前回は「吉宗の「享保の改革」で大事なこと〜洋学と洋書の解禁+蘭学の大奨励・「学問好き」だった将軍吉宗・「将軍の可能性」と幼い頃からの勉強〜」の話でした。
立ち位置で変化する「悪党」:「正統派」徳川幕府と「反体制」薩長

今回は、歴史における「悪党」を考えてみましょう。
西郷隆盛徳川は、この世の悪だから
ぶっ潰すごわす!



薩長こそ
悪党なのだ!



徳川幕府は、
悪党だから消えるのみ!



違う!
徳川は何も悪くない!
幕末を迎える頃、薩長から見れば「徳川幕府及びその一党は全て悪党」でした。
そして、その反対に、徳川幕府から見れば、「薩長及びその一党は全て悪党」でした。
このように、どこの国でも、いつの時代でも、時代の変革期は立ち位置によって全て見方が変わります。


そもそも、1864年に御所に攻め込んだのが長州藩の軍隊でした。
御所は現在の皇居にあたり、「皇居攻撃」は、日本人として「やってはならない行為」でした。





もはや、薩摩と
会津と戦うしかないわ!



天皇に、我らの意思を
ご理解いただくのみ!
そして、御所及び禁門を防衛し抜いた徳川・会津・薩摩が「正統派」でした。
禁門の変に関する話を、上記リンクでご紹介しています。
そして、時は移ろい、突然「反幕府」へと、幕府から見れば「反旗を翻した」のが薩摩でした。



よかよか・・・
徳川を、思い切り挑発してやるごわす・・・



皆のもの!
江戸を撹乱せよ!



西郷先生の命令で、
江戸を撹乱するのだ!



江戸で強盗など、犯罪を引き起こして、
徳川を徹底的に挑発するのだ!
そして、西郷率いる一派は、江戸の民衆に対して、暴行を働いたのでした。
これらは「犯罪行為」以外の何者でもありませんでした。



おいっ、お前たち!
絶対に許さんぞ!



お、おのれ・・・
薩摩が後ろにいるのか・・・



こうなったら、
薩摩藩邸を焼き尽くしてくれるわ!
そして、「正統派」徳川幕府は、軍隊・警察として、薩摩藩邸を焼き討ちして、犯人を捕獲しました。
歴史の教科書では、



こうして、「挑発に乗った」徳川幕府は
薩摩と全面戦争に至りました・・・
このように「挑発に乗った・徳川」と説明されることが多いです。
ところが、これは「挑発に乗らざるを得ない」のが徳川の立場でした。
暴徒たちを放っておいては、「政府」は成り立ちません。
この点では、「完全な悪党」であったのが、当時の西郷隆盛及び薩摩一党でした。
このように、「悪党」とは、必ず「悪(あく)」または「悪い(わるい)」人物たちに使用します。
ここで、下記の問題を考えてみましょう。
室町時代末期に、正義の味方であった楠木正成たちは「悪党」と呼ばれました。
この「悪党」の「悪」の字の当時の意味を、簡潔に説明下さい。
室町末期の「悪党」の「悪」の字の意味は?:皇居の巨大な楠木正成像


現代、稀代の英雄として、皇居の一角に騎馬に座乗して周囲を睥睨している楠木正成。



この楠木正成は、
建武の新政のために尽くしたのだ!



後醍醐天皇にお仕えして、
最後の最後まで戦い抜いたのだ!
生年は1294年(諸説あり)で、出自はそれほど定かではない楠木正成。
楠木正成は、日本人ならば誰でも知っている「天皇を護衛する天才的武将」です。
上の写真の通り、皇居にかなり巨大な像が立っている楠木正成。
歴代の日本人達は楠木正成に対して「天才的」ではなく、「天才」または「大天才」と考えてきました。
その楠木正成は、当然、「敵対する」室町幕府側から見れば、



おのれっ!
楠木の一党めがっ!



楠木正成達は、
大悪党だ!
楠木正成達は、「悪党」を超えて、「大悪党」でした。
室町幕府側から見た「悪党」は、現代の「悪党」と同じ意味でもありました。
ところが、楠木正成たちは、



楠木正成さんたち、って、
悪である幕府と戦ってすごい!



楠木正成率いる「悪党」たちは、
とても頼りになるね!
楠木正成たちを是認する立場の人々からも、「悪党」と呼ばれました。
つまり、「味方から悪党」と呼ばれたのが、楠木正成たちでした。
実は、「悪党」の「悪」の字は、当時は「悪い意味だけ」ではなかったのでした。
A.必ずしも悪いことではなく、肯定的な意味。(1点)
B.幕府に対して戦った、武士の強さの意味。(2点)
C.弱体化した幕府に対して戦った、武士たちの強さを示す意味。(3点)
模範解答例:権力が弱体化した室町幕府に対して戦い続けた、武士たちの強さ、猛々しさを示す意味。
Aは、「悪ではない」という点が語られていますが、端的なので1点。
Bは、「強さ」という点が良く、小学生ならば満点でも良いでしょう。
Cは、当時の政治状況を記載し、明確に「強さを示す」と書いているのが良いです。
模範解答例は少し細かく、高校生以上を対象としています。
小学生から中学生は、Cの理解で十分でしょう。
当時の「悪党の悪」には、「強く、猛々しい」という意味があったと思われます。
模範解答例では、「権力が弱体化」と室町幕府の「悪の存在」を表現しています。
強力だからこそ権力は存在意義があり、弱体化した権力は悪になる傾向があります。
この点は記載せずに、「幕府に対して戦い続けた、武士たちの強さ、猛々しさを示す。」も良いです。
このように、時代によって言葉のニュアンスが異なる可能性があることを知っておきましょう。


