前回は「今後増加する「記述式」への姿勢〜子どもを丁寧に選抜・子どもの人数急増で導入された「共通一次」・「一斉に短期間に選抜〜」の話でした。
望ましい「自ら答える」出題:選択肢問題と答えを書く問題の相違
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試験の出題方式には、大まかに分けて下記の三つがあります。
A.選択肢を選ぶ問題
B.人名や事件名など名称や単語を答える問題
C.記述で答える問題
この三つのタイプの中で、最も簡単に採点できるのがAの選択肢問題です。
Bの人名などの単語を「書いて答える」問題は、「Aに近い」ですが、全く異なると筆者は考えます。
「与えられた選択肢」に対して答える姿勢と、「自ら回答を答える」姿勢の違いは大きいです。
上の問題の例は、2025年の開成中学の社会の問題であり、
出題者一ノ谷の戦いの
場所を、現在の都道府県名で答えなさい。


源平合戦で最も有名な合戦の一つ、「一ノ谷の戦いの場所」を「現在の都道府県」で答える問題です。
この問題はハイレベルであり、小学生である中学受験生が正しく答えるのは難しいです。
ここで、開成中学の出題者は、



これは少し難しいから、
選択肢の方が良いか?
おそらく、「選択肢タイプ」か「自ら答えるタイプ」か迷ったと思われます。
ここで、「自ら答えるタイプ」とした点が、開成らしいと感じます。
「4つの選択肢から選ぶ」のは、「答えが4つにすでに限定されている」ことになります。
それに対して、「自ら答える」ことは都道府県名の場合「47の答えが考えられる」ので、全く異なります。
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この問は「一ノ谷は兵庫」と丸暗記しても良いですが、源平の勢力範囲を知っていると良いです。
・源氏:木曾(源)義仲に続き、東国から源義経らが首都・京を制圧し、続いて西国へ
・平氏:東国の支配権を失い、元々地盤であった西国から京へ反撃に向かう
上の源平の動きを考えると、「ぶつかるのは、大体現在の兵庫か大阪あたり」となります。
今後は、選択肢問題は減少してゆく傾向があると考えます。
選択肢の問題を学ぶ時は、「選んで終わり」にしないで、理解しましょう。
そして、「選択肢」ではなく「言葉や単語で答えられるように理解」すると良いです。
記述を苦手に感じない学び:「何か書いてみる」姿勢


そして、上の三つの出題の中で、「難しそう」なのが記述です。
最近の中学受験の理科や社会の出題を見ると、「記述が増加傾向」の学校が見受けられます。
この「記述増加傾向」の学校の校風は、「きちんと考える」学びを推奨していることが多いです。
中学受験において、どうしても気になるのが「大学進学実績」です。
「大学進学実績」への姿勢に対しては、それぞれの学校によって様々です。
大学入試では、最初に「共通テスト」で、ある程度の点数を獲得する必要があります。
そのため、どうしても「選択肢問題」のトレーニングが高校生では必要となります。
その一方で、



大学進学実績も
大事だが・・・



大学生以降、きちんと
「自分で考える力」を育てたい・・・
このように考えているのが明白である学校では、「長めの記述」が増加傾向にあります。



記述は、結構
難しい・・・
中高生、大学生と比較して、「文章を書く」ことに慣れていない小学生。
小学生が「記述は難しい」と感じるのは、ある意味では「当然のこと」です。
ここで、記述に対して、「苦手意識を持たないこと」が大事です。
記述の採点方法に関しては、それぞれの校風・教育方針や各教員の教育への姿勢が反映されます。
そのため、記述の採点方法に関しては、一概には言えない点がありますが、一例を挙げます。
筆者が武蔵中学の生徒であった30年ほど前、世界史のM先生がいました。



私の独自プリントを
見ながら、私の解説を聞いてください。
M先生の授業は、教科書などの書籍はなく、すべてオリジナルプリントでした。
そして、オリジナルプリントをもとに、M先生独自の世界史観で滔々と語り続ける授業でした。
時々、



ここに関して、どう考えますか?
では、T君。
このように、突然名指しで「どう考えるか?」を尋ねられるM先生の授業が筆者は好きでした。
M先生の定期テストは「全て記述」であり、中には、



下記のAからEの単語から
3つ選び、それぞれ説明して下さい。
例えば、「ペロポネソス戦争」「スパルタ」・・・などの単語があり、3つ選んで説明します。
このように「幾つかの選択肢から自ら答えやすいものを選んで、記述で答える」のは望ましいと考えます。
ここで、選択肢の中に「キエフ公国」がありました。
キエフ公国は、現在のウクライナ周辺にあった国家です。
この出題に対して答案が返ってきた後に、筆者の友人K君から、



俺さ、「キエフ公国」を
選んで・・・



「キエフの公国」って書いたら、
1点もらえた!
こんな話があったのを記憶しています。
「キエフ公国=キエフの公国」では、何も答えていないようにも感じられます。
その一方で、「キエフ公国=キエフの公国」は正しい理解でもあります。
ここで、「何も書かなかった」場合は、当然0点となります。
このように、記述に対しては「満点目指す」ではなく「少しでも答える」のが良いです。
「キエフ公国」の例は、少し極端な例ですが、何かを書いてみる姿勢で学ぶことをお勧めます。


