江戸城開城直後に「急速作成+公表」の五箇条の御誓文〜理想を強力推進した木戸孝允・由利原案に込めた「因習破壊」の思い〜|近代国家日本の骨格2

前回は「明治維新と新国家の国是「五箇条の御誓文」〜御誓文の基礎作った由利公正・「時代の変化」を言葉で・「見切り発車」で発表した木戸たち〜」の話でした。

目次

江戸城開城直後に「急速作成+公表」の五箇条の御誓文

新教育紀行
鳥羽・伏見の戦い(Wikipedia)

1868年1月に徳川軍(幕軍)と薩長軍が衝突した鳥羽・伏見の戦い。

新教育紀行
明治維新の立役者たち:左上から時計回りに木戸孝允、岩倉具視、大久保利通、西郷隆盛(国立国会図書館)
西郷隆盛

幕軍を
叩き潰すのだ!

この時、薩長軍の事実上の総司令官であった西郷隆盛は、果敢に挑みました。

「薩長軍5,000 vs 幕軍15,000」と言われ、圧倒的に不利であった薩長軍でしたが、

西郷隆盛

なんとか、
幕軍を潰した!

絶大な影響力を持った「錦の御旗の力」もあり、大勝利した薩長軍。

錦の御旗に関する話を、上記リンクでご紹介しています。

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西郷隆盛と勝海舟の談判:江戸城開城(Wikipedia)

その後は、「トントン拍子」に討幕軍・薩長軍が徳川に勝利し続けました。

そして、1868年3月から4月には江戸城(無血)開城に至ります。

歴史の教科書では、「あっという間に」「トントン拍子」に明治維新が成立します。

ところが、時代の変革や革命が、「あっという間に」「トントン拍子」に進むはずがありません。

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幕末に近代化を推進した徳川幕府幹部:左上から時計回りに、徳川慶喜、勝海舟、榎本武揚、松平容保(Wikipedia)
徳川慶喜

もう良い・・・
徳川の時代は終わりだ・・・

徳川幕府トップの将軍・慶喜は、新政府に降伏しましたが、

榎本武揚

まだ徳川は
負けてはいない!

榎本武揚

まだまだ我が徳川の力は、
残っているのだ!

オランダなどに留学した榎本武揚は、当時最先端の科学の知識を持っており、大変優秀な人物でした。

榎本武揚

大体、海外に対しては、
我が徳川が「大君」なのだ!

榎本武揚

薩長が何を言おうと、
我が徳川が「日本の王」なのだ!

当時、日本において勝海舟と並び、「海軍の筆頭格」であった榎本は、

榎本武揚

私が幕府の艦隊を率いて、
蝦夷に国家を建てる!

「榎本艦隊」を率いて蝦夷(北海道)へ向かい、本当に「新国家」を樹立しようとした榎本。

会津でも蝦夷でも戦争が続いていた当時は、「不穏極まりない」状況でした。

この意味で、「明治元年=1868年」は「新たな時代の元年」ではなく、混迷極めた年でした。

木戸孝允

徳川の時代が終わり、
新たな時代になったことを知らしめる!

木戸たちは「新たな時代」への変化の象徴を作ろうとしました。

そして、江戸城開城直後の1868年4月に「急速作成+公表」したのが、五箇条の御誓文でした。

理想を強力推進した木戸孝允:由利原案に込めた「因習破壊」の思い

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五箇条の御誓文(Wikipedia)

五箇条の御誓文は、短い文章ですが、練りに練って作成された、「渾身の文章」でした。

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福井藩参与 由利公正(三岡八郎)(カメラが撮らえた勤王派と佐幕派 幕末の志士 歴史読本編集部)
由利公正

私が、知恵を尽くして、
分かりやすく作成しましょう!

五箇条の御誓文の原案を作成したのは、由利公正(三岡八郎)でした。

木戸孝允

会津で戦争が続き、
函館でも榎本たちが立ち上がりそうだ・・・

木戸孝允

我が長州軍こそが
新政府軍の中核とならねば・・・

長州閥総帥であった木戸は、相次ぐ戦争に対するために、多忙を極める状況でした。

福井藩士・由利公正が作成し、土佐藩士・福岡孝弟が手を入れた「御誓文の原案」。

それを目にした木戸は、

木戸孝允

まあ、大体良いのだが、
もう少し変えたい・・・

木戸孝允

この私が直接手を入れて、
最終案としよう・・・

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左上から時計回りに久坂玄瑞、木戸孝允、前原一誠、高杉晋作(国立国会図書館)

最前線で戦い続けた久坂玄瑞や高杉晋作とは違って、「最前線で戦う立場ではなかった」木戸。

久坂は禁門の変で自刃、高杉も事実上の戦死となり、長州藩の人材はみるみる減少してしまいました。

禁門の変に関する話を、上記リンクでご紹介しています。

そして、戦乱の中で「死と隣り合わせ」となる経験を何度もした木戸。

木戸孝允

徳川時代とは、
全然変わったことを伝えたい・・・

木戸孝允

あの時代・・・
あんな時代は、もう終わったのだ!

多くの新政府幹部の中でも、一際「時代を変えた・変革した思い」が強かった木戸。

木戸孝允

時代が変わったことを
明らかにするのだ!

木戸孝允

古い徳川時代の慣習を潰すために、
新たな語句を入れよう・・・

木戸孝允

「旧来ノ陋習ヲ破リ天地ノ公道ニ基クヘシ」
うむ、なかなか良いな・・・

こうして、「木戸肝煎り」で作成された五箇条の御誓文。

五箇条の御誓文

一、広く会議を開き、全てのことを皆で話し合って決めるべきである。

一、上司と部下は心を一つにして、精力的に仕事を進めるべきである。

一、官僚から武官、そして庶民に至るまで、それぞれが自分の願いを叶え、人々が不満を抱かないようにすることが大切である。

一、古い悪い習慣を捨て、普遍的な道理に基づいた行動をするべきである。

一、世界から知識を集め、日本の国を大きく発展させよう。我が国はかつてない大きな変革を遂げようとしている。私は国民の先頭に立ち、天地神明に誓い、この国のあり方を定め、万民が平和に暮らせる道を開こうとしている。皆も、この私の考えに基づき、心を一つにして努力してほしい。

幕末からずっと「現実路線」であった薩摩に対して、「理想路線」であった長州。

五箇条の御誓文には、木戸孝允らしい「理想像」がはっきりと描かれていました。

次回は、五箇条の御誓文の具体的意味を考えます。

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