前回は「吉積局長を一喝した阿南惟幾陸相〜揺れる陸軍内部の動向vs帝国政府方針・連合国に追加条件甲案提示へ・平沼議長「天皇と国体」不適当論〜」の話でした。
連合国へ甲案提示の閣議決定と軍部:玉音直前に自決した阿南陸相

1945年8月10日、つまり玉音放送の5日前、連合国への追加条件内容が決定しました。
甲案:七月二十六日付三国共同宣言に挙げられた条件の中には、天皇の国法上の地位を変更する要求を包含しおらざることの了解のもとに日本政府は、これを受諾す。
乙案:七月二十六日付三国共同宣言につき、連合国において、
(一)日本皇室の国法上の地位の変更に関する要求は、右宣言の条件中に包含しないものとする。
(二)在外日本軍隊はすみやかに自主的撤退をなしたる上、復員す。
(三)戦争犯罪人は、国内において処理する。
(四)保障占領はしないものとする
との了解に同意するにおいては、日本政府は戦争の終結に同意す。
上の甲案、乙案のいずれか、で侃侃諤諤の議論の結果、「大人しめ」の甲案となりました。

大日本帝国最後の四か月参列者のうち、
閣僚たちは首相官邸へ帰った。



御前会議で、ポツダム宣言受諾の
方針は決まったが、



国としては、この後
国家の意思を決めるため、閣議を開き、



最風的な意思表示を行う
必要があった。



閣議は、10日の午前三時から開かれ、
平沼枢密院議長の意見に従って、



字句の修正をしただけの
甲案を承認することになった。



阿南陸相も
ためらうことなく花押した。


最も強硬に反対していた阿南陸相も、甲案を正式に認めました。



・・・・・
この頃の、阿南陸相の「真の考え」は諸説あります。


戦後、様々な人が手記を著しましたが、阿南陸相は戦後の手記がありません。
1945年8月15日正午の玉音放送を聴く前、



むうっ!!!
同日午前5時に自決した阿南惟幾陸相。
そのため、当時の阿南惟幾陸将の「本当の気持ち・真の考え」は、永遠に謎となりました。
とにかく、軍部も納得の上で、ポツダム受諾に向けて粛々と進み始めました。
連合国への追加条件「天皇の大権変更を条件に含んでないことを了解」


ここからは、外交の実務となります。



ここで、外務省では遅滞なく、
ポツダム宣言受諾についての連合国への措置をとった。



十日の午前七時ごろ、スイス駐在の加瀬、
スウェーデン駐在の岡本両公使当てに電報を打った。



加瀬公使は、スイスを通じて、
米、中の両国へ、



岡本公使は、スウェーデンを通じて、
英、ソの両国に、



それぞれ日本政府の意思を伝えて
もらうように頼んだ。
連合国、と言うよりも米国から突きつけられたポツダム宣言。
それならば、直接、米国・連合国に返信をすれば良さそうです。
ここで、帝国政府は、間にスイスとスウェーデンを挟みました。
おそらく、スイス・スウェーデンの力を借りて、連合国が「甲案を呑む」ことを望んだのでしょう。



その内容は
次の通りである。
帝国政府においては、人類を戦争の惨禍よりまぬがれしめんがため、すみやかに平和を招来せんことを祈念し給う天皇陛下の大御心にしたがい、先に大東亜戦争に対して、中立関係にあるソビエト連邦政府に対し、斡旋を依頼したが、不幸にして、右帝国政府の平和招来についての努力は結実をみなかった。
ここにおいて、帝国政府は、前に明らかにしたように天皇陛下の平和に対する御祈念に基づき、即時、戦争の惨禍をのぞき、平和を招来させようと思い、次の通り決定した。
帝国政府は、昭和二十年七月二十六日、米英支三国首脳により共同に決定、発表せられ、その後、ソ連邦政府の参加をみた対本邦の共同宣言に挙げられた条件の中には、天皇の国家統治の大権を変更するという要求を含んでいないことを了解して、帝国政府は、これを受諾する。
帝国政府は、この了解に誤りはなく、貴国政府がその旨、明確な意志を速やかに表明せられるよう切望している。
帝国政府は、スイス国政府、スウェーデン国政府に対し、速やかにこの次第を米国政府及び支那政府、英国政府及びソ連政府に伝達してもらうことを要請する光栄を持っている。
超緊急事態にしては、少し長めで冗長にも感じる文面を送付した帝国政府。
前半は、もう少し簡潔にしても良さそうであり、ソ連のことは「今更感」があります。
今となっては「どうでも良い」ソ連のことを、言い訳めいた口調で述べていました。
とにかく、国体護持の「条件追加」を、「条件に含んでないことを了解」と婉曲に主張した帝国政府。
事実上の「追加条件」でしたが、比較的「上手く回答した」ように感じます。
そして、「三国」共同宣言が、「四国」共同宣言となっていたポツダム宣言。


帝国政府の回答時点では、総選挙で敗北したため。チャーチルは既に英首相ではありませんでした。
とは言っても「第二次世界大戦の大英帝国」といえば、チャーチルなので、上の四名としました。
この帝国政府の声明に対して、米英中ソ、特に米国がどう返答するか。



・・・・・
帝国政府関係者は「呑んでくれる」ことを望みながら、連合国の回答を待っていました。

