前回は「明確な背景の理解求めた戦前の中学入試社会〜戦前における天皇・三連続の「理科の根幹」を問う記述・「知っているだけ答える」出題〜」の話でした。
大学生も難しい「アルカリ性とは何?」:歴史は人々が紡ぎ出す物語


1934年度(昭和9年度)の中学入試問題の算数は簡単で、国語は奥深い問題でした。

続いて、理科では、「理科の根幹を問う」問題が続きました。
どれも本質的であり、試験として最も良い問題と考えます。
出題者アルカリ性とは
どんな性質ですか?
この問題に対して、適切に回答出来る中学受験生は少ないです。



アルカリ性って何、
と言われても・・・
多くの高校生も、回答に詰まる問題と考えます。



アルカリ性とは、
水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水とかの性質!
現代の理系大学生の中には、このように具体例を挙げて答える人も多数いそうです。
この回答は間違いではありませんが、「回答になっていない」ので0点となります。
理系科目として異常に易しい算数に対して、ある意味で、異常に難しい理科でした。
・酸性=危険な赤、アルカリ性=優しい青
・リトマス紙:酸性は、ずっと赤+アルカリ性は、ずっと青
中学受験必須の酸性・アルカリ性・中性は、頻出水溶液は即答できる必要があります。
Water_N115m_ts・酸性=危険な赤、アルカリ性=優しいピンク(女性のイメージ)
・フェノールフタレイン:アルカリ性のみ反応するから、酸性と中性は無色
リトマス紙、フェノールフタレインの反応は「丸暗記」でも良いですが、パッと言えるようにしましょう。
ここで、「単なる丸暗記」も良いですが、自分なりのイメージで、グループにすると良いです。


歴史の出題は標準的ですが、一部難易度が高いです。
上の出題のように「関係あるもの(人物、出来事)を選ぶ」のは、歴史の問題として良いです。
歴史とは、「人々が紡ぎ出す物語」だからです。
記述力が求められた難問の戦前の中学入試社会:宗教の影響


続いて、社会の問題を見てみましょう。
上の問題は、



助川から函館に
行くルートで間違いを正して下さい。
日立の地元である助川から、函館に向かうルートが細かく記載されています。
岩沼、仙台、宗谷海峡などの地名、常磐線などの線路の名前が続きます。
こういう問題は、現代の中学入試問題では、なかなか見かけないです。
この出題は、筆者はとても面白いと考えます。
まずは、地元の深い理解が必須であり、さらに、日本列島の総合的理解が必要である良問です。
ここで、現在では使用しない旧字体で記載されていますが、読めるかどうかトライしてみましょう。
旧字体はかなり複雑であり、これらの漢字を日常的に使用していた戦前の日本人は、高い素養を持っていました。
続く問題も、なかなか興味深いです。



仏教は、
いつ頃伝わりましたか?



仏教は、
どこから伝わりましたか?
仏教は「いつ頃、どこから伝わったか?」という、基礎的でありながら、重要な問題です。
ここで「いつ頃?」としているのは、明確な年が諸説あるからです。
「どこから?」というのは、「日本に直接伝えた国」と「発祥の地」の両方が回答になり得ると考えます。
この点では、やや曖昧ですが、良い問題です。


日本の国教は、神道であり、それに次ぐのが仏教です。
仏教が、日本の歴史に与えた歴史は極めて大きく、神社と寺では寺の方が強い存在です。
延暦寺を訪問した話を、上記リンクでご紹介しています。



キリスト教は、
いつ頃伝わりましたか?



キリスト教は、
どこから伝わりましたか?



キリスト教は、
どんな影響を及ぼしましたか?
続いて、キリスト教に対しても同様に尋ねますが、「どんな影響」を尋ねている点に注目です。
仏教では尋ねていないのに、キリスト教では尋ねている「どんな影響」。
この点に関しては、筆者は「仏教でも尋ねた方が良い」と考えます。
その一方で、世界的に見ると、明らかにキリスト教の方が影響力が強いです。
そして、日本におけるキリスト教に関しては、実に様々な視点があります。


「キリスト教」と聞いて、受験生が真っ先に思いつくのは、島原の乱でしょう。



キリスト教は、
どんな影響を及ぼしましたか?
この問題に対する答えは多数の視点があり、様々な回答が考えられます。
この出題のように、「視点によって、多様な回答が考えうる」出題はとても良いと考えます。
仏教、キリスト教に関して「いつ頃?どこから?」は、やや難易度が高い問題です。
そして、「キリスト教の影響」を適切に答えるのは、中学受験では、かなり難しい問題です。
宗教の影響は、過去から現在、そして未来に向けて、世界中で根幹的に重要な話です。
戦前の中学受験の社会は、かなりハイレベルで、記述力が求められる出題でした。


