前回は「記述力が求められた難問の戦前の中学入試社会〜宗教の影響・大学生も難しい「アルカリ性とは何?」・歴史は人々が紡ぎ出す物語〜」の話でした。
幅広い知識を求めた戦前理科入試:「選択肢から」vs「答えを書く」


戦前の1934年(昭和9年)の日立中学校の入試問題算数は、極めて易しい出題でした。



国語の試験は、現代の中学受験のように「長文読解」はなく、分量としては極めて少ないです。
その一方で、当時の時代・社会・環境の理解が必要で、難易度はやや高めでした。

理科は、あっさりし過ぎているくらいで、たったこれだけの出題でした。
現代の中学入試ならば、大問が数題あり、それぞれに長い文章がついていることが多い理科。
出題者アルカリ性とは
どんな性質ですか?
この質問に対して、的確に答えられる中学受験生は少ないと考えます。
この問題は大学受験で出題しても、「ほぼ満点」は、かなり少数となると考えます。
もちろん、大学のレベルにもよりますが、最難関レベルの大学でも「満点」は少数派と考えます。
ここで面白いのは、



アルカリ性のある物の名を
知っているだけ書きなさい。
「知っているだけ書きなさい」という出題です。
現代の中学入試ならば、選択肢があって、



下記から、アルカリ性の水溶液を
選び、記号で答えなさい。
このように「記号で選ぶ」出題がほとんどです。
更に、この出題では「アルカリ性のある物」という言葉がポイントです。
「物」というのは、少し抽象的ですが、「水溶液でも固体でも良い」ことになります。
この観点から考えると、答えは様々考えられます。
そして、「知っているだけ」と記載あるので、「的確な答えが多いほど点数がつく」のでしょう。
この点は、「選択肢から選ぶ」よりも幅広い知識を求めている出題と考えます。
選択肢がほとんどない「記述ばかり」の戦前中学入試:現代と全く異質




続いて、社会では、初めて「選択肢」の問題が出題されました。
「選択肢」ですが、現代の中学入試のように「ア」や「う」ではなく、「答えを書く」タイプです。
そして、後半では、



キリスト教は、
どんな影響を及ぼしましたか?
このように「キリスト教の影響」という、かなり深く、広い出題がされました。
現代の中学入試では、解答用紙に解答欄があることが、ほとんどのケースです。
更に、場合によっては「〜字以内」や「〜字以上〜字以内」などの条件がつくことが多いです。
それに対して、上の出題では文字数等は一切規定がありません。
筆者が所有する、上の問題の出典の書籍には出題のみの記載であり、解答用紙や解答はありません。
そのため、「どの程度の長さの文章を求めていたか」は不明です。
あるいは、模範解答例がないため「どの程度のレベルの解答を求められたか」も不明です。
おそらく、「キリスト教の歴史と現在に関わる文章200字程度」は求められたと考えます。、
これは筆者の推測に過ぎませんが、問題文の全体傾向からして、そのように感じます。
とにかく「記述ばかり」だった、戦前の中学入試問題。
現代の中学受験生にとっては、「ほとんど縁がない」ような形式・出題ともいえます。
その一方で、良い問題も多く、これらの問題から学ぶことは多いと考えます。
次回以降も、更に戦前の入試問題を見てゆきたいと考えます。

