前回は「「気持ち晴朗なれども合格近し」の精神〜大戦略家+名文家秋山真之・「圧倒的であったロシア」との大戦争・「第0次世界大戦」の大衝撃〜」の話でした。
「本日天候晴朗なれども波高し」の真意:「天候」と「天気」の違い

1905年、大日本帝国という名称だった日本の海軍が、ロシア海軍に大勝利した日本海海戦。
この大勝利は、「奇跡的大勝利」であり、日本海軍の圧勝に終わりました。
世界中が瞠目したのが、この日本海海戦でした。
USJapanのこの大勝利っぷりは、
どうやって・・・



我がUK(大英帝国)が
徹底的にJapanを支援したが・・・



ここまで徹底的圧勝は、
想像もしなかった・・・
この結果を、当時の北海タイムスが号外で伝えているのが、上の写真です。



大海戦詳報・・・
五月二十七日以来海戦に関する・・・



東郷司令長官の報告は
左の如し・・・
号外が出た5月30日は、日本海海戦が始まった5月27日のわずか3日後です。



沖の島附近に於いて
敵艦隊を要撃し・・・



大に之を破り
敵艦少なくとも四隻を撃沈・・・



我が艦隊には
損害少なし・・・
このように日本海海戦の概要を冒頭に伝え、その後、極めて詳細な戦闘状況が記されています。





二十七日、敵艦見ゆとの
警報に接し・・・



連合艦隊は直ちに出動
之を撃滅せんとす・・・
東郷平八郎 連合艦隊司令長官は、奮って出撃しました。



本日天候晴朗なれども
波高し・・・
そして、「国家の運命を賭けた出撃」において、秋山真之 先任参謀は、この言葉を加えたのでした。
一般的には、



本日天気晴朗なれども
波高し・・・
「天気晴朗なれども」で広く知られている、この言葉。



本日天候晴朗なれども
波高し・・・
内外タイムズの号外では、「天候晴朗なれども」と記載されています。
天気も天候も同じ意味を表しますが、「天候」の方が、やや丁寧で格調高いです。
どちらの表現でも良いようにも感じますが、筆者は、当時の記録への尊重の精神と、格調高さから、



本日天候晴朗なれども
波高し・・・
「天候晴朗なれども波高し」の方が良いと考え、こちらを採用します。
今回は、この「本日天候晴朗なれども波高し」の真意を考えます。
「砲撃の精度の差」が出やすい天候:難しい試験と学力の差


上の図は、バルチック艦隊が、はるばるロシア近海から、日本海に来襲してきた航路です。
大艦隊であったバルチック艦隊は、途中で二つに分かれて、その後、インド洋で合流しました。
上の図で、青の艦隊は1904年10月15日に出撃、赤の艦隊は1905年2月16日出撃です。
日本海海戦が開始した、1905年5月27日の半年以上前に、青艦隊は出撃していました。
当然ながら、この「バルチック艦隊出撃」の情報を掴んでいた、当時の帝国海軍。



陸では、我が帝国陸軍が
ロシア陸軍をやや押している・・・



だが巨大過ぎるロシア陸軍に
対して、決定的勝利ではない・・・



なんとしても、我が帝国海軍が
ここで、バルチック艦隊を潰さねば・・・
当時の日本の運命は、「東郷司令長官の肩に掛かっていた」状況でした。



とにかく、迎え撃つのだから、
砲撃の精度を上げるのだ・・・



「月月火水木金金」の精神で
猛訓練するのだ!
「月月火水木金金」の意味は、本来「日月火水木金土」ですが、「休日なしで全て平日」の意味です。
日本海海戦の直前に、連合艦隊司令長官に抜擢された東郷平八郎。
薩摩出身の東郷平八郎は、若い頃から冷静沈着であり、大英帝国に留学しました。



とにかく、我が連合艦隊の
敵艦隊へ砲撃が当たる確率を極限まで上げる!



承知しました!
お任せを!
そして、東郷率いる連合艦隊は、異常なまでの数量の砲弾を使用して、訓練に臨みました。
バルチック艦隊を迎え撃つのを、日本近海で待ち受け、ずっと猛訓練を積んだ東郷艦隊。



我が艦隊の
砲撃の精度は、世界一です!
おそらく、1905年5月時点の「砲撃の精度」は、当時の帝国海軍が世界一だったでしょう。
当時は、大英帝国海軍が世界一で、艦隊の装備などは帝国海軍を上回っていました。


そもそも、連合艦隊の旗艦・三笠は、大英帝国で製造した艦船を購入して「三笠」と名付けたのでした。
当時、技術力等では明らかに見劣りしていた日本でしたが、



よしっ!
あとは大海戦で、叩き潰すまでだな!
圧倒的に「砲撃の射撃精度」を高め、瞬間的に「世界最強」となった連合艦隊及び帝国海軍。
そして、当日は「天候晴朗」かつ「波が高い」状況でした。



天候晴朗なのは、
視界が良くて、とても良い・・・
「砲撃精度」に絶対の自信があった秋山先任参謀。
「天候晴朗」は、当然ながら、ロシア海軍にとっても「視界良好」です。
つまり、日露両海軍にとって「良い条件」でした。
「波が高い」に関する解釈は、諸説あります。
筆者は、「波が高い=適切に砲撃するのが困難」という解釈を採用します。
すると、「波が高い」は、日露両海軍にとって「悪い条件」でした。


| 天候状況 | 砲撃への影響 | 砲撃の精度 |
| 視界良好 | よく見える | 精度の違いが現れやすい |
| 波が高い | 砲撃が困難 |
つまり、「砲撃精度を究極まで上げた」連合艦隊が、「更に差をつけるのが可能」である状況でした。
例えば、試験では、難しい方が、出来る人と出来ない人の点差が現れやすいです。
| 試験の難易度 | 試験への影響 | 周囲との差 |
| 易しい | 平均点が上がる | 点差がつきにくい |
| 難しい | 平均点が下がる | 点差がつきやすい |
試験が易しいと点差が付きにくく、難しいと点差が大きくなります。
これと同様に、「連合艦隊とバルチック艦隊の砲撃力の差」が如実に現れる状況でした。
この「良い条件」と「悪い条件」によって、「連合艦隊が圧倒的有利な状況」を、



本日天候晴朗なれども
波高し・・・
秋山先任参謀は、このように詩的に表現し、自軍の圧倒的有利を「予言した」のでした。



我が連合艦隊の
勝利は間違いない・・・
そして、この秋山の予言通りに、日本海海戦は進行したのでした。

