前回は「「昭和天皇のおぼしめし」をうかがいへ〜「三対三」で真っ二つ・追加条件は甲案か乙案か・「死中に活を」阿南陸相の真の本心」〜」の話でした。
前代未聞の「天皇の意思判断伺い」へ:形式的だった御前会議

1945年8月10日、大日本帝国政府・大本営は、「即時降伏か否か」を大激論していました。
帝国政府の鈴木首相、東郷外相は賛成でしたが、米内海相以外の軍部は大反対でした。
「鈴木首相応援団」的立場で乗り込んできた平沼枢密院議長は、
平沼騏一郎外相の
考えに賛成である。
賛成でしたが、票には入りませんでした。
| 組織 | 名前 | 役職 | 即時降伏 |
| 政府 | 鈴木貫太郎 | 内閣総理大臣 | ? |
| 東郷茂徳 | 外務大臣 | ◯ | |
| 阿南惟幾 | 陸軍大臣 | ✖️ | |
| 米内光政 | 海軍大臣 | ◯ | |
| 大本営 | 梅津美治郎 | 参謀総長 | ✖️ |
| 豊田副武 | 軍令部総長 | ✖️ | |
| 枢密院 | 平沼騏一郎 | 枢密院議長 | ◯ |
| 内大臣府 | 木戸幸一 | 内大臣 | (◯) |
そして、「降伏賛成」であった木戸内大臣を含めて、上の通りの状況でした。
当時、帝国政府・大本営と「同等の立場」であった枢密院・内大臣府。
ところが、「大日本帝国の最高意思決定機関」からは、枢密院・内大臣府は外れていました。



まことに恐れ多いことではございますが、
ここに天皇陛下のおぼしめしをおうかがいして・・・



それによって、私どもの意思を決定と
致したいと思っております。
そして、鈴木貫太郎首相は、「前代未聞の御前会議における天皇の意思判断」を求めることにしました。


後世の視点から見れば「会議の場」である「御前会議」は、当然、天皇が「何か話した」と考えます。
ところが、当時の御前会議は「形式的」であり、天皇は「何かを話す」ことは、ほぼありませんでした。
昭和天皇は、戦後に「御前会議は形式的だった」と明確に発言しています。
この昭和天皇の発言に関しては、別の機会にご紹介します。
とにかく、海外では「信じられない状況」だった日本の最高意思決定機関・御前会議。
いよいよ、満を持して、鈴木首相が昭和天皇の元へと進んでゆきました。
聖断!昭和天皇「私の意見は外務大臣の意見に同意」:号泣!政府トップたち





ただいまお聞きの
通りでございます。



なにとぞ、おぼしめしを
お聞かせ下さいませ。



陛下は総理に向かって、
席に戻るように言われたが・・・



元来耳の遠い総理は、その言葉が
聞き取れなかったのか、耳のところに右手をあて、



ハイ・・・



という風に
聞き直した。



総理が自分の席に戻ると、
陛下は少し体を乗り出すようにして、口を開いた。





それならば、
私の意見を述べよう。



私の意見は、
外務大臣の意見に同意である。



!!!!!!!!!!



!!!!!!!!!!



!!!!!!!!!!



!!!!!!!!!!



!!!!!!!!!!



!!!!!!!!!!



!!!!!!!!!!
昭和天皇の簡潔極まりない意見によって、大日本帝国の意思決定が完了しました。



地下十メートルの
ところに彫られている防空壕の中である。



もの音ひとつ
聞こえない。



陛下の声は、
参列者の胸に突き刺さった。



私は感極まり、
涙がほとばしり出た。



・・・・・



前に置いてあった書類には、
雨の後のように涙の跡がついた。



私の隣席の吉積局長、そのまた隣席の
梅津参謀総長の書類の上にも・・・



涙のあとが
にじんでいくのを見た。



・・・・・



次の瞬間、啜り泣きの
声がもれてきた。



やがて、すすり泣きは
号泣に変わった。
「大の大人」であり、当時の大日本帝国の最高幹部たちは、「聖断」に対して号泣しました。



ううっ・・・



ううっ・・・



ううっ・・・



ううっ・・・



ううっ・・・



ううっ・・・



ううっ・・・



私は涙の彼方に
ボンヤリと浮かび上がっている・・・



陛下のお顔を
垣間見た。



はじめは白い手袋の手で、
親指をしきりに動かして・・・



眼鏡を吹いておられたが、
ついには両方のほおをしきりに拭っておられた。



・・・・・
「号泣の渦」の中、昭和天皇は黙って皆を見ていました。



陛下のお言葉は、これで終わりかと
思っていたら・・・



しばらくたって、
腹の底からしぼり出すようなお声で、



念のために
言っておく。



と前置きされたのち、
次のようなことを・・・



とぎれ、とぎれに
言われた。
後世「天皇の聖断」と呼ばれる昭和天皇の「異例中の異例」の意思表明。
政府・大本営トップたちが号泣する中、昭和天皇は言葉を続けました。
とぎれ、とぎれに、そして大日本帝国統治者として、しっかり、と。

