前回は「選択肢がほとんどない「記述ばかり」の戦前中学入試〜現代と全く異質・幅広い知識を求めた戦前理科入試・「選択肢から」vs「答えを書く」〜」の話でした。
テーマがある算数の問題:円周率近似値の小数と分数の大小比較


前回まで、1934年度(昭和9年度)の日立中学校の中学入試問題を見てみました。
今回は、翌1935年度(昭和10年度)の中学入試問題の一例を見てみましょう。

今回は、大阪府立住吉中学校の1935年度の中学入試問題です。
まずは、算数を見てみましょう。
さっとみて、計算問題が続きますが、現代の中学入試問題よりも易しいです。
ただし、前回までにご紹介した日立中学校よりは、遥かに入学試験問題らしくなっています。
特に[3]は、やや面白く、
出題者分数は小数に直して、
次の五つの数を大きさの順に並べよ。



22/7,355/133,3.14,
3.1416,3.1415926
これらの小数・分数を見て、



あっ、
円周率の近似値だ!
「知らなかった」のに、このように気づいた小学生・中学受験生は、勘が良いかもしれません。
ただ、この問題の「大小」は、小数に関しては極めて易しいです。
そのため、事実上は、「2つの分数を少数に直す」問題で、易しい問題です。
優しい問題ですが、「なんらかのテーマがある」点は良いと考えます。
「昭和初期の時代」表現した戦前中学入試問題:一日あたりの利息


続いて、文章題が続きますが、やはり現代の中学入試問題より遥かに易しいです。
文字が旧字体であり、言葉も昔風なので、現代の小学生が読むと、



なんとなく意味はわかるけど、
ちょっと読みにくい・・・
小学生に限らず、中学生以上、あるいは大人でも「ちょっと読みにくい」と感じます。
少し読みにくいですが、[4]は、



ある人は、持っているお金の
2/3を使い、



その後、残ったお金の9/14を
銀行に預けたら20円残りました。



いくらを銀行に
預けましたか?
この問題もまた、中学入試の超スタンダード問題ですが、易しいです。
ちなみに、昭和10年頃の「1円」は、今よりも遥かに価値が高い時代でした。
少なくとも現代中学入試ならば、



最初持っていた
お金はいくらですか?
このような問題になるはずですが「いくら銀行に預けたか?」では、一瞬で終わり、易しすぎます。
現代中学入試では「買い物した」「A君にあげた」などが多いです。
それに対して、「銀行に預けた」は、昭和10年頃の時代を表しているようで、面白いと感じます。


文章題も後半になってゆくと、やや難易度が上がりますが、それでも現代より易しいです。



ある人は、金1200円を一日あたり
2銭5厘(0.0025円)で借りました。



そのお金で反物を仕入れて、30日後
その反物を1350円で売りました。



そして、そのお金で、借りたお金と
利息を支払いました。



この30日間に、いくらの
利益を得ましたか。



この利益の仕入れ値段に対する
割合は、いくらですか。
この問題は、「一日あたりの利息が割合ではなく、一定金額」である点が易しいです。
また、現代では、一般には設定しない「一日あたりの利息」という視点も面白いです。
「月あたりの利息」を日数で割れば「一日あたりの利息」となりますが、一般的にあまり考えません。
お金の話に寄りすぎていて、小学生に対しては、現代の視点では良くない点があるかもしれません。
現代中学入試問題でも、このような「売買と利益」の問題はありますが、やや古風で現実的です。
このように、戦前中学入試問題は、易しい一方で「昭和初期という時代」を表現した問題でした。

