毎日「少し省みる」姿勢を具現化した五省〜自己の過ちと精神力・明治維新翌年に成立した海軍兵学校・軍事力確立急務の明治新政府〜|海軍兵学校の教育3

前回は「人格の骨格となる海兵の「五省」〜誠実さと真心大事に・「帝大よりも先」だった陸士と海兵設立・欧米から国家守る軍指揮官〜」の話でした。

目次

明治維新翌年に成立した海軍兵学校:軍事力確立急務の明治新政府

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築地の海軍兵学寮(江田島 日本の海軍教育 別冊歴史読本 新人物往来社)

当時「16歳〜19歳」が海軍兵学校(海兵)へ入学し、現代では高校生〜大学一年生相当です。

「海軍兵学校」の現在版として防衛大学がありますが、海軍と自衛隊では少し意味が異なりそうです。

海兵3号生S

海兵に合格するために
毎日猛勉強した!

海兵3号生S

やっと、やっと憧れの
海軍兵学校3号生だ!

海兵3号生S

そして、僕たちが我が大日本帝国を
守るのだ!

超難関だった海兵は、当時は東京帝国大学(東大)同等か、それ以上の難関校でした。

陸軍エリート養成機関の陸軍士官学校(陸士)と海軍エリート養成機関の海兵は、当時は最難関レベルでした。

明治から昭和の時代は、アジア全域が欧米列強の植民地となっていた時代でした。

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大英帝国の領土:1921年(Wikipedia)

インドやオーストラリアは大英帝国の植民地であり、フィリピンは米国の植民地のような状況でした。

アヘン戦争で大英帝国に大敗北した中国では、欧米列強が先を争って進出していました。

幕末〜明治の頃の状況では、「いつ日本も植民地になってもおかしくない状況」だったのでした。

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戊辰戦争:左上から時計回りに、西郷隆盛、徳川慶喜、松平容保、木戸孝允(国立国会図書館)

「対外的な危機」がある中、日本では徳川幕府から大日本帝国に国家が一気に変わりました。

明治維新が成立し、明治新政府は「政府の骨格」を大急ぎで作る必要がありました。

徳川幕府を武力で叩き潰した薩長を中心とする新政府。

大久保利通

徳川幕府を武力で倒した
のだから、我らも軍隊を整備せねば!

木戸孝允

うむ・・・
まずは薩長と土佐の藩士を集めるか・・・

徳川を「武力で倒した」薩長勢力としては、

木戸孝允

我らに叛逆する
連中が出てくるかもしれぬ・・・

なんとしても、政府の常備軍を整備しなければ「武力で倒される」可能性がありました。

うかうかしていると「自分たちが武力討伐される」可能性が濃厚にあったのが、明治初期の時代でした。

設置年大学名
1868年陸軍士官学校(前身の兵学校)
1869年海軍兵学校(前身の海軍操練所・海軍兵学寮)
1877年帝国大学(東京帝国大学)
海軍兵学校・陸軍士官学校・帝国大学設置年(Wikipedia)

そして、陸軍士官学校が明治維新と同年に、海軍兵学校が維新翌年に整備されました。

明治初期の御親兵設立の頃の話を、上記リンクでご紹介しています。

「欧米列強の強力な力」にに対抗して国家を守る大日本帝国の陸海軍。

当時は現代よりも「生命をかけて国家・国民を守る」意識が、かなり強かったと考えます。

毎日「少し省みる」姿勢を具現化した五省:自己の過ちと精神力

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江田島の海軍兵学校(江田島 日本の海軍教育 別冊歴史読本 新人物往来社)

最初は築地に設置されていた海軍兵学校は、広島県の江田島に移されました。

この「築地から江田島へ」の流れには、理由がありました。

海軍兵学校

若者たちを
海軍士官に叩き上げねば・・・

海軍兵学校

そのためには、世間と離れ、
海に近い場所で学ばせるのが最善だ・・・

世界と隔絶し、海に近い場所で思い切り学ばせ、海軍士官に「叩き上げる」ために移転しました。

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そして、海兵の若者たちの人格の骨格となった「五省」がありました。

この五省は「1932年以降」という説が有力で、この頃は「いつ戦争が起きるか」という状況でした。

五省の整備は昭和に入ってからですが、おそらく明治の頃から「五省の意識」は強かったでしょう。

五省

一、誠実さや真心、人の道に背くところはなかったか

一、発言や行動に、過ちや反省するところはなかったか

一、物事を成し遂げようとする精神力は、十分であったか

一、目的を達成するために、惜しみなく努力したか

一、怠けたり、面倒くさがったりしたことはなかったか

海兵3号生S

誠実さや真心、
人の道に背くところはなかったか!

まずは、毎日誠実に真心を持って生きることが、海兵の生徒には求められました。

海軍兵学校

我が海軍士官は
ジェントルマンでなければならぬ!

「ジェントルマンを育て上げる」ことを強く意識していた海軍兵学校の教育。

海軍兵学校

諸君は、
ジェントルマンたれ!

「ジェントルマンを育て上げる」ことを最優先していた海兵にとって、「誠実と真心」が筆頭でした。

海兵3号生S

発言や行動に、
過ちや反省するところはなかったか!

この「発言と行動に過ちと反省」を毎日求めていることも、大変良いことです。

誰しも過ちはあることでありますが、

男子高校生

今日は、部活で
同級生Aと喧嘩したけど・・・

男子高校生

まあ、Aが悪いから、
別にいいや・・・

大抵の人は、「まあいいや」とか「仕方ない」で終わりです。

若者、特に男性に「喧嘩はつきもの」ですが、「どちらかが100%悪い」ことは少ないです。

ほとんどの場合において、「どちらかに部がある」としても「両者に問題がある」のが喧嘩です。

海兵の五省に従うと、

男子高校生

あの喧嘩は、僕も悪かったから、
今後は絶対にしないようにしよう!

自分の誤った行為を反省することを、強く求めています。

海兵3号生S

物事を成し遂げようとする精神力は、
十分であったか!

この「物事を成し遂げようとする精神力」が十分かどうかは、かなり主観によります。

高校生や大学生には、少しレベルが高すぎ、むしろ社会人がこのことを意識すべきでしょう。

女子高校生

私は今日もちゃんと
英語の勉強を十分にやったかな・・・

女子高校生

もう少し
勉強すべきだった気がする・・・

毎日ではなくとも、今日や最近勉強したことが「十分であったか」を反省するのは良いことです。

女子高校生

明日は
もう少し英文を読もう!

ほんの少し、「1分でも反省する」時間を持つことは、学びの上では大事な視点と考えます。

「反省する」は、ややネガティブなニュアンスを持つので、「省みる」視点も良いでしょう。

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