逮捕され牢獄へ向かった後藤新平〜相馬事件・大日本帝国憲法発布前夜の大混乱・陸奥宗光の政治判断と法廷闘争・超強力な「ザ・弁護士」星亨登場〜|後藤新平19・人物像・エピソード

前回は「内務省官僚へ転身した後藤新平青年〜恩人の安場保和の娘との結婚とドイツ留学・北里柴三郎との出会い・内務省衛生局長へ〜」の話でした。

後藤 新平(Wikipedia)
目次

相馬事件:大日本帝国憲法発布前夜の大混乱

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大日本帝国憲法公布(Wikipedia)

明治維新となって新しい世の中が始まって、20年経過した1887年になりました。

この翌々年の1889年には大日本帝国憲法が公布され、1890年に施行されました。

いわば、日本が新たな国家に生まれ変わる過渡期の時期でした。

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初代内閣総理大臣 伊藤博文(Wikipedia)

1887年の総理大臣は、1885年に初代内閣総理大臣として就任した伊藤博文でした。

当時、日本の政界で随一の政治力を有していた伊藤博文。

長州閥のドンとして、薩長政治の舵取りを行っていました。

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岩倉使節団(Wikipedia)

この16年前の1871年に「岩倉使節団」の副使として米国や欧州へ向かった伊藤。

西郷・大久保・木戸の維新の三傑と岩倉もすでに死去し、「次世代の明治新政府」でした。

私が大日本帝国を
支えるのだ!

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明治維新の立役者たち:左上から時計回りに木戸孝允、岩倉具視、大久保利通、西郷隆盛(国立国会図書館)

西郷・大久保・木戸・岩倉たちが思い描いていた「新国家」の理想像がありました。

その「理想像」と同じ・異なる方向性のいずれがあるにしても、「新たな国家」として歩み始めていた日本。

その、「生まれたばかりの新国家・日本」において、大きな事件が起きます。

旧相馬中村藩主であった相馬誠胤周辺で起きた事件で、一昔前ならば「御家騒動」と言われる状況でした。

混乱の中、相馬誠胤は精神病患者と診断され、誠胤を保護する元臣下の錦織剛清。

錦織は、紹介状を持って後藤に会いにゆきます。

後藤さん、
助けてください。

うん?
なんだ?

内務省勤務の後藤は、紹介状のこともあり、錦織に会います。

相馬家か・・・
一緒に奥羽で戦ったなあ・・・

これは、相馬家の相馬中村藩が、自分の出身の仙台藩と共に奥羽列藩同盟に加わったことも大きな理由でした。

我らが殿が
精神病とされてしまい・・・

なにっ?
精神病だと?

そんなに簡単に精神病と
診断しては、可哀想だろう・・・

と考え、相馬誠胤に実際に会います。

相馬誠胤です・・・
よろしく・・・

ふむう・・・
うん・・・

このくらいで、
精神病とは言えんだろう。

医師として自己の能力に矜持を持つ、後藤。

これは
陰謀です!

後藤は擁護したものの、精神病院に強引に入れられた相馬誠胤。

旧大名であり「華族」であった別格の相馬家だけに、大きな問題となりました。

その後、相馬は錦織と共に精神病院を脱出して、後藤のところに逃げ込みます。

後藤さん、
匿ってください!

よしっ!
良いだろう!

男気の強い後藤は匿いますが、これは犯罪とも見られかねない事態でした。

何が
悪い?

堂々とした姿勢の後藤に対して、人権問題の大スキャンダルとして政府も対応を迫られます。

これは、どう扱ったら
良いのだ?

折しも欧米との不平等条約改正のために、こういうことが公になると、

Japanは
法治国家ではない。

と欧米に誤解されかねません。

日本政府としては、人権問題・法治国家・旧体制からの脱却など多くの問題を抱えた重要問題でした。

陸奥宗光の政治判断と法廷闘争

後の外務大臣 陸奥宗光(Wikipedia)

ここで、後に外務大臣となる陸奥宗光が、外務省内で、相馬事件を取り仕切りました。

後藤を
逮捕しますか?

