前回は「直前期に図形問題が解く力を上げるコツ〜「直感的に明らか」を説明・基本的図形の性質を総復習・図形を多角的に考える姿勢・(2)解法B〜」の話でした。
様々な速さ・場所・距離・時間が登場する旅人算を解くコツ
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今回は、今年2025年に桜蔭中で出題された、速さの問題を考えましょう。
この問題は、速さの典型例の問題なので、全ての中学受験生に取り組んで欲しい問題です。

桜さんは、映画館に向かって
歩いていましたが・・・



途中でチケットを忘れたことに気づいて戻り、
戻っている途中で・・・



チケットを届けにきてくれた
お母さんと出会い、また向かいました。
この「途中で忘れ物→戻って、ある地点で再び目標へ向かう→目標地点へ走る」は典型問題です。
今回の登場人物は「桜さんとお母さん」ですが、問題によって登場人物は様々です。
そして、「歩く、走る、自転車」が登場し、他には自動車やバスのこともあります。
「移動している位置と時間を示したグラフ」が登場する時は、図形的に考えることが出来ます。



速さの問題は
沢山解いたよ!



色々な問題を解いたから、
大体のパターンは分かる!
昔から、速さに関する問題は多数出題されており、膨大な過去問があります。


速さの問題は、1990年に武蔵中学で出題された問題を上記リンクでご紹介しました。
この問題では、「歩く歩数」と「一歩の幅」が登場するのが、少し変化球です。
対して、今回考える2025年桜蔭中の問題は、「速さと時間」のみで極めて素直な問題です。
桜蔭中など最難関校を目指す人は、今(6月)の時点で、(2)まではスラスラ行って欲しいです。
この問題は、中級〜やや難レベルの問題で、丁寧に考えてみたいと思います。
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このように様々な数字が出てくる場合は、数字にマークすると良いでしょう。
算数において、「数字が登場する」ということは、



これらの数字を使って
解いてください。
基本的に「全ての数字」を使わないと「全ての問題は解けない」ので、きちんと把握することが大事です。
速さの問題など、色々な数字や状況の変化がある問題に対して、



家、スーパーマーケット、
公園、映画館・・・



公園で戻って・・・
あとは、1500mと400m、速さは・・・
色々な数字や場所が出てくるので、少し混乱してしまうと難しく感じられます。
この問題が良い点は、「家、スーパーマーケット(以下、スーパー)、公園、映画館」の図がある点です。
これらの位置関係は、問題文を読めば分かるのですが、



問題を解くには、
この図を使って下さい。
出題者は「問題を解くには図を使うと良い」と、解き方を教えてくれています。
「一枚の図」にまとめて状況理解:全体像を把握して考える
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本問は桜蔭中の出題で「記述式」であったので、記述を意識した答案にします。
「理解するための説明」も含めた記述なので、答案では、もっと簡潔で良いでしょう。
算数の記述問題では、大抵の場合は「考え方や式を書く欄」が用意されています。
「欄の中」は、完全な白紙であることが多いので、「罫線がない」用紙で書く練習をしましょう。



ノートは、出来るだけ
無地に近いのが望ましいと思います。



「何もない」と書きにくいので、
ここのノートでは、ドットで平行線を示しています。
試験の際には、このように「図がある」場合は、その図に記入して解いてゆきます。
「図がない」場合があるので、「図がある」場合も、「自分で状況の図を描く」練習をしましょう。



まずは、家から映画館が
1500mで、「10分前」を目指したんだ・・・
この問題は「目標地点までの距離が分かる」点が、全体像が掴みやすいです。
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桜さんは、忘れ物(チケット)に気づいて戻り、お母さんと出会いました。
そして、再度、桜さんは映画館に向かいました。
速さは「150m/秒」ですが、「秒=second」なので「150m/s」と書くと早く書けます。
ここで、状況を描く際には「1分後に」という状況も書きましょう。
公園では「忘れ物に気づいて即戻った」ので、そのまま「折り返した状況」になります。
「歩く速さ」と「走る速さ」など、速さが異なる場合は、上のように「矢印を変える」と良いです。
1.移動する状況・速さを矢印で表現
2.「速さの違い」を矢印の本数や太さで表現



上映開始の10分前に
到着するように出発しました。
「10分前」を目指したのに、途中で戻ったので、



結果、上映開始の3分前に
到着しました。
「3分前」になってしまったと出題者は言っています。



???
結局、時間が分からないね・・・



桜さんは、何時に出発して、
何時に公園に着いたのだろう?
速さの問題では、「何時に〜」という条件があることもあります。
今回は、「10分前→3分前」が「戻ったことによる時間ロス」であることが鍵です。
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この「7分、目標時間から遅延した」ことに気づいて、



あっ、具体的な時刻が不明だけど、
一度戻って走った結果、7分遅れたんだ!
様々な速さ・場所・距離・時間を「一枚の図」にまとめる姿勢が大事です。
1.様々な速さ・場所・距離・時間を「一枚の図」にまとめて状況理解:速さの違いも表現
2.「即戻った」か「再出発まで〜分」なども全て書く
速さ・旅人算の問題に限らず、「一枚の図に全てを集約する」姿勢は、算数・数学では大切です。



確かに、この図を
見れば、全部分かるね!
問題用紙の図を使用する場合も、自分で書く場合も、このように「状況をまとめる」姿勢が大事です。



でも、こういう
図を書くと、ちょっと時間がかかるよ・・・



早く問題を解かないと、
時間がなくなっちゃうよ・・・
「早く問題を解きたい」気持ちは、時間の制約がある試験では、とても分かります。
このような「一枚の図」を作成すると、問題の全体像が一気に見えてきて、全て解ける傾向があります。
そして、こういう「一枚の図」を作成しないで、ガリガリ計算し始めると、



あれ?
どうやって考えれば良いんだろう・・・
考える時間が余計増えてしまう傾向があるので、「図を描きながら考える」姿勢を身につけましょう。
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(1)を解いてゆきますが、まず「公園まで13分で速さが分かっている」ので、



スーパーと公園の
距離が分かるね!
スーパーと公園の距離が分かったら、公園から映画館の距離も分かります。
これらの「分かった距離・時間」などは、どんどん「一枚の図」に追記してゆきます。
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距離と速さが分かっているので、公園から戻って、お母さんに会うまでの時間が計算できます。
これで、 (1)の答えが分かりました。
この問題は(1)は易しいので、図を描かなくても、すぐに解ける人も多いでしょう。



(1)みたいな問題は、
図に整理しなくても良いの?
「一枚の図」に整理しなくても解ける場合も、筆者は「一枚の図」に整理した方が良いと考えます。
ぜひ、「すぐ分かる小問」を解く前に、「一枚の図」で全体像を的確に把握しましょう。
1.まずは「一枚の図」にまとめて、全体像を理解しながら考える
2.「分かったこと」を追記してゆき、「一枚の図」を強化する
次回は、続けて(2)を考えますが、ぜひ解いてみて下さい。
(1) 19 11/13 分
(2) 5 15/17(100/17)分間
(3) 2 115/442(999/442)分以内
この問題の答えは上記です。
次回は上記リンクです。