前回は「咲子の結婚相手の絶対条件「非薩長+特に薩摩は絶対NG」〜結婚に前向きになった山川咲子・会津の精神を「引き継ぐ者」として〜」の話でした。

困難極めた「咲子の結婚相手探し」:奔走し続けた浩

山川浩咲子の私塾や学校設立の
夢を潰してしまった・・・
米国留学経験を生かした「山川塾」または「山川学校」構想を持った咲子。
浩と咲子が話し合っている1882年頃は、各地で学校設立が推進されました。
1870年には、女子学院中高の前身の一つとなるA六番女学校が建学されました。
女子学院中高の設立に関する話を、上記リンクでご紹介しています。
この時、誰かがパトロンとなり「山川学校」が誕生していたら、実に良い学校になったと考えます。
おそらく、現代に続く超名門女子校の一つとして「山川学校」は、日本に良い影響を与えたでしょう。



私塾・学校設立を
思い留まらせた責任がある・・



なんとか、咲子の
良い結婚相手を見つけてやらねば・・・
15歳年下の可愛い妹・咲子のために、兄・浩は懸命に「咲子の結婚相手」を探しました。



だが、当然、
薩摩と長州はダメだ!



特に薩摩だけは・・・
絶対にダメだ・・・
A.もともとそれなりの名家出身で将来有望なエリート
B.留学した咲子の生き方や考え方を尊重する理解ある人物
C.薩摩と長州は絶対に不可
相手の人間性、咲子との相性が最も重要ですが、客観的条件が上の三つのA,B,Cでした。
ところが、「A,B,Cの全ての条件を満たす人物」を探すのは、かなり困難でした。
「絶対NG」の薩摩・大山巌参議陸軍卿からの「結婚の意思」





妻が亡くなってしまい、
家庭のためにも再婚したい・・・
ちょうどこの時期、再婚相手を探していたのが大山巌でした。


西郷隆盛の親戚であり、西南戦争を乗り切った優れた将軍であった大山巌。
この時、大山は参議・陸軍卿であり、「政府の中心人物」の一人でした。



あの山川咲子さん、
とっても魅力的ごわす・・・



おいどんと同じように
西洋で学んだ女性は、ほとんどいない・・・
大山巌は、山川咲子と結婚したいと考えるようになりました。



ぜひ、山川咲子さんと
結婚したいごわす!
このように思い至った大山巌参議・陸軍卿。
バリバリの軍人であった大山巌は、フランスへの留学経験があり、フランス語が堪能でした。


上の写真は、大山巌が若い頃にフランス語で書いた日記で、達筆で流暢なフランス語です。
「咲子と結婚したい」と考えた巌でしたが、当時は政府高官というよりも頂点の人物の一人でした。
そのため、直接、浩や咲子に接触するのは難しいため、「内意を受けたもの」が浩に伝えました。



浩さん・・・
咲子さんの相手となりたい方がいる・・・



大変立派な方で、
留学経験がある・・・



な、なに?!
本当か?!



その人とは誰か?
教えて欲しい!
「咲子の結婚相手に相応しい人物」であり、さらに「咲子と結婚の意思を持つ」留学経験のある人物。
このような人物は、「そうそう」と言うよりも「ほとんど」いませんでした。



うむ・・・
だがな・・・



全ての条件を
満たしてはいないが・・・
ここで、相手は「奥歯にものが挟まった」ような言い方を始めました。
この様子を見て、浩は、



A,B,Cの全ての
条件を満たすのは難しいのは分かっている・・・



とにかく、Cの「薩長NG」は必須で、
後はAかBだな・・・
こう考えていたため、相手に回答を促しました。



全ての条件を満たすのは
難しいのは分かる!



誰だ?
その人は誰なんだ?



うむ・・・
実はだな・・・
「相手の内意を受けた」人物は、なかなか人物名を挙げませんでした。
そして、思い切ったようにして、ようやく口にしました。



その方は、
大山巌参議・陸軍卿だ・・・



な、なに?!!!
大山陸軍卿だと!!!!!
ここで「大きな」ではなく「極大の」衝撃を受けた浩。



大山陸軍卿は
薩摩ではないか!!!



うむ・・・
その通りだ・・・
「AかBはやむなし、Cは絶対」と思っていた浩にとって、「絶対NGのCの薩摩」でした。
明治政府の超大物+浩「直属の最上司」





大山陸軍卿が咲子と
結婚したい、だと!!!
まさに「絶対条件であったC」に、完全に反する相手でした。
しかも、極めて難しいことに、「薩摩」であり「浩の上官」であった大山。
「上官」どころか、陸軍卿は現代の陸軍大臣・防衛大臣であり、その上、参議でした。
当時、軍人の地位が極めて高かった時代だったため、現代の防衛大臣より遥かに上の存在でした。
まさに、浩にとっては「雲の上の存在」であり「憎き薩摩」だった大山。



大山陸軍卿が
大人物であることは認める・・・
社会的名声は最高レベルでありましたが、人物云々以前に「仇敵・薩摩出身」のため、



だが、だがだ・・・
絶対に薩摩だけはダメだ・・・









おのれ・・・
薩摩め・・・
浩の頭の中で、再び、戊辰戦争・会津戦争・西南戦争の3つの戦争のドス黒い記憶が蘇ってきました。


しかも、大山巌は当時すでに薩軍の中核であり、会津にとっては「憎き薩摩ど真ん中」でした。



咲子が、薩摩の
大山陸軍卿との結婚なぞ・・・



絶対に
認められるか!!!
ところが、当時の明治政府の超大物であり、浩の「直属の最上司」である大山陸軍卿。
「絶対に断る」姿勢であっても、「簡単には断れない」のは明白でした。



絶対に断るが、
果たして・・・



果たして、
どう断ったら良いのか・・・
「最悪の事態」となってしまった、「咲子の結婚相手探し」となった浩。



おのれ・・・
薩摩、の・・・



俺は
どうしたら良いのだ・・・
血が逆流するような中、浩の苦悩は続きました。


