40年間の東大合格者ランキングの栄枯盛衰〜合格進学実績と校風・合格者実名掲載と「合格者数のみ」の大きな違い・様々な実名調査方法〜|大学合格実績の今昔4・中学受験

前回は「「昭和から平成」の女子御三家の大躍進〜1985年東大合格進学実績から垣間見える事実・日本社会の大きな意識改革・各科類の特徴〜」の話でした。

目次

40年間の東大合格者ランキングの栄枯盛衰:合格進学実績と校風

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週間朝日1985年3月29日増刊号(新教育紀行)

古書店で見つけた、1985年の週刊朝日の「大学合格者の各高校ランキング」特集号。

現代も、毎年3月中旬から東大を中心とする合格者ランキングがネットを賑わせます。

この各高校の「東大・京大などの合格者ランキング」には、栄枯盛衰があります。

1985年と40年経過した現在2025年では、下記のような大きな違いがあります。

現在と1985年の東大合格者ランキングの違い

・日比谷高校など都立高校の復活

・女子学院、雙葉などの女子校の大躍進

・東学大付(学付)、武蔵などの低迷、聖光学院などの躍進

これらの様々な変化の中で、最も日本社会と密接に関わっているのが「女子校の大躍進」です。

高校名東大合格者数(1985年)東大合格者数(2025年)2025年合格者/1985年合格者(%)
お茶女大付215(2024年)23
桜蔭2152247
女子学院828350
豊島岡女子026♾️(実質1000程度)
雙葉515300
五校合計55126229
東京大学合格者ランキング(1985年と2025年)

大躍進した女子校における、「2025年合格者/1985年合格者」を%で示したのが上の表です。

お茶女大付の低迷が目立ちますが、私立女子校の躍進は、かなり大きいです。

豊島岡女子の「∞(%)」は「1985年が0人」だったためですが、実質は1000%程度と考えます。

40年で、五校合計で229%の伸びとなりました。

この女子校の大躍進の影には、日本社会の「女子の大学進学」への視点の変化が大きいです。

各高校の評価に関しては、校風や教育方針が最重視されるのが本来の姿と考えます。

一方で、東大や国公立大学、医学部などの合格実績が数字として明確にランキングされる中、

受験生の父親

大学の合格進学実績は、
とても重要だ。

受験生の母親

やっぱり、うちの子は
大学進学実績が良い高校に行かせたい。

日本社会において、「合格進学実績が高い高校=良い高校」という評価が完全に定着しました。

合格者実名掲載と「合格者数のみ」の大きな違い:様々な実名調査方法

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週間朝日1985年3月29日増刊号(新教育紀行)

現在でも様々な雑誌やウェブサイトで、高校別大学合格者ランキングが発表されています。

合格者の実数や、卒業生数に対する合格率など、様々な指標を見かけます。

実数と合格率に対しては、様々な意見がありますが、合格率も重要な指標になり得ます。

対して、かつては、合格率ランキングは、あまり見受けられなく、実数ランキングが主体でした。

そして、現在と最も大きな違いは「合格者の実名が掲載された」ことでした。

上の様に、東大・京大などの大学で、各都道府県・各高校別に実名がハッキリと明記された時代です。

この「全氏名掲載」に関しては、どのような手法で各雑誌社が作成出来たのか、は不明です。

合格者名は、各大学が公表していた面がありますが、それを「各高校」に結びつけるのは非常に困難です。

雑誌社A

できる限り、
東大受験生のリストを集めるのだ!

各雑誌社は、「合格者を割り出す」ために「受験生リスト」を持っていたと考えます。

この「受験生リスト」は、各高校の名簿や塾などの模擬試験の成績優秀者リストなどが考えられます。

かつては、ほぼ全ての塾・予備校の模擬試験において、「成績優秀者と高校名がセット」でした。

そのため、

雑誌社A

成績優秀者に掲載される
人の名前と高校名の把握は容易だ・・・

成績優秀者として掲載される人々の「実名と高校名の把握」は容易だったと考えます。

それにしても、「東大だけでも3,000名を超える人物の実名と高校名」を把握した雑誌社。

東大などいくつかの大学ならば、10,000名ほどとなり、それを2週間ほどの期間でまとめ上げました。

これは、かなり高い調査能力と考えます。

実名だけに、「間違えることは基本的に許されない」ため、

雑誌社A

絶対に間違えないように、
多数のチェックをするのだ!

極めて慎重に合格者実名リストを作成していたと思われます。

現在ならば、実名は別として、各高校が「合格者数などを答える」風潮が定着している様です。

雑誌社A

御高校の今年の
東大合格者数をお聞かせください。

P高校

我が高校では、
〜人合格しました。

この様に、合格者数を迅速に答えることによって、現在はランキングがまとめられる傾向があります。

この現在の手法と比較すると、20年以上前の「合格者全実名リスト」作成は隔世の感があります。

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週間朝日1985年3月29日増刊号(新教育紀行)

最も東大合格者数が多い東京では、多数の合格者を出した高校が、ランキング順に掲載されています。

1985年には、73名の東大合格者を出した武蔵高校の実名を見ると、

内野吉貴

ああ、
〜さんの期なんだ・・・

武蔵卒の筆者が知っている名前を多数見かけ、懐かしい気持ちになりました。

個人情報保護法などの法律面からの視点は別としても、様々な議論がある「実名掲載」。

男子中学生

実名掲載されると、
合格者は嬉しいかも・・・

女子中学生

嬉しいかもしれないけど、
実名は、ちょっと困るかも・・・

そして、「実名掲載される」本人にも様々な意見がありそうです。

単なる数字だけではなく「誰が合格したか」が分かることは、ある意味で「活気がある」とも言えます。

この合格者実名掲載と「合格者数のみ」は大きく異なり、時代の変化も大きいです。

ネットが現代ほど一般的ではなかった2000年頃までと異なり、「即ネットに流れる」時代となりました。

そのため、実名掲載は「実名がネットに流れる」可能性が高く、大きな問題があります。

現代と比較すると、「のどかな時代」にも感じられる2000年頃までの20世紀の時代。

「情報の拡散」がほとんどなかった時代と、「情報の拡散の嵐」の現代では大きく異なります。

この時代の大きな変化も、各高校の教育方針や校風に影響を与え続けていると考えます。

大学進学実績は、各学校の「一つの指標」と考えます。

それぞれの時代において、今後もこの「合格者ランキング」は少しずつ変化してゆくでしょう。

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