前回は「「戦時中昭和の空気」映す戦前算数の問題〜「銀行に預ける」「利益を得る」・「大戦争に向かっていた」時代と受験・支那事変向けの国債〜」の話でした。
「大豆の種にはどんな部分がある?」:生物の基本+根幹の問題

出題者いくらを銀行に
預けましたか?



この利益の仕入れ値段に対する
割合は、いくらですか。
現代の中学受験の算数でも、「お店での仕入れと利益の問題」は多数見受けられます。
それらの「売買利益の問題」は、いかにも「問題のための架空状況」である雰囲気です。
それに対して、1935年の中学受験算数の問題は、世情を反映して、リアルさを感じさせる問題でした。


今回は、同年の同じ大阪府立住吉中学校入学試験の理科の出題を見てみましょう。
現代の視点から見ると、「ひらがなが多い」のが目立ちますが、



大豆の種には、
どんな部分がありますか。



柿の種には、
どんな部分がありますか。



大豆の種と、柿の種とを比べると、
どこが違いますか。
このように、大豆と柿の種の構成と違いを聞く問題が第一問でした。
これは、子葉や胚乳などを答える問題ですが、現代ならば選択肢が用意されていることが多いです。
それに対して、「どんな部分がありますか」という問題は、答え方が様々考えられます。
生物の基本問題であり、きちんと理解していることが求められます。
基本問題ですが、きちんと明確に答えるためには、ある程度の学力が必要と考えます。
とても好ましい「小学生が描ける絵」の解答例:描いて理解する学び


この問題自体にも、筆者は興味を持ちましたが、より強い興味を感じたのは解答例でした。
この書籍には、解答例が記載されており、解答例は上のようなものでした。
一目見て面白いと感じたのは「絵を描いていること」です。
理科の学習において、この様に「絵を描くこと」は極めて大事な姿勢です。
そして、「絵を描いて説明できる」のは、高い学力が必要です。
大豆の種の絵には、「子葉、種子、芽、茎、根」が明瞭に記載されています。
柿の種の絵には、「胚、胚乳、種皮」が記載されています。
この出題に関しては、「どう説明するか?」は何も記載ありません。
そのため、「文章のみで説明しても良い」と考えます。
その一方で、特段の記載がなくても、戦前の一般的な中学受験界の認識では、



種の構成の説明だから、
文章のみで書いても良いが・・・



これは、絵を描いて
説明する方が良いだろう。
おそらく、このように「絵を描くのが良い」という共通認識があったと思われます。
現代の視点から考えると、「絵だけでなく、もう少し説明があると良いのでは」とも思います。
その一方で、上の絵は「どんな部分がある?」に対する回答として、簡潔で適切と考えます。
ここで、



大豆の種には、
子葉、種子、芽、茎、根があります。
このように答えても、◯かもしれません。
ところが、この答えは「どのようにあるか?」は何も答えていません。
そのため、採点者の考え方にもよりますが、



「子葉、種子、芽、茎、根がある」
だけでは、不足かな・・・
「ちょっと不足」で、減点という考え方もあります。
この点から考えれば、「絵で答える」姿勢は、極めて大事です。
絵は実に様々なことを表現でき、(ロ)では「胚、胚乳、種皮の位置関係」が明瞭です。
この問題集で、もう一つ面白いのが、「絵がプロっぽくない点」です。
この絵ならば、



これが解答例で、
こう書けば、良いんだ・・・



この絵ならば、
僕でも描けそうだから、描いてみよう・・・
このように「描いてみよう」と考える小学生も多いと考えます。
ここで、絵が「小学生の視点」で描かれている点が、とても興味深いです。
現代の参考書・問題集では、非常に精巧な絵ばかりが並びます。
それらの絵は、とても「小学生が描ける絵」ではなく、大人でも描くのは極めて困難な絵です。
上の絵の例は、現代では見受けられるのが少ないと考えます。
筆者は、このように「対象学年が描ける絵」は、理科の教科書・参考書として大変好ましいと考えます。
理科の学びの際には、「描いてみる」とイメージが膨らみ、よく理解出来ます。
理科に限らず、算数、国語、社会、どの教科もどんどん描いてみましょう。
「描いた絵」が「上手か下手か」は一切気にせずに、描いてみると良いでしょう。
次回は上記リンクです。


