前回は「「具体的にイメージ」して読み解く力を養成〜「ある幅」を持つシーンの解釈・「道路」とは違う「道」・財津和夫“Wake Up”の歌詞〜」の話でした。
「あなた」とはどういう人物かをイメージ:シンプルな歌詞が持つ深い意味

1980年に大ヒットした、財津和夫さんの”Wake Up”の歌詞から、「読み解く力」を増強することを考えます。
下記は、財津和夫が作詞・作曲して自身が歌い、1980年に大ヒットした“Wake Up”の歌詞です。
“Wake Up”は、英語で“起きろ”の意味であり、比喩的意味も含みます。
Wake Up
作詞・作曲 財津和夫
Wake Up Wake Up
今愛がつきぬける
涙をふいたら 行きなさい
あなた(3)が生まれた家をうしろに
白い吐息はずませて 通ってた
学び舎(や)への道(1) 今日は嫁(とつ)ぐ道(2)
落とせない荷物(4)は あなたの心
そして微笑んだ あの人の写真
Wake Up Wake Up Wake Up Wake Up
今愛がつきぬける あの人へ あの人へ
朝もやけむった 駅のホーム
じっと見送る 年老いた人(5)
動き出した汽車に向かい その人は
娘に初めて おじぎをした
ずっとあなたを 守ってきた
その愛に もう戻れない
Wake Up Wake Up Wake Up Wake Up
今愛がつきぬける あの人へ あの人へ
磨かれた皮靴というよりも
洗いざらしの ズックのような
そんな心で 愛してごらん
あなたが選んだ あの人を
Wake Up Wake Up Wake Up Wake Up
今愛がつきぬける あの人へ あの人へ
Wake Up Wake Up Wake Up Wake Up
今愛がつきぬける あの人へ あの人へ
財津和夫は、1948年に生まれ、大人気バンド“チューリップ”のリーダーを務め、1970年代から1980年代の“ニューミュージック”と呼ばれた日本の歌謡界を牽引したトップアーティストの一人です。
日本の鉄道では、1975年頃まで汽車が使用されていました。
時代背景は現代と異なることを念頭に、下記の問題に答えてください。
(1)下線部(1)「学び舎(や)への道」、下線部(2)「嫁ぐ道」とは、それぞれ何を意味しますか。具体的に20字以内で答えて下さい。
(2)下線部(1)「学び舎(や)への道」、下線部(2)「嫁ぐ道」では、同じ「道」が二度使用されていますが、その理由を30字以内で説明して下さい。
(3)下線部(3)の「あなた」は、具体的にどのような人物を意味しますか。具体的に30字以内で説答えて下さい。
(4)下線部(4)の「落とせない荷物」は「あなたの心」ですが、なぜ「荷物」なのですか。理由を30字以内で説答えて下さい。
(5)下線部(5)の「年老いた人」は、具体的にどのような人物を指しますか。「あなた」又は「あの人」との関係に触れながら、具体的に30字以内で説答えて下さい。
メロディに合わせ、「サビは同様の内容を繰り返す」傾向がある歌詞は、シンプルである傾向が強いです。
シンプルである一方で、「深い意味を持つ」ことがあるのが「良い歌詞」の特徴です。
「学び舎(や)への道」=「学生時代に懸命に学んだ生活」「学校中心の一生懸命学ぶ日々」
「嫁ぐ道」=「これから結婚する生活」「これから結婚する人生の移行期」
異なる時点の人生を同一の言葉で表現し、連続性をもたらすため。
今回は、(3)を考えます。
「道」から「向かう」を想起して記述:1990年代「レコードからCDヘ」

上の写真は、”Wake Up”のレコードです。
余談になりますが、筆者は財津和夫さんの楽曲が好きで、”Wake Up”はとても好きな歌の一つです。
1977年生まれの筆者は、中学受験をしたのが1990年であり、バブル真っ只中でした。
当時は、音楽業界も大きな変革期にあり、「レコードからCDヘ」の時代でした。
小学生の頃は、筆者含め、筆者の周囲で「レコードを買う」友人はほとんどいませんでした。
そして、筆者が中学生になった1990年頃から、レコードは猛烈な勢いで「一気にCD化」が進行しました。
そのため、筆者は「レコードを買った経験」がなく、上の”Wake Up”レコードは、古書店で手に入れました。
筆者が中学生から高校生だった1990年代前半から中盤にかけては、CDが一気に浸透する一方で、レコードはまだまだ残っている時代でした。
そして、今ではほとんど見かけなくなりました「MD」が「ミニCD」として登場し、一世を風靡しました。
本題に戻ります。
出題者「あなた」は、具体的にどのような人物を意味しますか。
具体的に30字以内で説答えて下さい。
1.これから結婚する女性。(1点)
2.これから結婚して、大きく人生が変わる女性。(2点)
3.結婚を目前に控え、全く異なる新たな人生へ向かう主人公の女性。(3点、模範解答例)
1は、正しいですが一面的なので、1点です。
2は、ほとんど良いようにも感じられますが、「新たな人生に向かう」視点が重要です。
なぜならば、歌詞のテーマに「道」があるからです。
「道」とは、「歩く道」「走る道」であり、



白い吐息はずませて 通ってた
学び舎(や)への道 今日は嫁(とつ)ぐ道
このように「何かが移行することを想起」することが重要なテーマです。
模範解答例3は、前半は「結婚を目前に控え」でも「これから結婚して」でも、どちらでも良いです。
重要なのは「新たな人生へ向かう女性」という視点です。
更に、「主人公の」と、この歌の主人公であることを明記している点が良いです。
付け加えますと、「新たな人生」に「全く異なる新たな人生」と表現を強めている点が良いです。
「新たな人生」だけでも「異なる」ことを想起させますが「全く異なる」は、説明としてとても良いと考えます。
中学受験〜大学受験において、「詩がテーマ」となることは多いですが、「歌詞がテーマ」は少ないです。
そのため、本題のような出題は「ほぼない」かもしれませんが、「読み解く力の養成」として、短い文章の中で深読みする、良い練習になると考えます。
11月になり、いよいよ過去問演習が本格化する時期になりました。
記述の模範解答は「ただ一つ」ではないので、「模範解答例」となります。
そして、過去問題集などでは「模範解答例」が記載されていますが、それらの「模範解答例」には、「良い模範解答例」と「良くない模範解答例」があります。
国語の記述が多い学校を受験する際には、「模範解答は何か」も大事かもしれませんが、



なぜ、この解答が「模範解答」に
なるのだろう?
「なぜ、これが模範解答なのか?」を考えてみるのも良いでしょう。

