

この後、行事がたくさん詰まっていますので、
ご意見の発表については、

迫水久常

理由を差し控えて頂きまして、
ただ結論だけを簡潔にお願いします。

「とにかく結論を」と、決定を急いだのが、当時の帝国政府の閣議でした。

本来ならば、どんな状況でも「結論優先」は当然でしたが、侃侃諤諤が常だった当時の閣議。

迫水書記官長は、その状況に強く「釘を刺した」のでした。

吉積軍務局長に「大嘘」伝えた阿南陸相:「降伏」と揺れる帝国政府

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広島上空写真:原爆投下直後(アメリカ国立公文書記録管理局 National Archives and Records Administration)

全国の都市・街が空爆され、二発の原子爆弾を投下された当時の大日本帝国。

大日本帝国最後の四か月

各大臣は、いろいろの
意見を述べた。

大日本帝国最後の四か月

大部分の
閣僚は、

太田耕造

先方の回答を
承認すべきだ。

大日本帝国最後の四か月

と、はっきりいう人が多かった中で、
阿南陸相の再照会論を支持する人も何人かいた。

閣僚A

鈴木総理に
一任しようではないか。

大日本帝国最後の四か月

という人もいたし、何か言葉を
濁して結論を言わない人もいた。

大日本帝国最後の四か月

結論を言わない大臣に対して、
総理はめずらしく、

鈴木貫太郎

あなたの結論は、
どうなんですか。

大日本帝国最後の四か月

と、
問い返した。

「国家の危急」を超え、超非常事態にも関わらず、モヤモヤした大臣が多かったようです。

「まずは結論を」と要請されながら、曖昧な人物に対し、

迫水久常

「結論だけを簡潔に」
と言ったのに・・・

迫水書記官長も、相当苛立ったことでしょう。

大日本帝国最後の四か月

閣議のリーダーは、もちろん、鈴木総理だが、
この日の主役は、東郷外相と言っても良かった。

大日本帝国最後の四か月

東郷外相は、
何度も発言した。

東郷茂徳

これ以上戦争を続けても成算がないので、
十日のご聖断になったわけですから、

東郷茂徳

いまさら再照会して、話のいとぐちを切ってしまっては、
天皇陛下のお気持ちに反することになります。

東郷茂徳

私は、今日の午前中、皇居へ行き、
陛下にお目にかかってきました。

東郷茂徳

陛下からは、規定の方針に従って終戦の手続きを
するように、と重ねてお言葉を賜りました。

大日本帝国最後の四か月

閣議が始まって間もなく、
私は阿南陸相から呼ばれた。

阿南惟幾

迫水書記官長、
ちょっとお願いします。

大日本帝国最後の四か月

陸相は、私を連れて隣の部屋に入り、
すぐ、陸軍省の軍務局長室へ電話した。

阿南惟幾

今から、陸軍省の軍務局長室へ
電話します。

迫水久常

はい。

迫水久常

どういうこと
だろう?

大日本帝国最後の四か月

そして、次のようなことを
言った。

阿南惟幾

ああ、吉積局長か、
阿南だ。

阿南惟幾

今さっき、閣議が始まったが、閣僚達は、
だんだん君たちの意見を了解する方向に向かいつつある。

迫水久常

!!!!!!

阿南惟幾

だから、君たちは、私がそちらに帰るまで
動かないで、じっと待っていてもらいたい。

阿南惟幾

ここに今、内閣書記官長がいるので、
もし、会議の模様を直接聞きたいともうなら、

阿南惟幾

電話を
代わっても良い。

迫水久常

!!!!!!!!!

なんの事前打ち合わせもなく、吉積軍務局長に「大嘘」を伝える阿南陸相。

さらに、ひょっとしたら、「軍部ど真ん中」吉積局長と「サシで話す」展開に、

迫水久常

電話を代わったら、
なんと答える?

迫水書記官長は、大いに驚きました。

玉音放送まで、あと二日。

様々な人物が様々な思いを抱いて、大日本帝国は戦争継続、又は終戦に向かっていました。

次回は上記リンクです。

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