前回は「連合国への追加条件「天皇の大権変更を条件に含んでないことを了解」〜連合国へ甲案提示の閣議決定と軍部・玉音直前に自決した阿南陸相〜」の話でした。
帝国政府が死守めざした「国体=天皇の国家統治大権」:英文正文と日本語訳文

ようやく猛反対だった軍部を抑え込んで、連合国へ「ポツダム受諾」に向けて回答した帝国政府。
帝国政府においては、人類を戦争の惨禍よりまぬがれしめんがため、すみやかに平和を招来せんことを祈念し給う天皇陛下の大御心にしたがい、先に大東亜戦争に対して、中立関係にあるソビエト連邦政府に対し、斡旋を依頼したが、不幸にして、右帝国政府の平和招来についての努力は結実をみなかった。
ここにおいて、帝国政府は、前に明らかにしたように天皇陛下の平和に対する御祈念に基づき、即時、戦争の惨禍をのぞき、平和を招来させようと思い、次の通り決定した。
帝国政府は、昭和二十年七月二十六日、米英支三国首脳により共同に決定、発表せられ、その後、ソ連邦政府の参加をみた対本邦の共同宣言に挙げられた条件の中には、天皇の国家統治の大権を変更するという要求を含んでいないことを了解して、帝国政府は、これを受諾する。
帝国政府は、この了解に誤りはなく、貴国政府がその旨、明確な意志を速やかに表明せられるよう切望している。
帝国政府は、スイス国政府、スウェーデン国政府に対し、速やかにこの次第を米国政府及び支那政府、英国政府及びソ連政府に伝達してもらうことを要請する光栄を持っている。
当時の帝国政府構成員全員が主張していた、国体護持=天皇の国家統治の大権。
この大権を、「変更するという要求」が「条件の中に含んでいないことを了解」としました。
大日本帝国最後の四か月さらに、この日の午前九時、
改めてこの各連合国に対する日本政府の通告を、



英文で持って両公使に打電し、
かつ、この英文を正文とし、



日本文は訳文とする旨を
電報した。
当時の帝国政府・大本営の大幹部たち全員が絶対に守ろうとしていた「国体」。
そのため、外務省はスイス・スウェーデンの大使館に「正文の英文」をすぐに通知しました。
これは「出先の大使館の翻訳で誤解があってはならない」からであり、万全を期していました。
控えめな表現「誤りないことを信じ」:大急ぎの加瀬スウェーデン公使





しかし、この英文については、さらにこれに照応する
訳文として日本文を打電したが、



この二度めに打電した日本文は、
第一電とは、いくらか違っているので、



念のため、後からの電文を
再録しておく必要がある。



第二電は、
次のようになっていた。
帝国政府においては、常に世界平和の促進を願い給い、今次戦争の継続によりもたらされる惨禍より人類をまぬが占めるため、速やかなる戦争の終結を記念し給う天皇陛下の大御心に従い、数週間前、当時、中立の関係にあったソビエト連邦政府に対し、敵国との平和回復のため、斡旋を依頼したが、不幸にして、この帝国政府の平和招来に対する努力は実を結ばなかった。
ここにおいて、帝国政府は、天皇陛下の一般的な平和克服についての御祈念に基づき、戦争の惨禍を出来る限り速やかに終止させたいと思い、次の通り決定した。
帝国政府は、昭和二十年七月二十六日、ポツダムにおいて、米英支三国首脳により発表せられ、その後、ソ連邦政府の参加をみた共同宣言に挙げられた条件の中を、右の宣言は天皇の国家統治の大権を変更する要求を含んでいないことを了解の基に受諾する。
帝国政府は、このように了解して誤りないことを信じ、本件に関する明らかな意向が速やかに表示せられるよう希望している。
第二電は、「国体護持の条件」に関して「このように了解して誤りないことを信じ」と表現しました。
第一電では「この了解に誤りはなく、」であったのに対して、ある意味で「一歩踏み込んだ表現」にしました。
外交文書としては、「かなり控えめ」ながら、「明確な回答」を連合国に求めました。





「ポツダム宣言受諾への連合国への確認」の
通知だ!



この電報を受け取った
加瀬公使は、



十日の午後六時、スイス政府に、
米、華両国政府へ伝達方を頼み、



岡本公使は、同じ日の午後八時、
スウェーデン政府に英、ソ両国へ伝達するよう



この英文の正文を頼んだ、との
電報が折り返し舞い込んだ。



もっとも、岡本公使は、第一電が到着した後、
一刻も遅れてはならないと思い、



英文の正文が着く前に、
公使館で仮の英訳文を作り、



十日の午前十一時四十五分、
スウェーデン外相に手渡していた。



とにかく、大急ぎで
スェーデン外相に渡すのだ!
本国が超極大級の危機にある中、外務省関係者は「国体護持」に向け、全力掛けていました。



あとは、外務省が滞りなく
実務を進めてくれるのを待つばかり・・・



果たして、連合国は
「国体護持」を呑んでくれるかどうか・・・
そして、迫水書記官長らは、本国にいて、じっと連合国の回答を待ち続けていました。

