郷中教育が生み出した西郷隆盛と大久保利通の個性〜郷中教育の特殊性とカラー・薩摩と各藩の教育方針の違い・「先輩が先生」である教育・「教える」や「説明する」大事さ〜|西郷隆盛2・人物像・個性・才能

前回は「西郷隆盛の個性と精神育んだ郷中教育〜圧倒的個性を持っていた西郷・才能とは何か・寺子屋との大きな違い・郷中教育と現代日本の教育の違い・ディスカッションの重要性〜」の話でした。

西郷 隆盛(国立国会図書館)
目次

郷中教育の特殊性とカラー:薩摩と各藩の教育方針の違い

幕末維新時の藩(「最後の藩主」監修 八幡和郎 光文社)

今回は、郷中教育と先輩・後輩の話です。

徳川幕府が支配していたとは言え、各藩に強力な自治権が与えられていた幕藩体制の江戸時代。

現代と大きく異なり、日本は「各藩が別の国」のような状況だったのです。

各藩がそれぞれのカラーを持って、運営していた江戸時代。

江戸時代の藩校・私塾:図解幕末史(インフォレスト)

教育のために、各藩は藩校(藩が設立・運営する学校)を整備していました。

そして、藩校を補佐する形式で、独自の教育組織や寺子屋がありました。

吉田 松陰(Wikipedia)

独自の教育組織で、最も有名なのは、吉田松陰が教えた「松下村塾」です。

西郷隆盛がいた薩摩藩は、藩校・造士館を江戸後期に設立します。

この造士館は、他の藩の藩校とは少し異なり、大学院・研究所的性格を持った組織でした。

薩摩には、伝統的な郷中教育があり、6歳〜20歳までの教育機関が確立していました。

そのため、

我が薩摩では、
郷中でそれぞれ教育しとるではないか・・・

そうごわす。
20歳くらいまでは郷中で教育して、そこからは実践ごわすな!

他の藩と我が薩摩は異なるから、
教育に関する組織というより、もう少し先の学問の場なら作ろうか・・・

そもそも、「徳川幕府設立時」の1603年頃から成立した藩が多い中、薩摩は「鎌倉幕府以来」でした。

薩摩「藩」という組織は、徳川幕府が管理するための名称・制度ですが、ずっと国家があったのです。

我が薩摩は、源頼朝の鎌倉幕府以来
守護の家柄・・・

他の藩とは
違うごわすな!

確立した国家であった薩摩において、藩校の設立は、他の藩より少し遅れていたのです。

郷中教育が生み出した西郷隆盛と大久保利通の個性

郷中教育のグループ

二才(にせ):元服(14~15歳)から20歳頃

稚児(ちご):6~8歳頃から元服まで(14歳頃)

二才・稚児に別れ、年齢が異なる子どもたちが皆一緒に、お互い切磋琢磨した郷中教育。

郷中教育と藩校・寺子屋の大きな違いは、「先生がいない」ことです。

先輩が後輩を指導して、教えていたのです。

郷中教育の特徴

・先生不在:先輩(二才)が後輩(稚児)を指導

・自治教育:青少年たちが熱心に考え、話し合い教育方針決定

・独自カラー:青少年や郷のカラーに合わせた独自方針

「先輩が先生」のようなもので、「先輩と後輩」には非常に厳格な上下関係がありました。

この意味では、「先生と生徒」と「先輩と後輩」の上下関係とは、異なる面も多いでしょう。

大久保 利通(国立国会図書館)

西郷隆盛と大久保利通は、同じ郷中で小さな頃から、ずっと一緒だったのです。

6歳くらいから20歳くらいまで、ずっと一緒で家も近くだった西郷と大久保。

共に貧しいながら、食事も共にすることもあった二人。

一蔵(大久保)どん・・・

吉之助さぁ・・・

大人になった頃には、お互い「何を考えているのか」が「手に取るように分かる」仲だったでしょう。

「先輩が先生」である教育:「教える」や「説明する」大事さ

幕末志士らの年齢(歴史道Vol.6 朝日新聞出版)

「先輩が先生」にような関係だった、郷中教育。

先輩が、後輩を指導します。

西郷隆盛は大久保利通よりも3歳上なので、西郷が大久保を教えたのでしょう。

3歳の違いは、「小学校3年生と小学校6年生」や「中学校1年生と高校1年生」の違いです。

これは、非常に大きな違いです。

幕末、同志のように描かれる西郷と大久保。

同志ですが、「先輩・後輩の上下関係」があったことは、大事なことです。

郷中教育において、先輩は後輩を教える過程で、自分の学びも進んだでしょう。

その意味では、郷中教育は様々な理想的ポイントがあります。

「人に教える」まで行かなくても、「説明出来るか」は大事なポイントです。

まだ高校生〜大学生くらいの年齢の二才は、後輩の稚児を教えます。

よしっ!
ここはだなあ〜!

と威勢よく「後輩指導」をしようとするも、

んっ?
そういえば、ここはどんなことだったごわすか?

こう思うことも多々あったでしょう。

「教える」というのは大変なことです。

「自分が分かっている」ことを「教えて、理解してもらう」のも難しいです。

そもそも、「自分が分かったつもり」であることも多いのが実際の勉強です。

「説明できる」ようになることを目指すと、学びも大きく進むでしょう。

学ぶ際は「この内容を、自分が説明するなら、どのように説明するか」を考えてみましょう。

「公式を考える・理解する」や「公式を説明する」ことも考えてみましょう。

新教育紀行

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

目次