後藤の性格だと、
逮捕すると、何を言い出すかわからん・・・

しかも、現職の内務省の高級官僚である
後藤の逮捕はマズイ・・・

しばらくは、放っておき、
事態の沈静化を待とう・・・

政治的判断で、「あわや逮捕」を免れた後藤。

そのまま、後藤はドイツへ留学しました。

これ以降、この相馬事件に触れなければ、後藤は無事でした。

後藤がドイツ留学中に、相馬誠胤は死去します。

誠胤様!
おのれ・・・

この事態に大いに疑問を持った、元臣下の錦織は、

誠胤様は
毒殺されたのだ!

と大騒ぎします。

そして、帰国して内務省厚生局長となった後藤に泣きつきます。

誠胤公は、
殺されたんです。

まあ、
泣くな・・・

こんなことが、新しい明治の世で
許されて良いのでしょうか!

確かに
そうだ!

なんとか
なりませんか?

ところが、既に半年前に死去した相馬誠胤を見聞しても、「毒殺の証拠」は出てきません。

気持ちはわかるが、
証拠がないだろう・・・

私は絶対に
許せないのです!

そして、ついに錦織は、相馬家を訴えます。

相馬家が、誠胤公を
毒殺したんです。

華族となっていた相馬家は、政府に顔が効きます。

訴えられ、反撃を考えた相馬家。

元大名で華族という「別格の家柄」の相馬家は、

何と言っても
私たちは元々は大名・・・

そして、今は大名ではないが
華族なのだ・・・

つまり、私たちは
政府に顔が効くのだ・・・

誰か有力者に
頼ろう・・・

こう考えた相馬家。

逮捕され牢獄へ向かった後藤新平:超強力な「ザ・弁護士」星亨登場

弁護士 星亨(Wikipedia)

相馬家は、当時の衆議院議長の星亨に白羽の矢を立てました。

言われのないことで
訴えられました・・・

そして、星亨に弁護を依頼します。

どうか、どうか
助けてください・・・

まあ、
私に任せなさい・・・

大英帝国に留学し、日本の弁護士第一号でもある星亨。

そして、後に暗殺されるに至る星亨は、政界の超大物でした。

そして、星は当時の日本の「ザ・弁護士」という存在です。

当時の弁護士で、星以上の人物はいなかったのでした。

私が弁護すれば、
絶対勝てますよ・・・

結局、再度、相馬誠胤の検分を行いますが、証拠となる毒は出てきません。

そもそも、「毒殺されたのかどうか」も不透明です。

さらに星のような「かなりの大物」も登場し、一大スキャンダルとなります。

錦織の言っていることは、
証拠がなく、全くのでっち上げです!

日本でまだ弁護士が少ない中、「ザ・弁護士」であり衆議院議長という政府の重要人物の星亨。

その圧倒的力の前に、「証拠がない」錦織は一気に劣勢となります。

後藤さん、
負けそうです!

気持ちは
わかるが・・・

なんとかして
やりたいが・・・

困る後藤。

もう少し、お金があれば、
反撃できるのですが・・・

そうか・・・
ふむう・・・

普通の人間なら、ここで手を引く事態です。

ところが、男気が強すぎ、義侠心の固まりの後藤。

これは、これは
あんまりだな・・・

後藤は、この泥沼に自ら乗り込む決意をします。

よしっ!私が連帯保証人に
なってやろう!

「親戚であっても連帯保証人になっては絶対ダメ」と言われます。

なぜなら、借金を当事者が返済できない場合、大変なことになります。

その場合、連帯保証人が「代わりに責任を持つ」法的義務が発生するからです。

それなのに、親戚でもない錦織の連帯保証人となった後藤。

しかも、その保証人となった金額は、現在の数千万円〜一億円程度と言われます。

有難う
ございます!

よし!
頑張れよ!

これで、世の中が
良くなればよし!

こう考えた後藤でしたが、そうは問屋が卸してくれませんでした。

後藤、
逮捕だ!

はっ?!
俺が?!

なんで?!
なぜだ?!

なんと、借金の連帯保証人となった後藤は「犯罪に関わった」という理由で、逮捕されてしまいました。

現在の厚生省事務次官に相当する重役にまで上り詰め、かなり順風満帆だった後藤の人生。

俺が、
牢獄だと?!

逮捕され、牢獄へと行かされることになります。

若い頃の「賊」呼ばわりから、一気に輝きを放き続けていた後藤新平。

その後藤の人生が、一気に暗転しました。

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